秋こそ学ぼう「地図読み」の基本。地図を読むことで、登山の楽しさは一層広がります!

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地図読みは、安全登山のスキルを高めるだけではなく、山の楽しみを広げてくれるものです。地図から山の形や地形の変化を理解できると、山そのものをずっと深く味わえます。読図をマスターするためには、どんなステップを踏めばよいのでしょうか?

文・写真=長野県山岳総合センター


暑い夏が去って、快適な秋山シーズンを迎えました。秋は低山も楽しい季節ですが、道迷いが原因の遭難が多いことをご存じでしょうか? 落ち葉でルートがわかりづらくなったり、日没が早いために暗い中で行動して、分岐点を見落としてしまったりと、夏にはない原因による遭難が毎年のように発生しています。また、道に迷ったことで正規ルートではない場所に入り込んでしまい、滑落につながるケースも散見されます。

道迷い遭難を防ぐためには、まずは「現在地をしっかり把握」し、「ルートを先読み」して行動できることが大事です。そのためには、地図を読む=「読図技術」は必須となります。

「地図ってなんだか苦手・・・」、「スマホの地図アプリに頼りっきり・・・」。そんな登山者は多いものです。しかし読図の世界に踏み出してみれば、登山スキルが上がるだけではなく、単純に「読図って楽しい!」ということにも気づくはずです。この秋こそ、読図を学んで、ご自身の登山をより楽しく、安全にレベルをアップしてみませんか?

 

地図を読めることは、安全登山のための基本

まずは、読図技術の重要性について再確認してみましょう。一般的な山では登山道は整備されているところが多いですが、山によっては道標や案内板が充分にあるとは限りません。また、天候が悪くなると、視界がさえぎられて自分がどこにいるのかがわからなくなることがあります。そうした時に頼りになるのが「地図」です。地図を読む力があれば、現在地を正確に把握し、適切なルートを選んで進むことができます。これにより、道迷いのリスクを減らし、事故を未然に防ぐことができるのです。

また、地図を読めるようになると、万が一、登山道を外れてしまったときや予定していたルートが通行不能だった場合に、落ち着いて対応できます。たとえば、地図上で等高線を確認して最も安全なルートを見つけることが可能です。地図を読む技術は、命を守るためのスキルと言えるのです。

最近では、多くの人がスマートフォンの地図アプリを使って登山をしています。GPS機能が付いているため、自分の位置をすぐに確認できるのは大きな利点ですが、頼りすぎるのは危険です。バッテリー切れや故障で使えないこともありますので、紙の地図もいっしょに持参し、それをしっかり読めることが重要です。

また、スマートフォンの地図アプリを使うにしても、読図の基礎がわかっていれば、より詳細な地形やルートを理解し、安全に行動できるようになります。

 

地図を読むことは「楽しさ」を広げる

地図を読むことができるようになると、登山の楽しさも増します。ルートを自分で計画し、山の形や地形の変化を理解しながら歩くことができるようになると、ただ山頂を目指すよりも、山そのものをずっと深く味わうことができます。

例えば、登山前に地図を広げてルートを検討する時間は楽しいひとときです。また、山頂からの景色を見ながら、地図上でどの山々が見えるかを確認するのも登山の醍醐味です。

読図をマスターするためのステップ

読図を学ぶには、以下のステップがおすすめです。

  • 1.紙の地図を用意する:まずは自分が行く山の地形図を用意しましょう。国土地理院の地図や登山用の地図が適しています。縮尺さえわかれば、プリントアウトしたものでも大丈夫です。はじめは、歩き慣れた山で練習してみることをおすすめします。
  • 2.基本的な地図記号や等高線を学ぶ:地図には多くの情報が詰まっています。記号や等高線の読み方など「ルール」を理解することが第一歩です。
  • 3.現在地の把握を練習する:登山中に自分がどこにいるのか、常に地図と照らし合わせて確認する習慣をつけましょう。答え合わせはスマートフォンの地図アプリが便利です。地図で位置を確認する練習を繰り返すことが大切です。
  • 4.山行の計画を立てる:地図を使って自分でルートを計画してみましょう。距離や標高差、予想される所要時間を地図から読み取ることで、より実践的なスキルが身につきます。帰ってからの見直しも忘れずに。

 

雪山登山やバックカントリーでは必須の技術

「今年こそ、雪山にチャレンジしたい!」そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。特に、雪山登山やバックカントリーでの滑走を楽しむ方にとって、読図は必須技術です。登山道が隠れてしまう雪山では、現在地の正確な把握と、安全なルート取りが欠かせません。また、雪崩のリスクを避けるためにも、地図を読んで地形を理解することが重要です。

地図を読む技術は、安全な登山を楽しむための基本です。しかし、単に安全を確保するためだけでなく、地図を読むことそのものが登山の楽しさを広げてくれます。最近、ロゲイニングやオリエンテーリングの大会など、初心者向けのものも各地で開催されていますので、参加してみるのもおすすめです。ぜひ、地図を持って、次の登山に出かけてみましょう。

 「一人で学ぶのはちょっと・・・」と思われた方は、ぜひ各地で開催されている講習会に参加してみてはいかがでしょうか。長野県山岳総合センターでも、10月に初心者向けの講座を開催します。コンパスを持っていなくても大丈夫です。読図経験&知識ゼロでも大丈夫です。

日本のオリエンテーリング界の第一人者で、現在もレースにも出ている村越真先生と、数々のバリエーションルートを踏破し岩も山も楽しんでいる河竹康之先生を講師に迎えます。おもしろいお話もいろいろと聞けると思いますので、ぜひお気軽にご参加ください。

 

プロフィール

長野県山岳総合センター

長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。

⇒長野県山岳総合センター
⇒Youtube

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