“登る僧侶”小雪童さんに聞く、登山と山岳信仰のクロスロード

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登山と修験の共通点

――ぼくも登山をすることで、日常生活の悩みが小さく見える、ということは経験を通じて知っています。歩いているときにいろいろ考えているはずなんですが、終わると何考えてるのか覚えていない。その感覚が心地いい。

理論と実践は両輪です。滝にうたれてみると水圧で思い悩むどころじゃない。どうでもいいことで悩んでいたと体感しますよね。一方で、滝行は水で汚れを洗い流すという意味がある。御嶽山の山頂から流れ下る雪解け水を受けて仏のパワーを得る。そうすることで仏の境地に少し近づく。

山登りの体験も瞑想と通じます。実際、禅宗には歩きながらする座禅もあります。行動してはじめてわかる。それを山岳修行の場合は密教の教義に従って体験する。方法論は蓄積の末に定着しました。人類全体に通用する何かがあるはずだし、科学的な部分もある。

伝統を現代的な手法で発信

――今後はどういった活動をしていきたいですか?

YouTubeでの発信は続けたいです。「山と仏」を推してくれる人を増やして、いっしょに山にも登りたい。槍ヶ岳に登り、播隆上人の足跡をたどる動画を作りました。長野県の霊山も全部紹介したい。

また、お寺は伝統を受け継ぐ場所でもありますが、その伝統的な行事も「山と仏」でやってきたように、現代的な手法で発信していきたい。断食も含め22日間を費やす真言宗の難行「八千枚護摩供」を行ないたいと思っています。命懸けの修行になりますが、ライブ配信でこれをお伝えしたいと思っています。

私は僧侶ですから祈ることができること。お返しとしてはお祈りが一番かなと思っています。

御嶽山 石室山荘
石室山荘での理趣三昧法会を終えると束の間青空が見えた
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この記事に登場する山

長野県 / 御嶽山とその周辺

御嶽山・剣ヶ峰 標高 3,067m

 ♪木曽のなあ、仲乗りさん、木曽の御嶽山はなんじゃらほい、夏でも寒い、よいよいよい♪  哀調を帯びた木曽節に歌い込まれた御嶽山(御岳山)は、富士山、白山とともに信仰の山として知られている。現在でも夏には白衣の御岳講の人たちが、「六根清浄」を唱えながら大勢登っており、『信濃奇勝録』にも「信州一の大山なり、嶽の形大抵浅間に類して、清高これに過ぐ、毎年六月諸人潔斎して登る、福島より十里、全く富士山に登るが如し」と書いてある。  御嶽山黒沢口の登山道沿いには、「何々覚明」と刻まれた石柱が、所狭しと林立しているのが見られるが、江戸末期から明治初めにかけて、毎年何十万人も登ったといわれる御岳講の賑わいぶりが想像される。  この御嶽山は何回もの爆発を繰り返したコニーデ型の複式火山で、1979年(昭和54年)には突然、地獄谷に新しい噴火口を現出させ、日本中をびっくりさせている。また、91年、07年にもごく小規模な噴火をしている。  最高峰は3067mの中央火口丘、剣ヶ峰で、その周りを継子岳(ままこだけ 2859m)、摩利支天山(まりしてんやま 2959m)、継母岳(ままははだけ 2867m)などのピークが外輪山となって取り囲んでいる。  また、これらの峰々の間にはエメラルド色をした、一ノ池から五ノ池まで数えられる山上湖が散在している。なかでも二ノ池は標高2905m、日本で一番高い湖として知られている。これらの池を結んでの池巡りコースも考えられる。  登山コースは信州側から3本、飛騨側から1本の計4本がある。7合目の田ノ原までバスが上がる王滝口は歩行距離も短く、日帰りも可能なので最も登山者が多い。田ノ原から荒々しい地獄谷爆烈火口を眺めながら3時間強で剣ヶ峰に立てる。  御岳山で最も古く、信仰登山のメインルートである黒沢口も6合目までバスが入る。また御岳ロープウェイ・スキー場からロープウェイを利用すれば7合目まで上がることもできる。6合目から4時間30分で剣ヶ峰。  信州側第3のコースである開田(かいだ)口は、標高差も大きく、行程も長いので、開田高原散策と合わせて下山に利用した方がよかろう。西野から登るとなると距離も標高差も大きく、6時間30分で剣ガ峰。  飛騨側唯一の登山道で、標高1900mに湧く濁河(にごりご)温泉がベースとなる飛騨口は、原生林の中の静かな山旅を楽しめる。濁河温泉から5時間30分で剣ガ峰へ。  山頂からの展望は広大で、3つのアルプスや中部、関東一円の山々を見渡すことができる。また遠く加賀の白山も望まれ、日が落ちると名古屋の街の灯が美しい。  2014年(平成26年)9月27日にも噴火し、大きな被害を出したのは記憶に新しい。噴火直後に気象庁は入山を規制する「噴火警戒レベル3」を発表した。2022年7月28日現在、「噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)」だが、引き続き火口から概ね500m程度の範囲で立ち入りが禁止されている。

プロフィール

宗像 充(むなかた・みつる)

むなかた・みつる/ライター。1975年生まれ。高校、大学と山岳部で、沢登りから冬季クライミングまで国内各地の山を登る。登山雑誌で南アルプスを通るリニア中央新幹線の取材で訪問したのがきっかけで、縁あって長野県大鹿村に移住。田んぼをしながら執筆活動を続ける。近著に『ニホンカワウソは生きている』『絶滅してない! ぼくがまぼろしの動物を探す理由』(いずれも旬報社)、『共同親権』(社会評論社)などがある。

Special Contents

特別インタビューやルポタージュなど、山と溪谷社からの特別コンテンツです。

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