樹氷群が林立する吾妻連峰・西吾妻山で紺碧の空に映えるスノーモンスターの絶景美に感激

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巨大に成長した樹氷群が立ち並ぶ雪原の幻想的な風景が見られるのは北海道・大雪山や東北の蔵王山が知られていますが、関東からアクセスも良い吾妻連峰の西吾妻山でも奇怪なスノーモンスターに成長した樹氷群が林立する風景を楽しめます。天候と雪の状態のよいときに限られますが、そのチャンスを待って、西吾妻山の樹氷群に向かいました。

写真・文=奥谷 晶

紺碧の空に映える西吾妻山の樹氷群

冬型気圧配置が去った後の久しぶりの週末の晴天日、成長した樹氷群が立ち並び、奇怪な姿にまで成長したスノーモンスターたちに会いに、勇んで西吾妻山へ行ってきました。見事な快晴に恵まれ、ここ数日暖かい日が続いたので雪が落ちてしまう心配もありましたが、スノーモンスターたちは健在でした。

西吾妻山へは、山形県側からは天元台スキー場からアプローチできますが、福島県側からもグランデコスキーリゾートを起点にできます。グランデコスキーリゾートのゴンドラとリフトを乗り継いだゲレンデトップが登山口です。考えることは同じで、晴天を待っていた大勢の登山者が詰めかけ、ぞくぞくと樹林帯の斜面を登っていきます。降雪直後ならラッセル覚悟ですが、今日はトレースが期待できそうです。深雪にそなえてスノーシューやワカンの人が大半です。

磐梯山を横目で見ながら並び立つまで高度をあげていくと、やがて森林限界を越えます。雪の急斜面をあえぎながら登りきると西大巓のピークで、そこで一気に視界が開けます。西吾妻山へ向かう斜面の雪原にスノーモンスターと化した樹氷原が連なるのが目に飛び込んできます。磐梯山はもちろん、雪をかぶった巨大な飯豊連峰、月山、鳥海山など東北の名だたる雄峰がぐるりと見渡せました。

西大巓から見る白く輝く飯豊連峰の堂々たる山容

西吾妻山へはなだらかな樹氷原に沿っていったん下り、また緩やかに上っていきます。西大巓から先はトレースがないことも多く、吹雪などで視界不良時には、トレースも消え、現在位置を見失いやすい地形であることがみて取れます。とりわけスノーモンスターたちが林立する樹氷原に入り込むと、方向感覚を見失いがちで、まるで異世界の迷路に迷い込んだように錯覚させられるほどです。雪にそなえた十分の装備と、常に現在位置を確認するためのGPSは必携でしょう。さらに小屋をへて西吾妻山山頂へとトレースは続いていますが、山頂付近も平らで視界不良時には注意が必要です。

西大巓から見る磐梯山の偉容

今日は、撮影目的でしたので、山頂には行かず、スノーモンスターの撮影にしっかり時間を使いました。風雪を浴びて異様な姿に成長したその姿はまさにモンスターで、今にも動き出しそうな雰囲気を醸し出していました。帰路は西大巓を経てゴンドラ乗り場まで戻りました。この日は絶好の快晴でほとんど無風。紺碧の空に映える雪の造形美と360度の大展望を楽しむことができました。

まるで異世界の迷路に迷い込んだような雪の造形美を見せる樹氷群

MAP

コースタイム:約5時間15分 ※積雪状況による

ヤマタイムで周辺の地図を見る

西吾妻山データ

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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