晩秋の六甲山の楽しみ、有馬温泉で疲れを癒やす

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関西都市圏にありながら本格的な登山が楽しめる六甲山。今回は紅葉と下山後の温泉を楽しめるコースを歩いた。

写真・文=加藤芳樹

六甲山は、東西30㎞以上におよぶ大きな山。そのコースどりはまさに無尽蔵。阪神間ではハイキングの聖地と呼ぶにふさわしく、休日、平日問わず、多くのハイカーが訪れる。

そんななかで、最もポピュラーなのが、阪急芦屋川駅から芦屋ロックガーデンを経由して、魚屋道(ととやみち)と合流し、六甲最高峰を越えて有馬温泉に抜けるコースで、六甲登山の魅力をたっぷりと味わえる。登りがたっぷり3時間かかるので、夏の登山は初心者にはややきついが、暑さのやわらいだ秋なら、楽しい時間を過ごすことができるだろう。

風化した花崗岩が六甲らしさを醸し出す万物相

 

コース  阪急芦屋川駅~高座の滝~風吹岩~雨ヶ峠~六甲最高峰~瑞宝寺公園~神鉄有馬温泉駅

コースタイム 約5時間

 

 

 

朝の阪急芦屋川駅は、ハイカーでごった返している。芦屋川沿いの桜並木はすっかり桜紅葉に姿を変えていた。登山口にあたる高座の滝までは、芦屋の高級住宅地を抜けて30分ほど。

桜紅葉を楽しみながら高座の滝に向かう

 

ロックガーデンの入口から、滝の茶屋を横目に進み、大谷茶屋の前で一服する。大谷茶屋は、今年は改装中だ。高座の滝の左上の岩場に目をやると、一枚のレリーフがはめられている。大正末期から昭和初期にかけて、芦屋ロックガーデンで研鑽を積んだ日本初の岩登り専門の社会人山岳会、RCC(ロック・クライミング・クラブ)の重鎮、藤木九三のレリーフだ。余談だが、同じレリーフが、北アルプスの滝谷入口の大岩にも藤木の初登攀を顕彰してはめられている。六甲山が日本のアルピニズム発祥の地と言われるゆえんだ。

登山道は、このロックガーデンの真ん中を背骨のように貫く中央稜に続いている。難しくはないが手も使って登る場所もあり、ちょっとスリリング。たどっていくと、展望の良い風吹岩に着くが、登山経験者ならその手前に万物相への分岐があるので立ち寄ってみるといい。六甲山を代表する風景が目の前に広がる。

中央稜の岩場を登る

 

風吹岩は魚屋道との合流点

 

風吹岩で、その昔、深江の浜から有馬へ海産物を運んだという魚屋道に入り、北へ向かう。途中、左手に横池への分岐がある。横池へはすぐだが登山道から外れているので、人も少なく、ゆったり過ごせる。池のほとりに腰を下ろして少し早めのランチにした。

静かな憩いの場の横池

 

この先、ゴルフ場を通り抜けひと登りして大きな松の木が印象的な雨ヶ峠を越えて、いったん住吉川まで下る。ここから七曲りと呼ばれる急坂に取り付く。登り行程では一番の踏ん張りどころ。見事に紅葉したがカエデなどを見ながら進むと、つらさも感じない。

七曲りの急坂ではカエデが色づいていた

上部で一部崩落個所があり、迂回路で越えると山頂直下の一軒茶屋はもうすぐだ。近年、茶屋の前の広場に休憩所を兼ねたトイレが設置され、多くハイカーでにぎわっている。広場から5分ほど登れば、六甲最高峰、931mの山頂だ。

電波施設のある六甲最高峰山頂

芦屋川駅からほぼ900mの高度を稼ぐので、なかなかの登りだ。展望は東西と北がいい。大阪湾を望むなら、ちょっと南に下がった東屋か、あたりがいいだろう。昔、山頂部が米軍の施設で立ち入れなかった頃の山頂の碑があるあたりもいい。

有馬温泉へは、広場に戻って石畳を下っていく。石畳はすぐに終わり、しばらくは水平なで広々とした道になる。こちらは北斜面になるので、登りの南斜面より紅葉が進んでいるようだ。急な下りとなり、ひとしきり下って登り返すところ、右手に有馬温泉方面、瑞宝寺公園につながる筆屋道が口を開けている。直進しても有馬温泉に下れるが、今の季節、紅葉の名所、瑞宝寺公園に行かない手はない。直進するとやや遠回りになるので、筆屋道を歩いたほうが近道なのだ。倒木などがありちょっと荒れ気味だが、とくに問題はない。川沿いになり最後に太鼓滝を見ると瑞宝寺公園に着く。

六甲山の紅葉といえば、瑞宝寺公園は外せない

紅葉真っ盛りの公園は、有馬温泉をたびたび訪れた太閤秀吉ゆかりの場所だ。今日もたくさんの観光客でにぎわっている。この季節限定のもみじ茶屋に腰を下ろし、もみじ最中に舌鼓を打つ。ひとしきり歩いた後だから甘いものがうれしい。

もみじ茶屋のもみじ最中

公園で紅葉狩りの後は、風情たっぷりの温泉街を散策。有馬温泉でひと風呂浴びて帰ってもよいが、今日は金の湯前の足湯に使って帰途に就いた。

 

六甲山【兵庫県】

コース 阪急芦屋川駅~高座の滝~風吹岩~雨ヶ峠~六甲最高峰~瑞宝寺公園~神鉄有馬温泉駅

コースタイム 約5時間

紅葉適期 11月中旬〜12月上旬

アドバイス

万物相へは通報プレート「ひー4-10」のところを左に入る。紹介コースは全般によく整備されているが、筆屋道は魚屋道と比べてやや荒れている。

Yamakei Online Special Contents

特別インタビューやルポタージュなど、山と溪谷社からの特別コンテンツです。

編集部おすすめ記事