秋田駒ヶ岳のムーミン谷でチングルマを愛で、ホテルグランド天空できりたんぽ鍋を味わう

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第40回は高山植物が咲く秋田駒ヶ岳と、田沢湖を眺めるホテルグランド天空へ。

写真・文=月山もも

秋田県と岩手県の県境にある秋田駒ヶ岳は、標高1637mの男女岳をはじめとしたいくつものピークから成り、高山植物が豊富なことでよく知られています。周辺に温泉が多いこともあって毎年のように登っているお気に入りの山です。

7月上旬、花盛りの秋田駒ヶ岳を歩いてきました。

ニッコウキスゲ・チングルマ・コマクサが盛り

最も登りやすい駒ヶ岳8合目登山口まではマイカー規制が敷かれているため、公共交通機関利用の場合はもちろん、車移動の方もバスで8合目に向かうことになります。

登山口が1300mという高所にあるため、歩き始めるとまもなく視界が開け、尖った山頂が特徴的な乳頭山の姿が見えました。

目指す山の向こうに田沢湖が見えるポイントもあり、どこを切り取っても絵になる風景が続きます。

1時間ほど歩いて阿弥陀池に着くと、池の周りにはニッコウキスゲが咲き乱れていました。

阿弥陀池からは最高峰の男女岳を目指す方が多いのですが、これまで何度も登っていますし、今日は高山植物をゆっくり眺めたいと思いピークには向かわず。「ムーミン谷」の異名を持つ馬場の小路コースを歩くことにします。 

急坂を下り、谷間の道を歩いていくと、チングルマの群生地に差しかかります。

辺り一面に広がるチングルマの花畑を、しばらく足を止めて眺めました。

ムーミン谷を通り抜けた先の大焼砂と呼ばれる砂礫のエリアにはコマクサが咲いています。

このあたりはとても風が強いエリアなのですが、高山植物の女王とも称されるコマクサは、しっかりと根を張って今年も美しい姿を見せてくれました。

コマクサを眺めた後は「焼森」を経由して8合目登山口に戻ります。焼森からは乳頭山に向かう縦走路が見え、あの道もひさびさに歩いてみたいな、と思いを巡らしました。

田沢湖を眺めつつ、風呂上がりの田沢湖ビール

ホテルグランド天空は、登山口行きのバスが出るアルパこまくさから徒歩10分という、便の良い場所にあります。

8畳広縁付きの和室。洗面所と洗浄機能付きのトイレもあり、Wi-Fiも利用可能な快適なお部屋です。

チェックイン時から布団が敷いてありますが、1人なのでそれでも広さは十分。縁側の窓からは田沢湖を眺めることができます。

ふと「田沢湖を眺めながらビールが飲みたいなあ」と思い、売店で地ビールを買ってきました。

田沢湖ビールの「ブナの森」、ブナの天然酵母を使用して醸造しているビールだそうです。

また、1階フロント前にあるラウンジからの眺望もすばらしかったです。

お風呂上がりにはロッキングチェアに揺られながら、まるで絵画のような景色を眺めて過ごしました。

開放感抜群の露天風呂で美肌の湯に浸かる

1階に、それぞれに露天風呂の付いた男女別の大浴場があります。

大きな窓からたくさん光の入る明るい浴室です。

湯に体を浸すと、ほのかに硫化水素臭が感じられ、炭酸水素塩泉らしいつるっとした浴感がある美肌の湯でした。

露天風呂は木造りで開放感抜群、眺めもすばらしいです。

屋根がついているので日焼けを気にする必要もないですし、雨の日も露天風呂での湯浴みが楽しめるのがうれしいですね。

秋田の地酒ときりたんぽ鍋、〆は稲庭うどん

食事は2階にあるレストランで。

ドリンクメニューには秋田の地酒がかなり揃っていました。迷ったすえに「刈穂」の吟醸生貯蔵酒「雪の紋」を注文します。夏にぴったりの、すっきりと軽やかなお酒です。

前菜から「みず」や「わらび」「根曲り竹」など、山の宿らしい料理が並びます。

台の物の「秋田錦牛味噌すき焼き」は甘めの味噌仕立てのちょっと珍しいすき焼きです。こっくりとした味噌味が日本酒によく合いますね。

そして鍋料理はきりたんぽ鍋!

