いろんな人のたくさんの登山の楽しみ、それに寄り添える山小屋に。温故知新な2022シーズンはもうすぐ

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燧ヶ岳の懐に抱かれた尾瀬見晴地区に佇む「原の小屋」新管理人から、尾瀬のこと、人のこと、山小屋のことなどをお届けします。第13回は、温故知新な2022シーズンを迎えるにあたり予定している、新しい取り組みについてもお知らせします。

燧ヶ岳の懐に抱かれた尾瀬見晴地区に佇む「原の小屋」新管理人から、尾瀬のこと、人のこと、山小屋のことなどをお届けします。第13回は、温故知新な2022シーズンを迎えるにあたり予定している、新しい取り組みについてもお知らせします。

文・写真=髙妻潤一郎

「努力は運を支配する」宿沢広朗(元ラグビー日本代表監督)

「髙妻さん、今回の雪下ろしはまさにこの言葉につきますよ!」 帰りの車の中で、一緒に行ってくれたTさんが突然そんな話を始めた。

そもそも今回の雪下ろしは3月初旬、ほんの2週間ほど前に温泉小屋のご主人から「檜枝岐村から入るので一緒にどうですか?」とお誘いの電話をいただき、始まった事である。「ありがとうございます!」私は何度もお礼をいい、早速メンバーを募った。

出発日当日、檜枝岐村の外れ、「ミニ尾瀬公園」から御池登山口までは村の雪上車で送迎をしてもらい、そこから原の小屋がある見晴地区まで山スキーで行く。行き慣れた温泉小屋さんのご主人と地元のガイドさんのチームに私たちの即席チームも一緒の合同隊である。天候は晴れ、しかし翌日の午後には再び冬型になるという。そのため温泉小屋さんチームは1泊で帰る予定だ。私たちはそれでは除雪作業が終わらないため、もう一泊して2泊3日の行程ではあるが、最終日の天候が気になっていた。慣れないルートで吹雪かれるとちょっと厄介かもしれない。しかし、3日間とも大きな崩れはなく、下山時も時折、青空が顔をのぞかせるほどであった。「天気が味方してくれた! 頑張った甲斐があった!」そう思える3日間の雪下ろしになった。

尾瀬・原の小屋

一行は天神田代で一休み。天候にも恵まれ快適なBCとなった
一行は天神田代で一休み。
天候にも恵まれ快適なBCとなった

運を支配するほどの努力はしていないが、結果良い方向に向いたと言える。体力的にはきつい作業だったが、私たちには充実感があった。そんな気分の中での帰路の車内の話である。彼の言葉はとても嬉しかった。そしてこの檜枝岐村からの山スキーでの雪下ろしが原の小屋にとっていい方法だということも改めて確認ができた。今回はほとんどがガイドで、しかも山スキーができるメンバーで構成された特別ミッション部隊であったが、来年もまた同じ時期に行なう予定だ。ご興味がある人はご連絡ください!(笑)

さて3月ともなると、いよいよ今年の小屋の運営方法を煮詰めていく時期に入る。残念ながらコロナ禍の社会情勢はさらに厳しい時代へと移行しつつある。そんな中、原の小屋では新たな取り組みを始めることとした。2棟あるうち、本館は今まで通り食事付きの宿泊で、別館を「ゲストハウス原の小屋(仮称)」としてオープンする予定だ。

尾瀬・原の小屋

山した御池登山口では青空が広がっており、日焼けするほどだった
山した御池登山口では青空が広がっており、
日焼けするほどだった

具体的には部屋は寝具なしの素泊まり対応で、「なぁんだ、それなら昔からあるじゃないか」という声も上がりそうだが、まさにかつての山小屋では当たり前に存在していた「寝具なし素泊まり」を現代風に「ゲストハウス」という言葉で表現してみた。昨今の燃料費や物資輸送費など、さまざまな価格の高騰でどこの山小屋も宿泊料金を上げざる得なくなってしまった。かつては気軽に宿泊ができた山小屋も家族で連泊しようものなら、大きな出費となってしまう。かといってテント一式を担いで山に入る体力もないという方へ、少しでも財布の負担の抑える提案はできないものかと、考えた中での取り組みである。宿泊者は寝袋と食料を持参すれば良く、お風呂も入ることができる。新しい山小屋のスタイルに是非トライを!


山と溪谷2022年5月号より転載)

 - 尾瀬 - 原の小屋 OZE ・ HARA NO KOYA

尾瀬「原の小屋」

本州最大級の高層湿原、尾瀬ケ原が広がり、日本百名山にも数えられる燧ヶ岳と至仏山の2座を有する特別保護地区、尾瀬国立公園。原の小屋は、ブナの原生林が広がる燧ヶ岳の山麓、6軒の山小屋が集まる福島県檜枝岐村見晴地区(下田代十字路)にあります。長きにわたり、厳しい冬の風雪にも耐えてきた重厚な建物の中は、静かで温かい山の時間が流れています。


宿泊料金と予約について

山小屋直通電話:090-8921-8314
http://www.oze-haranokoya.com/
https://www.facebook.com/haranokoya/

※2022年は5月下旬より営業予定です。最新情報はHPやSNSでご確認をお願いします。

- 尾瀬 - 原の小屋 OZE・HARA NO KOYA

尾瀬「原の小屋」

本州最大級の高層湿原、尾瀬ケ原が広がり、日本百名山にも数えられる燧ヶ岳と至仏山の2座を有する特別保護地区、尾瀬国立公園。原の小屋は、ブナの原生林が広がる燧ヶ岳の山麓、6軒の山小屋が集まる福島県檜枝岐村見晴地区(下田代十字路)にあります。長きにわたり、厳しい冬の風雪にも耐えてきた重厚な建物の中は、静かで温かい山の時間が流れています。
※2022年は5月下旬より営業予定です。最新情報はHPやSNSでご確認をお願いします。


山小屋直通電話:090-8921-8314
http://www.oze-haranokoya.com/
https://www.facebook.com/haranokoya/

宿泊料金と予約について

プロフィール

髙妻 潤一郎

1964年、愛知県生まれ。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド ステージⅢ。アルパインツアーサービス(株)、山岳写真家の故白簱史朗氏の助手を経て、2005年から15年間、南アルプスの山小屋の管理業務に携わる。2020年尾瀬・原の小屋の管理人に就任。
http://www.oze-haranokoya.com/

- 尾瀬 - 原の小屋 管理人便り

“尾瀬のおへそ”とも言うべき見晴地区に佇む「原の小屋」。60年以上の長きにわたり営業を続けているこの山小屋に、2020年、新しい管理人がやってきた。本連載では尾瀬のこと、人のこと、山小屋のことなど、新管理人から日々のたよりをお届けする。

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