アルパインブーツはトレッキングシューズとなにが違う? 特長と選び方を詳しく解説!

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アルパインブーツはトレッキングシューズと並ぶ登山靴のひとつ。姿形はハイカットのトレッキングシューズと似ていますが、得意とするシーンは異なるようです。特長と選び方のポイントを解説します。

文=吉澤英晃、写真=福田 諭

目次

アルパインブーツとは?

北アルプスに連なる穂高連峰や槍ヶ岳、剱岳の周辺には岩場が延々と続くルートがあります。アルパインブーツは、このような岩場が多い登山道で、垂直方向へ移動するシーンを得意とする登山靴です。

高度感のある岩場は集中力と緊張感を強いられる(剱岳)
高度感のある岩場は集中力と緊張感を強いられる(剱岳)

アルパインブーツの特長

  • 防水機能が備わっている
  • 凹凸の多いブロックパターンによって強いグリップ力が生まれる
  • トレッキングシューズと比べてソールが硬い
  • クライミングゾーンがデザインされている

⇒岩場が多く、よじ登るような場所がある登山道に向いている

岩場が得意なアルパインブーツも、土の上でグリップ力を高めるために細かいブロックパターンを備えている
岩場が得意なアルパインブーツも、土の上でグリップ力を高めるために細かいブロックパターンを備えている

防水機能と強いグリップ力は登山靴に共通する項目です。ここではアルパインブーツならではの特長と選び方のポイントを見ていきましょう。


アルパインブーツの特長

アルパインブーツの外見はハイカットのトレッキングシューズと似ていますが、想定するルートを安全に踏破するために、独自の機能を備えています。

小さな足場に立ち込みやすい硬いソール

硬いソールのおかげでつま先に力が集中。小さい足場にも比較的安定して立ち込める
硬いソールのおかげでつま先に力が集中。小さい足場にも比較的安定して立ち込める

アルパインブーツにはトレッキングシューズよりも硬いソールが備わっています。これは、岩場でつま先を置けるほどの小さな足場しかない場合でも、立ち込みを容易にするための特長です。

このようなシーンでソールが柔らかい靴を履いていると、かかとが落ちてしまいつま先に力を集中することができず、足元が不安定になり滑落の危険性が増してしまいます。

トレッキングシューズ(右)はローカットやミッドカットが選べるが、アルパインブーツ(左)は足首を完全に覆うハイカット一択になる
トレッキングシューズ(右)はローカットやミッドカットが選べるが、アルパインブーツ(左)は足首を完全に覆うハイカット一択になる

立ち込みをサポートするために多くのモデルがハイカットを採用している点も、アルパインブーツの特長といえるでしょう。

広く摩擦力を得るためのクライミングゾーン

つま先にクライミングゾーンがあると岩に接する面積が広くなる
つま先にクライミングゾーンがあると岩に接する面積が広くなる

アルパインブーツのアウトソールには、つま先に平坦なブロックパターンがデザインされています。これがクライミングゾーンと呼ばれるポイントで、接地面積が広がり、アウトソールの摩擦力を最大限に生かすことができます。

10〜12本爪アイゼンを装着しやすい

「コバ」と呼ばれるアイゼンを装着するためのポイント
ソールとヒールカップのつなぎ目にある出っ張りが、「コバ」と呼ばれるアイゼンを装着するためのポイント

アルパインブーツには、かかとやつま先に10~12本爪アイゼンを装着するための「コバ」と呼ばれる出っ張りが備わっています。しかし、国内の無積雪期にアイゼンの出番はほとんどありません。これはモンブランやマッターホルンなど、夏でもアイゼンを使う必要のある海外の山での使用を想定しているからで、コバがあるほうがなにかと都合がいいのです。

また、アイゼンを装着しやすい=雪山用の登山靴と思い込まないように注意しましょう。雪山用のアルパインブーツには、ゴアテックスインサレーションに代表される断熱材や保温材が使われています。一方、3シーズン用のアルパインブーツには断熱材などが入っておらず、雪山用と区別して「ライトアルパインブーツ」と呼ばれることもあります。

なだらかな地形では歩きにくいことも・・・

比較的平坦なルートはトレッキングシューズのほうが歩きやすい(雲取山)
比較的平坦なルートはトレッキングシューズのほうが歩きやすい(雲取山)

