雪山登山で身につく技術とは? 山岳ガイドに教わる“雪山登山 入門のススメ”(7)

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雪山での登山は、夏山での登山を高めてくれます。雪山登山で実際に身につく技術とは、どんなものがあるでしょうか? 雪山の経験が豊富な山岳ガイド 山田哲哉氏に、夏山登山と比較しながら雪山で求められる技術を教えてもらいました。

POINT
  • 夏山と雪山の決定的な違いは、登山道のアリ・ナシ
  • 雪山で重要なのは“自分の進むべきルートを自分で考えられる”技術
  • 雪山で身につけた技術は、もちろん夏山でも役立つ!
雪山で身につく技術を考える

質問: 雪山経験のある友人から「本気で登山をやるなら、雪山をやるべきだ!」と言われました。雪山登山はどんな技術が身につきますか? 夏山にも役立ちますか?

雪山では“自分の進むべきルートを自分で考えられる”技術が必要

夏山(無雪期)登山と雪山登山の決定的な違いは、登山道のアリ・ナシでしょう。登山道を上り下りする登山の場合、「おっ! キレイな草原があるな・・」なんて道を外れれば「登山道を歩いてください!」と注意されかねません。「登山道を外れること」=「道迷い」とされるのが一般的です。また、指導標や案内板、岩に描かれた〇印のペンキマークなど、登山道を歩くための配慮が時には“充分すぎる”と思ってしまうほど、されているのが夏山登山です。

雪山の場合はどうでしょうか。登山道は雪の下なので、登山道の場所を把握したい時は、樹林の生え方や目標物の位置など周囲の状況から予測しなければなりません。また、積雪期では登山道の上にルートをとることが危険な場合もあります。例えば、上高地から涸沢へ行く登山道や大樺沢から北岳に向かう登山道などのような無雪期には多くの登山者が行くルートでも、積雪のある時期には雪崩の危険が随所にあるので、通ることが難しくなります。

雪山に行く場合は、準備段階からどこにルートをとって登るのか、しっかり計画を立てる必要があります。それでも、現場で狭いルンゼの合流する箇所に行き当たったり、上部に不安定な雪面があったりするとわかれば、その場で行く行かないの判断が求められます。雪山で安全に登山ができるということは、登山において“自分の進むべきルートを自分で考えられる”技術を身についているということになります。

工夫しながら進む! 地図は読めないとNG!

前進することだけを考えても、「安定する足場を決める」、「バランスを保つためにピッケルを確実に持つ」など、絶えず“工夫する”ことが必要です。また、コンパスを使った地図読みも不可欠な技術です。自分のいる場所を把握し、これからのルートを決めるために頻繁に地図を引っ張りだして“読む”ことが求められます。単に地図を“持っているだけ”では、ダメなんです!

雪山技術と言うと、氷雪技術や生活技術など、雪山ならではの技術が先に浮かぶかもしれません。それらも当然必要ですが、僕は「絶えず工夫する。都度考え判断をする」ということが最重要技術だと感じています。雪山で身につけた技術は、夏山でももちろん役に立ちます。

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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