冬山登山の準備はできましたか? 冬山用具は購入後に扱い方の訓練をしっかりと!

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 アイゼン・ピッケルはもちろん、冬山用具は様々な種類・タイプがあり、まさに千差万別。その中でもアバランチギア(雪崩に対応した装備)は、扱い方の訓練をしっかり行わないと、まったく価値のないもになってしまうものです。

 

この時期、登山用品店に立ち寄り、店員の方の説明に耳を傾けてみると、以下のような会話が聞こえてきます。

「クロージング(服装)はレイヤリング(重ね着)が基本です。フットギアはマウンテンブーツ(冬靴)の中からルート(登山形態と行程)によってチョイス(選択)して下さい」

「バックパック(ザック)の収納容量とフォルム(形)と機能は山行の日数と形態によりますので選択肢は豊富です。アイスアックス(ピッケル)には『テクニカル』と『ベーシック』があります。どちらを選ばれますか? ピック形状も各種ありますよ」

「クランポン(アイゼン)のポイント(爪)の数とマテリアル(材質)はいかがいたしましょう?」

冬山初心者らしいお客さんへの店員さんの説明ですが、最近の登山用具にはカタカナ英語の名前が多くて、少し戸惑ってしまいます。あくまでも個人的な感想ですが、昔からの美しい日本語表現の方がいいな~と思ってしまいます。

それだけ冬山用品は千差万別で、さまざまなものがあるわけですが、その中でも今回はアバランチギア(雪崩に対応した装備)について考えてみましょう。

冬山登山にはさまざまなリスク(危険)が伴います。中でも大きなリスクとして挙がるのが、雪崩に遭遇することです。下記の写真は高さ2m以上の破断面で広範囲に起こった雪崩です。左端にスキーヤーがいるのが確認できますが、比較すると雪崩の規模がどれほどだったかよくわかると思います。

 

もし雪崩が起きて巻き込まれてしまった場合、その後の行動はパーティメンバーの生死を分けることになります。ここで必要になるのが、アバランチギアです。

冬山登山における「三種の神器」と呼ばれているのは①ビーコン、②プローブ、③ショベルです。

それぞれの用具について簡潔に説明すると――、ビーコンとは雪に埋没した人を捜索するトランシーバの一種です。プロープとは3m程度の長さを持つ金属の棒で、ショベルは雪を掘るためのスコップのことです。

それぞれの装備の詳しい使い方・扱い方はここでは割愛しますが、共通しているのは扱うにはしっかりとした訓練が必須となることです。特にビーコンについては、初心者が雪山で簡単に使えるものではありません。最近のビーコンは高性能になり捜索にかかる人数や時間が、かなり短縮されるようになりましたが、使い方をしっかり理解していないと、せっかく高価なビーコンも何の価値もなくなってしまいます。

“ゾンデ棒”とも呼ばれるプローブは、材質や使いやすさは改善されていますが、扱い方を間違えると凶器になるので訓練と扱い方の注意は必須です。

ショベル(スコップ)は「剣スコ」や「角スコ」など形状や材質も豊富で、選択に迷う用具の1つです。大切なのは「扱いやすいショベルを選ぶ」ということです。なぜなら、雪崩で2m下に埋まった友人を助けるとなった場合、ショベルで5m四方の雪を掘り下げなければなりません。それには掘り出しに必要な体力と根性に加え、扱いやすさは重要となるためです。

冬山用具、とくにアバランチギアは購入して装着しているだけでは価値がありません。それぞれの用具・機器の特性を知り、扱い方の訓練を充分に行ったうえで、リスクを回避できる登山計画を作成する必要があります。

そして何より大切なのは、こうした用具を使うシチュエーションに巻き込まれないことです。登山中に雪崩に巻き込まれないためには、登山前からの現地の気象状況や、目指す山頂までの登山ルートの地形への把握と対応が重要となります。当然、それに伴う慎重な判断能力も必要となるでしょう。また、雪質に対する知識と豊富な経験も大切な要素です。

こうした現地状況を観察して、より安全なルートを慎重に判断しながら冬山を楽しんでください。

 

プロフィール

長野県山岳総合センター

長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。

⇒長野県山岳総合センター
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