アルパインブーツの硬いソールは岩場での登攀性が高いというメリットがある一方、なだらかな地形では歩きにくいというデメリットがあります。岩場が現われないルートでは歩行性に優れるトレッキングシューズを選んだほうがいいかもしれません。


おすすめ定番アルパインブーツ

[スポルティバ]
エクイリビウム ST GTX

北イタリアに本拠を置くスポルティバは、「トランゴ」シリーズを通してライトアルパインブーツを世に広めたブランドでもある。それから時を経てリリースされた新シリーズが「エクイリビウム」で、均衡を意味するネーミングのとおり、登攀性から歩行性まで、あらゆる性能をバランスよく備えている。立体的な内部構造で靴との高い一体感を得られ、特殊なソール構造で軽量に仕上がりつつ、クッション性と足裏感覚が秀逸。下りでは、斜めにカットされたヒールブロックが唯一無二の安定性とブレーキ力を発揮する。

スポルティバ エクイリビウム ST GTX

SPEC

価格 60,500円(税込)
重量 約630g(26.7cm相当、片足)
サイズ展開 EU38〜48(24.3〜30.3cm相当)
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[ローバー]チェベダーレ Ⅱ GT

ローバー チェベダーレ Ⅱ GT

ローバーは、2023年に創業100周年を迎えたドイツの老舗の登山靴ブランドだ。足首の屈曲を考えて生み出された左右非対称のタンのデザインや、歩行中にアッパーがズレないようにシューレースで理想的な位置をつねに固定する仕組みなど、長年の歴史のなかでいくつものオリジナルの機能を生み出してきた。チェベダーレー Ⅱ GTも独自機能を漏れなく搭載し、アルパインブーツとして高い剛性をもちながら優れる足裏感覚でバランスを取りやすく、つま先が若干反り上がったロッカー形状で、平坦なトレイルでも想像以上に歩きやすい。

ローバー チェベダーレ Ⅱ GT

SPEC

価格 50,600円(税込)
重量 約825g(26.5cm相当、片足)
サイズ展開 EU6.5〜11(25.2〜29.0cm相当、ハーフサイズあり)
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[スカルパ]リベレ HD

スカルパ リベレ HD

北イタリアで創業したスカルパは、登山靴からトレイルランニングシューズ、クライミングシューズ、スキーブーツまで手掛けるシューズ専門の総合ブランドだ。岩稜帯を含むテクニカルなルートを踏破するために開発されたリベレHDは、タンとアッパーを一体化させたソックフィットXTという構造をもち、まるで靴下を履いているような高いフィット感が特長。ヒールの真下に密度の異なる2つのミッドソールを使い、内側に配置した硬めのミッドソールでかかとを支えることで歩行中の安定性を高めている。

スカルパ リベレ HD

SPEC

価格 53,350円(税込)
重量 約745g(27.0cm相当、片足)
サイズ展開 EU39〜46(24.5〜30.0cm相当)
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[アゾロ]フレネイ EVO GV Men's

アゾロ フレネイ EVO GV Men's

イタリア発祥のアゾロは、「あらゆるアウトドアフィールドに最適なフットウエアを提供すること」を最大の目標に掲げ、当時、世界に先駆けてコーデュラナイロンを登山靴に使うなど、伝統を大切にしながら革新的な技術や素材をいち早く取り入れることで登山靴の進化を牽引してきた。ブランドの意志はフレネイ EVO GVにも見ることができ、断熱性レイヤーを組み込んだ珍しい4層構造のゴアテックスファブリクスはそのひとつ。側面のパネルには高強度繊維が織り込まれている素材を使い耐久性を高めている。

アゾロ フレネイ EVO GV Men's

SPEC

価格 51,700円(税込)
重量 約743g(27.0cm相当、片足)
サイズ展開 K7.0〜10.0(26.0〜29.0cm相当、ハーフサイズあり)
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詳細を見る(ウィメンズ)
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※この記事は2021年6月2日に公開した記事を更新したものです

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プロフィール

吉澤 英晃

1986年生まれ。群馬県出身。大学の探検サークルで登山と出合い、卒業後、山道具を扱う企業の営業マンとして約7年勤めた後、ライターとして独立。道具にまつわる記事を中心に登山系メディアで活動する。

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