このエントリーをはてなブックマークに追加

雪山登山の目標は赤岳! 山岳ガイドに教わる“雪山登山 入門のススメ”(8)

山の疑問・難問、登山ガイドが答えます!
基礎知識 2018年03月02日

いつか登りたい山はありますか? 目標を持つことで、山へのモチベーションがあがったり、自分を知り、ステプアップにつながったりすることもあるでしょう。今回は、雪山登山でよく目標とされる「赤岳」について、憧れとされる理由、難しいポイント、挑戦する際に注意したいことなどを聞きました。

POINT
  • 見事な山容・アクセスの良さ・山小屋の冬季営業
  • 一番の難しさは、岩と雪のミックスした氷雪登山
  • 訓練を積み重ね、安定した技術と体力の上に、ぜひ赤岳へ挑戦を!
雪山登山者の憧れ「赤岳」

質問: 今年から雪山登山を始めたのですが、目標は「赤岳」です! 週末には、たくさんの登山者が赤岳を目指して登っていると聞きます。私も、ぜひ登りたいです。赤岳について教えてください。

八ヶ岳最高峰、屹立した岩壁をもち重厚な山容の赤岳

八ヶ岳最高峰・主峰である赤岳は雪山登山者の憧れです。東西に屹立した岩壁をもち、どこから見ても重厚な山容は見事です。“初めての本格的な雪山”として赤岳が目標とされる理由には、首都圏からも関西からもアクセスが良い事、山麓・山中・頂上直下に冬季も営業する食事付きの山小屋があり、雪山登頂に専念できる事が考えられます。

諏訪側から登山を行なう場合、登山口の美濃戸口の標高が1500m。山頂との標高差は1400m前後で、これを一泊二日で登る計画であれば、体力的には一般の登山者なら対応できるレベルです。行く前から他人のトレースをあてにするのも何ですが、週末には多くの登山者が入山しているので、赤岳鉱泉や行者小屋などの拠点までは、ラッセルすることなく行けることが多いです。

*赤岳鉱泉からの現地情報はこちらから

岩と雪のミックスした氷雪登山、慎重さを要する尾根ルート

積雪期の赤岳の一番の難しさは、岩と雪のミックスした氷雪を登山することでしょう。八ヶ岳全体では、この赤岳と阿弥陀岳、横岳、権現岳は、アイゼンやピッケルを使う氷雪技術をフルに活用しての登山となります。足元が完全にアイスバーンのように凍結していることも、気がついたらホワイトアウトになることもあります。その状況下でも間違いなく、アイゼンを斜面に効かせ、ピッケルで確実にバランスを保ち続ける技術が必要になります。

特に、赤岳の山頂を行者小屋から目指す周回ルートで通る地蔵尾根では、木々がまだらになる辺りから雪が不安定になり、雪質を観察する事が必要です。そこからの斜面は岩混じりの氷雪の斜面で、安定したアイゼン歩行が求められます。さらに主稜線に出る手前は尾根が痩せて、高度感もあり、慎重に行動しなければいけません。天望荘から先は、上に行くほど左右の岩壁が迫り、風の影響も受けやすく、僕でも緊張します。

また、文三郎尾根をルートにとった場合は、いきなりの急登でここも注意が必要です。中岳との分岐を過ぎ、立場川の上部へと回り込むまでは強い風の中。ここからは岩と雪のミックスで、一見、穏やかに見える傾斜の下は立場川奥壁で一気に切れ落ちています。キレットからの尾根に合流してからは急峻な登りで、山頂直下は、これまた佐久側(東側)が大門沢まで切れ落ちていて、慎重な行動が求められます。こういったところでの転倒は、滑落につながり致命的な事故になるケースがあるので、細心の注意で臨んでください。

ぜひ、安定した技術の上で挑戦を!

赤岳に登っている登山者は、みな雪山技術を身につけた人ばかりでしょうか? 雪山初心者に登山経験を訪ねると「赤岳は登ってます」という登山者に多く出会います。「えっ。大変じゃなかった?」と尋ねると、「大勢登っていたし。高齢の人も一人で登っていたし。僕も大丈夫でした」などの答えが返ってきます。赤岳を登っていると、単独山行で、ピッケルの持ち方すら怪しい登山者がクサリにしがみついて前進している姿をよく見かけます。それは、とても危険な状況です。実際に、多くの滑落事故が発生していることを認識してください。

雪山技術を習得中で、ちょっと自信のない人は、氷雪技術の基礎を繰り返し習得してから挑んでほしいと思います。それが不十分な場合は、ロープを積極的に使用してください。「みんなロープ使ってないし・・・」なんて、言っていてはダメ。僕がガイドのときは、積極的にロープを使ってもらいっています。

赤岳は、大きな指標となる山です。「雪の赤岳に登りたい!」と努力しても良いですし、赤岳の登頂がきっかけとなって、本格的に雪山登山をはじめる登山者もいます。丁寧に訓練を積み重ね、安定した技術、体力の上に挑戦していただければと思います。

日本の山 雪山・冬山
教えてくれた人

山田 哲哉

1954 年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。著書に、登山技術全書「縦走登山」(山と溪谷社)ほか、「奥秩父、山、谷、峠そして人」(東京新聞出版局)など多数。
 ⇒山岳ガイド「風の谷」

