単独ハイカーはマスト!山岳保険のキホン【山と溪谷2024年2月号特集より】

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『山と溪谷』2024年2月号の特集「単独ハイキング入門」では、ひとりで山を歩くために必要な「装備」「計画&行動」「リスク対処」について解説。計画&行動編から、実際の現場で行なう判断について解説したページを紹介する。

構成・文=阿部 静、イラスト=kigimura

井関純二
教えてくれた人 井関純二さん
いせき・じゅんじ/2014年にやまきふ共済会を設立。山岳捜索救助費用などに対する保険制度の運営や寄付を通じて安全登山の啓発を行なっている。

ひとりで登山するときこそ備えは万全に。

遭難時に家族に迷惑をかけないために山岳保険について正しく知って、自分に合ったプランに加入しよう。

山岳保険ってそもそも必要?

遭難時の捜索救助費用を補償する唯一の保険です。備えとして入っておきましょう。

「登山に出かけるかぎり、どんな人にも遭難してお金を請求されるリスクがあります。遭難捜索から救助、病院へ搬送するまでの費用を補塡してくれるものを山岳保険と呼びます」。 長期行方不明の場合、捜索費として何百万円も請求されることがあるが、多くの場合、山岳保険で補塡することが可能だ。

捜索費用に含まれるもの

  • 救助隊員に対する費用
    (日当、保険料、食料費、宿泊費、交通費、燃料費、事務費など)
  • 家族、関係者の駆けつけ費用
    (交通費、宿泊費など)※2人分、14泊まで
  • 遺体搬送費

Point
遭難原因が病気・道迷い・疲労・天災などの場合、山岳保険によっては補償されないことがある。遭難して補償されないケースがあるかどうか確認しよう。

山岳保険でなにがカバーできる?

保険によってさまざまです。補償内容をしっかり確認しましょう。

登山は判断を繰り返しながら進んでいく。これまでの山行で自ら意思決定を行なったことがない人は、パーティ登山であってもリーダーになったつもりで考える癖をつけておこう。

「行動中に行なう判断は、ルートファインディング、休憩のタイミング、補給のタイミング、予測した危険に対してどのように行動するか、引き返すか先へ進むか、救助を要請するかしないかなど、挙げると切りがありません。特に仲間がいない単独行では、危険の予測が重要です。まずは危険に気付くこと。そして、対策はより慎重に考える必要があります」

主な補償内容

  • 遭難
  • 死亡
  • 個人賠償責任
  • 物損
  • ケガ
  • 盗難
  • 損害賠償責任

Point
個人賠償責任や携行品の特約は火災保険や自動車保険など、日常生活の保険で補塡できる。現在入っている保険と山岳保険で補償される内容を確認したい。

山岳保険にはどんな種類があるの?

契約期間の違いや山岳遭難に特化した保険などがあります。

「年間契約のものと都度契約できる短期型のものがあります。また、山岳遭難救助費用に特化したものもあります。補償される遭難原因やケガが補償される活動内容、補塡される捜索救助費用の上限は保険会社やプランによって異なります」

短期契約型

1日から加入でき、その都度契約可能。補償される遭難原因が限られ、ケガの補償も活動内容が限られるものが多い。

モンベル山行保険
1泊2日~、1000円~加入できる。山岳登攀の活動を含む遭難時の捜索救助費用とケガを補償。

長期契約型

契約期間は1年~、保険料は4000円~。遭難原因を幅広く補償し、ケガの補償活動内容はプランにより異なるものが多い。

やまきふ共済会
捜索救助費用補償のほか、年会費7500円のプラス会員はケガや死亡、賠償責任の補償も付帯。

特化型

山岳遭難・捜索に対する費用補償に特化した保険。ケガに対する費用や死亡保障は対象外。幅広い遭難原因に対応。

jRO
遭難救助費用実費を会員で補填する会員制度。そのほかレスキュー費用保険などがある。

『山と溪谷』2024年2月号より転載)

プロフィール

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。

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雑誌『山と溪谷』特集より

1930年創刊の登山雑誌『山と溪谷』の最新号から、秀逸な特集記事を抜粋してお届けします。

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