本格的な夏山シーズン。山岳遭難&救助活動の実態を動画で知り安全登山を! 山岳遭難の現場から

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長野県警察山岳遭難救助隊では、山岳遭難の実態を多くの登山者に知ってもらうため、実際の救助活動の様子を「長野県警察YouTube 公式チャンネル」で公開している。その中から3つの事例をもとに、夏山登山中の注意点について解説。

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いつでも、どこでも、だれにでも起こり得る「転倒」遭難

3件目は、北アルプスの通称「裏銀座コース」の途中に位置する西岳で発生した転倒遭難です。転倒遭難は、県内で発生する山岳遭難の中で最も多く、昨年夏山期間中は、101件中35件が転倒による遭難でした。転倒遭難はスリップ、木の根などへのつまづき、倒木や岩と岩のすき間への挟み込みなどが原因となって発生しています。

事例のように足首や下肢の捻挫や骨折を伴い、自力下山が困難となるケースが多く、いわゆる危険箇所よりも「こんなところで・・・」という場所で発生することがほとんどです。「気の緩み」や「油断」、「不注意」に足元の不安定さが加わり偶発的に発生するパターンが多い傾向にあります。つまり、「いつでも、どこでも、誰にでも、起こり得る遭難」と言えるのです。

事例の遭難者Cさん(50歳、男性)は、登山歴は約20年で、ランニングを日課とし、月に数回は山登りをしているとのことで相当の経験者と言えるでしょう。今回は仲間4人と2泊3日の予定で燕岳から槍ヶ岳に向けて裏銀座コースを縦走中、西岳付近を通過する際に不安定な浮き石に足を滑らせ足首を負傷してしまいました。

映像で見ても分かるとおり、現場は北アルプスではよく見かける一般的な登山道で、大小さまざまな岩が点在していますが、取り立てて危険な場所ではありません。しかし、このような場所で転倒遭難は発生しているのです。順調なときこそ慎重な行動を心掛け、仲間がいるときは「浮き石に注意」などお互いに具体的な注意喚起をしながら行動するようにしましょう。

ローカットシューズに多い足首の負傷

また、今回の事例のようにトレイルランニングシューズのようなローカットタイプのものは足首の保護や堅牢性という点でハイカットのトレッキングシューズや登山靴と比べて劣ります。

登山歴や脚力、実際に登山するコースや行程によって適した靴は人それぞれ異なりますので不安のある場合は、専門店で相談して自分に合った最適な一足を選んでもらいたいと思います。

それから、パトロールや常駐をしていると毎年のように靴底の剝離した登山靴で行動している方を見かけます。現場で応急処置の相談を受けることもしばしばありますし、過去には岩稜帯を通過中、靴底が剝離したため行動不能になり救助された事例もありました。購入から年月の経過した靴や、外見から劣化が見られる場合は、剝離のおそれがないか、必ず入山前に確認をお願いします。

 

終わりに

安全登山の基本は「自分も遭難するかもしれない」という危機感を事前準備の段階から実際の行動中も持ち続けることです。この夏に長野県内で登山を予定されている方は、ぜひ、今回紹介した遭難事例を参考に遭難の実態と登山のリスクに目を向け、安全で楽しい登山を心掛けてもらいたいと思います。

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山岳遭難の現場から Mountain Rescue File ~長野県警察山岳遭難救助隊

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