同じテーマの記事
はじめに揃えるべき登山の必需品。山岳ガイドに教わる“登山 はじめの一歩”(3)
登山用品店に行くと、さまざまな種類の山道具。また、ひとつのアイテムをとってみても、多くのラインナップがあります。さて、これから登山をはじめる時、どの山道具から揃えたら良いでしょうか? 今回は、登山をはじめる時に絶対に必要となる道具について聞きました。
初心者が楽しめる山の選び方の目安。山岳ガイドに教わる“登山 はじめの一歩”(2)
丹沢、大菩薩、奥多摩。首都圏近郊にも初心者が楽しめる山々が沢山あることがわかりました。今回は、初心者が楽しめる山の選び方の目安を教わります。
東京から行ける魅力的な山々。山岳ガイドに教わる“登山 はじめの一歩”(1)
背景に相模湾を、行く手には富士山を臨む丹沢。甲府盆地を眼下に銀屏風の南アルプスを眺める大菩薩。澄んだ渓谷美と森の美しさが残る奥多摩。東京から行ける魅力的な山々の話を聞きました。
最も印象に残った雪山山行。山岳ガイドに教わる“雪山登山 入門のススメ”(最終回)
「山岳ガイドに教わる“雪山登山 入門のススメ”」シリーズでは、8回に渡り、山岳ガイドの山田哲哉氏に雪山登山についての話を聞いてきた。本シリーズ最終回は、山田氏に最も印象に残っている雪山山行を伺った。
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

雨時々曇
明後日

(日本気象協会提供:2018年6月19日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW 「雨の山を楽しむ」GORE-TEX特集の第一弾公開!
「雨の山を楽しむ」GORE-TEX特集の第一弾公開! 横尾山荘 山田直さんが語る「GORE-TEX」。モンベルのストームクルーザーを愛用する山田さんに語っていただきました!
NEW 日本百名山・谷川岳はイベント盛りだくさん
日本百名山・谷川岳はイベント盛りだくさん 山麓のみなかみ町は、ラフティングやキャンプが満喫できるアウトドアの町。夏、開山祭ほかイベントが盛りだくさんの谷川岳へ!
NEW 日帰りの山で重宝するデイパックをテスト
日帰りの山で重宝するデイパックをテスト 高橋庄太郎さんの連載「山MONO語り」。今月はグレゴリーの「サルボ24」を毛無山の日帰り山行でテスト! 詳しくはこちら
NEW デニム風のレインジャケット…本当に雨具なの?
デニム風のレインジャケット…本当に雨具なの? デニムをまとってハイキングへ! 登山の常識をくつがえすコロンビアのデニムシリーズ。ドクターデニムこと、本澤裕治氏とのコラ...
NEW 「夏の西穂高プレゼントキャンペーン」が開催
「夏の西穂高プレゼントキャンペーン」が開催 L.L.Beanで使えるクーポン券がもれなく当たる! 100年以上の歴史を誇るアウトドアブランドL.L.Bean特集!
NEW 飛騨から登る北アルプス 写真コンテスト
飛騨から登る北アルプス 写真コンテスト 笠・双六・槍・西穂・乗鞍ほか北アルプスを登った時の写真を大募集! 奥飛騨温泉郷の宿泊券やロープウェー乗車券が当たる!
NEW 岩場に強いだけではない! モンチュラ登山靴
岩場に強いだけではない! モンチュラ登山靴 夏山登山で活躍すること間違いなし。「ヤルテクノGTX」の機能性と履き心地をモニターの方に試していただきました。ハイキング...
NEW 小林千穂さんと登る残雪の八ヶ岳・北横岳
小林千穂さんと登る残雪の八ヶ岳・北横岳 モンチュラのウェア・シューズの中から、標高2000m以上の山を登る時におすすめしたいアイテムを千穂さんがご紹介!
グレゴリーの“あの”大型ザック、新モデル登場!
グレゴリーの“あの”大型ザック、新モデル登場! 【モニター募集中!】新たな「バルトロ / ディバ」の“極上の背負い心地”を体験できるチャンス!
最新スマートウォッチを筑波山で体験!
最新スマートウォッチを筑波山で体験! シンガーソングハイカー加賀谷はつみさんのTrek&Liveツアーで、参加者全員がスマートウォッチを体験! その使...
湿原は緑に染まり、初夏の尾瀬へ
湿原は緑に染まり、初夏の尾瀬へ 誰でも歩けて、自然の素晴らしさを感じられる尾瀬のシーズンが始まります。イベント、特典も盛りだくさんの尾瀬をご案内!
梅雨時期こそ登りたい、登るべき山
梅雨時期こそ登りたい、登るべき山 雨降りの中で登山をするのは、やはりオススメできないが、梅雨時の今こそ登りたい山はたくさんある!
レンゲツツジが山肌を彩る季節です
レンゲツツジが山肌を彩る季節です 初夏の時期、山肌を朱色に染めるレンゲツツジ。例年は6月下旬がピークだが、今年は今が最盛期。行くなら今でしょ!
登山シーズンに向けたアウトドアソックス特集!
登山シーズンに向けたアウトドアソックス特集! 「自分の足に合った登山用の靴下はどうやって選んだらいいの…?」そんな疑問をお持ちの方のための特集です!