草原の美景を次世代へつなぐ。霧ヶ峰草原再生協議会
豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行なわれている。今回は、長野県の霧ヶ峰で草原の保全や外来植物の駆除に取り組む「霧ヶ峰草原再生協議会」を紹介する。
写提提供=霧ヶ峰草原再生協議会、取材・文=一ノ瀬伸
霧ヶ峰草原再生協議会(2017年度認定)
Area:霧ヶ峰Main activity:草原の保全、外来植物の駆除
Group profile:
2014年から霧ヶ峰周辺で活動開始。2007年に立ち上がった「霧ヶ峰自然環境保全協議会」とともに地元住民グループ、自治体などの約40団体で外来種駆除やシカの食害対策などを行なう。
2002年、長野県の霧ヶ峰高原を通過する有料道路が無料開放された。この区間は、先立って無料となった蓼科高原を通る道路とともに「ビーナスライン」の愛称で親しまれる。開放に伴って大勢の人々が訪れることを視野に、自然環境の保護や活用を検討する協議会が複数発足。「霧ヶ峰草原再生協議会」は2014年に立ち上がった。会は、土地所有者、自然保護団体、地元の自治体や大学などで構成されている。
実際、霧ヶ峰周辺は一面に広がる草原や国の天然記念物にも指定されている湿原の美景を目当てに、ドライブやハイキングの人気スポットとなった。人や車の行き来が増えて目立つようになったのが、外来植物の繁殖。会では、オオハンゴンソウやヘラバヒメジョオンなどの外来種駆除を行なう。コロナ禍の間は少人数の会員で実施したが、4年ぶりにボランティアを募集した今年7月半ばの作業にはおよそ60人が集まった。
「地元の方だけでなく、遠方から足を運んでくれる方もいます。霧ヶ峰に一度いらして、魅力的だったからと、みなさんすごく自然を愛していて。本当にありがたいことです」と、事務局長の田邊皇子さんは感謝を口にして、続ける。
「霧ヶ峰は気軽に壮大な高原の景色を楽しめる場所。人手を集めるのが課題になっているので、ボランティアにもっと参加してもらえるようにエコツアーのような企画ができたらと考えています」
活動はほかに、繁殖し過ぎたササやススキといった優先種の刈り取り、ニッコウキスゲをシカの食害から守るための柵の設置・点検などがある。自治体や地域住民が主催する作業の手伝いも行ない、年間を通じて霧ヶ峰で作業に汗を流す。
「炎天下で、植物を根こそぎ刈ったり、それをトラックに積んだりとなかなかの体力仕事ですが、外来種が少し減ったと感じられたり、美しく咲き誇るニッコウキスゲを見たりと、成果が出たときにはやってよかったなと思えますね」
★日本山岳遺産認定地 詳細:霧ヶ峰 [ 長野県 ]霧ヶ峰草原再生協議会(2017年)
日本山岳遺産候補地を募集中! みなさまの活動を支援します
日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。
支援団体の条件
- 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体
- 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行なっている団体
- 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体
助成対象となる活動費の主な用途
- 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費
- 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費
- 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費
助成金総額 250万円(予定)
詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html
(『山と溪谷』2023年9月号より転載)
プロフィール
日本山岳遺産基金
日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/
日本山岳遺産の横顔
日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!