残雪の焼岳に登り、中の湯温泉旅館の露天風呂から穂高を眺め地酒を楽しむ

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第28回は新緑と残雪の焼岳と中の湯温泉。

写真・文=月山もも

北アルプス南部の活火山・焼岳は、火山らしい荒々しい姿を上高地から眺められることで人気の山です。

5月中旬頃まで上高地側から登るルートは梯子が撤去されていて通行できないため「新中の湯ルート」を歩いて山頂を目指しました。

 

上部に雪の残る焼岳では、雷鳥との出会いも

新中の湯ルートの登山口は、中の湯温泉旅館の裏手から始まります。

歩き始めは新緑が美しい道を緩やかに登っていきますが、やがて周囲の木々が針葉樹林に変わり、傾斜も急になっていきます。

登っていくうちに日の当たりにくい場所には残雪が目立つようになり、森林限界を超えるころには登山道の上にもしっかりと雪が残っている状態に。また、このあたりに来ると目指す焼岳の姿が目指す方向に見えるようになります。

徐々に大きくなっていく焼岳の山頂を眺め「もう少しで山頂だ!」と自分を励ましながら雪渓を登っていきました。

山頂直下は岩場の急登です。噴気が立ち込め、硫化水素臭が漂う中を慎重に登っていきました。

山頂へ到着。穂高連峰や笠ヶ岳などは雲に隠れていましたが、眼下には上高地が箱庭のように見えます。宿で用意していただいたお弁当を食べて一休みしてから下山することに。

下山途中には冬毛から夏毛に変わろうとしている雷鳥とも遭遇しました。標高の低いところは晴れていたので下山中の眺望も良く、静かな焼岳を楽しめました。

 

ロビーでは山並みを眺めつつお茶をいただける

今回は、新中の湯ルートの登山口にある「中の湯温泉旅館」に前泊しての登山でした。宿泊したのは穂高棟1階のお部屋。建物は新しく、廊下もピカピカに磨きあげられています。

6畳のシンプルな和室ですが、トイレ・洗面付きでとても快適。

チェックイン時から布団が敷いてあるので、下山後の宿泊ならいきなり昼寝してしまいそうですね。

 

部屋でのんびり過ごすのもいいですが、ロビーでは穂高連峰をはじめとした山々を眺めながらお茶をいただくことができます。

残念ながらこの日は曇りで穂高は見えず……でしたが、晴れた日の夕暮れどきはさぞ美しいだろうなと思いました。

 

湯に浸かりながら穂高を眺められる露天風呂

2ヶ所の大浴場があり、夕食の時間帯に男湯と女湯が交代になります。

内湯には2つの浴槽があるのですが、湯の温度が若干異なるため、好みで入り分けることができます。

夕食前の時間帯まで女湯になっている露天風呂からは遠くの山は見えないものの、木々の緑に癒やされながらかけ流しのお湯を楽しむことができました。

また、大浴場のほかに空いていればいつでも貸切で利用可能な家族風呂があるのもうれしいポイントです。

すべての浴室で、ほのかに卵臭の感じられる単純硫黄泉の源泉をかけ流しで楽しめます。

夕食後に女湯となるほうの浴室では、晴れていれば露天風呂から穂高連峰を眺めることができます。

早起きして入りに行くと、山の上のほうは雲っていたものの、中腹のあたりまでは穂高の山並みが見えました。

 

夜は地酒飲み比べ、朝は朴葉味噌がうれしい

夕食、朝食共に食事処でいただきました。
お風呂上がりなのでまずはグラスの生ビールで喉をうるおします。

先付けはこごみの胡麻味噌和え。この時期の山の宿は山菜をいただけるのがうれしいですね。

サーモンのお刺身を食べ終わる頃にビールがなくなったので、夕食前に予約していた「地酒の3種飲みくらべ」をお願いしました。数量限定で、夕食が始まる前の17時30分までに予約が必要ですが「真澄」や「水尾」など、長野県産の地酒をいただくことができます。

次の料理は岩魚の塩焼きで、付け合わせの茗荷となつめも爽やか。日本酒が進んでしまいますね。

この後は、手打ちの蕎麦や、鴨鍋など信州の山の宿らしい料理が並び、〆のご飯は安曇野産コシヒカリです。お吸い物と一緒にすべておいしくいただきました。

 

朝食も、ご飯が進むおかずがたくさん並びます。

ふんわり焼き上げられた厚焼き卵、野菜の小鉢も手がかかっていて味わい深いです。

このほかに、七輪で炙っていただく「朴葉味噌」と、できたての豆腐もいただき、チェックアウト後の登山に備えて朝からしっかりとエネルギーをチャージしました。

 

今回は登山前の宿泊でしたが、プランについていた下山後に利用できる日帰り入浴無料券をいただき、帰りのバス停まで送迎していただけるのが本当にありがたいです。下山後もすばらしいお湯に浸かって登山をしめくくることができました。

 

*紹介した食事、サービスは2021年5月取材時の内容です。
 

中の湯温泉旅館

料金:1泊2食付き/1室1名利用16,500円~、2名13,750円~(税込、入湯税別) ※プランによって変動
住所:野県松本市安曇4467
電話:0263-95-2407
HP:https://www.nakanoyu-onsen.jp/

焼岳データ

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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