湯河原幕山で梅のお花見ハイキング、 湯河原のご当地グルメ担々やきそばを味わう
相模湾に面したロケーションで、海と山の眺望を楽しめる湯河原幕山。フリークライミングの岩場としても人気が高く、冬から春にかけては山麓の岩壁に多くのクライマーが集う。下山後グルメ、本来なら海に近いだけに新鮮な海鮮で決まり…なのだが、今回はご当地グルメを味わうことにした。
写真・文=西野淑子
湯河原幕山が多くの人で賑わうのは、なんといっても2月〜3月。山麓に広がる湯河原梅林は、約4000本もの梅が植栽され、春の訪れを告げるようにいち早く紅白の梅が咲き誇る。毎年、見頃の時期に合わせて「梅の宴」が開催されており、地元の名産品などをお土産に求めることができる。
満開の梅を求めて湯河原幕山をたずねた。幕山公園バス停に下り立ち、登山口に向かうと、山麓が濃淡のピンクや白で覆われているのが眺められて気分が高揚する。
登り始めは梅林の中を進む。ふんわりと梅のよい匂いがたちこめている。品種が多く、色合いが違ったり、花の形も一重や八重などさまざま。梅林最高地点までたどり着くと、山の斜面を埋める梅がまるで霞のようだ。すぐそばの岩場では、たくさんのクライマーがクライミングを楽しんでいた。
梅林を過ぎ、樹林のなか、ジグザグと山道を進む。徐々に相模湾が眺められるようになり、真鶴半島や伊豆半島、初島、伊豆大島をはじめとする伊豆諸島が眺められるようになる。思ったよりも傾斜があり、息をきらしながら山頂へ。
のびやかな草原の広場で景色を楽しみ、来た道を戻った。昼過ぎになり、気温が上がると梅の匂いがさらに強まるような気がする。ゆっくりと花の写真を撮りながら、バス停に向かった。
初めて食べるのに懐かしい味? 湯河原担々やきそば
湯河原駅に到着。今日は「担々やきそば」を食べて帰ると決めていた。
湯河原のご当地グルメ、湯河原担々やきそば。湯河原温泉は「たぬきが見つけた」という伝説があり、「たんたんたぬきの…」の歌にあやかって考案されたのが「坦々やきそば」だ。
練りゴマや豆板醤などを主原料とした、香ばしいピリ辛の味付けが特徴で、独特の辛みとうまみが感じられるという。店によって味付けやトッピングの具材は異なり、「たまごがトッピングされている系」と「柑橘類を使っている系」に大別されるようだ。
湯河原担々やきそばの1号店という「餃子ショップ」に足を運んだ。湯河原駅から歩いて5分、住宅街にお店があった。お店に入ると昔ながらの食堂のイメージ。店内に芸能人のサインやお相撲さんの手形などが飾られている。「たんたんたぬきの坦々やきそば」の絵も飾られていて微笑ましい。
迷わず担々やきそばを注文。隣の席の人が食べていた餃子がおいしそうでうらやましくなり、餃子も注文した。
待つことしばし、担々やきそば登場。なるとに青のり、紅ショウガ、そしてゆで卵はきれいな飾り切り。なんとも昭和な雰囲気の盛りつけだ。見た目はあまり辛そうに見えないな…。
ひとくち味わうと、甘めでコクのある味わいのソースが、もっちりと存在感のある麺によく絡んでいる。やきそばと炒めてあるキャベツの食感、豚肉のうまみもいい。初めて食べたのに、なんだか懐かしい感じだなあ。
つづいて餃子が登場。小ぶりな餃子は、中にみっしりと肉と野菜が詰まっている。餃子自体はあっさりとした味わいで、つけだれとの相性がいい。いや…これはビールが欲しくなるな。現に、隣の席のおじさんたちはビールに餃子でいい感じになっている。
帰りの道中も長いのでビールは我慢してごちそうさま。お腹いっぱい。
「湯河原の担々やきそばは店によって味も具もだいぶ違うのよ。ソースもそれぞれのお店でいろいろ味を工夫しているからね」とおかみさん。
「そうだよ、全然違うんだよ。でもこの店の担々やきそばが俺は一番おいしいと思うよ!」と、隣の席のおじさんたちが口々に言う。地元の方だったらしく、梅を見にハイキングに来たのだと伝えたら、次は真鶴まで足を延ばせばいい、この観光地は行ったか、などたくさんおすすめ情報をくれた。ありがたい。
山に行って、地元の人にやさしくしてもらえると嬉しくなる。
そして、地元の人が「おいしい」と勧めてくれる店に出合えるのは幸せだ。
店名:餃子ショップ
創業50年以上、「味と信頼を売る店」のキャッチフレーズで地元の人々に愛される中華料理店。湯河原名物坦々やきそばの1号店としても知られる。
電話:0465-62-4758
住所:神奈川県湯河原町土肥2-7-20
アクセス:JR湯河原駅から徒歩5分
プロフィール
西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)
初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。
下山メシのよろこび
登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。