秋田と言えばきりたんぽ鍋ですが、1人だと外食で鍋は食べにくいもの。1人前のきりたんぽ鍋を宿の夕食でいただけたのはかなりうれしかったです。野菜や鶏肉も入っていて、食べごたえがありました。

〆のご飯はもちろんあきたこまち!そして漬けものはいぶりがっこ。椀ものは稲庭うどんです。

食べ終わるころにはすっかり日が落ち、田沢湖が夕日に染まる姿をレストランの窓から眺めることができました。

 

朝も同じレストランで。品数豊富なおかずとあきたこまちをいただきます。

朝食会場にはドリンクコーナーがあり、ジュースや牛乳、コーヒーなどから好きなものをいただくことができます。

おいしいコーヒーを飲みながら、秋田駒ヶ岳のすばらしい景色を思い出していました。

*紹介した食事、サービスの情報は2022年8月取材時の内容です。 
 

ホテルグランド天空

料金:1泊2食付き/1名利用13,500円~ ※プラン、時期によって変動 
住所:秋田県仙北市田沢湖生保内駒ケ岳2-16 
電話:0187-46-2004 
HP:https://grand-tencoo.jp/

この記事に登場する山

秋田県 / 奥羽山脈北部

秋田駒ヶ岳・男女岳 標高 1,637m

 秋田駒ヶ岳は、男女岳(おなめだけ・1637m)、男岳(おだけ・1623m)、女岳(めだけ・1512m)の総称で、十和田八幡平国立公園の南端に位置する、北東北の名峰のひとつである。  春先の山肌に残る駒形の雪が、ふもとの村人の農作業の目安となり、昔から「だけ(岳)」と呼ばれ親しまれてきた。山越えの途中で倒れて死んだ馬にちなむ伝承もあり、駒ヶ岳の名で呼ばれるようになった。  古くからある中生保内からの道は、今はさびれているものの、白滝、金十郎長根、五百羅漢などの名称が残る、かつてのメインコースである。今は8合目(1310m)までバス利用(バス運行日はマイカー乗入禁止)が主流だ。このコースは国見温泉からのコースとともに、多くの登山者で賑わう。冬は田沢湖国際スキー場と田沢湖高原リフトが利用可能。  JR田沢湖駅前から、駒ヶ岳8合目行バスで1時間15分、避難小屋を兼ねた休憩所のある駐車場に着く。ここから1時間30分で男女岳、1時間20分で男岳に至る。女岳への道も2本ほどあるが、足場はよくない。ここから横岳、湯森山、笹森山、駒ヶ岳8合目へと回遊もできる。乳頭山、乳頭温泉郷、岩手側の国見温泉への道も整っている。  避難小屋の裏から乳頭山への縦走コースが始まっていて、男岳と横岳を結ぶ稜線上に出る。この辺りは遅くまで雪渓が残るときがある。稜線上の分岐から東に進むとすぐ横岳だが、ここからは国見温泉への道が分かれている。西側は昭和45年に突然噴火した女岳だが、今は白い水蒸気が立ち昇るだけだ。ここからは火山礫の幅広い尾根を北東に進む。付近はコマクサの群生地で、保護柵が作られている。  砂礫地の中を過ぎると道はハイマツの中を通るようになり、緑一色のジュウタンの上をのんびり登ると、やがて平坦で眺望のよい湯森山に着く。ここから笹森山を経由して乳頭温泉郷、その途中の分岐点から8合目の駐車場への道があるので、エスケープルートとしても活用できる。湯森山からさらに笊森山を通り千沼ガ原の高層湿原を眺めて乳頭山へ至る。千沼ガ原への往復を含め、駒ヶ岳から4時間30分の行程。  なんといっても、ここは高山植物の宝庫である。年々数が減っているコマクサは7月5日~10日ごろが見頃となり、シャクナゲやニッコウキスゲは7月20日すぎに美を競う。ハクサンチドリ、エゾツツジ、ヒナザクラ、イワカガミ、チングルマ、ミヤマダイコンソウ、ミヤマキンバイなど、まさに百花繚乱の趣がある。

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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