色鮮やかな錦の台地。秋の焼石岳を日帰りピストン【紅葉レポート】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

読者レポーターより紅葉登山レポをお届けします。こうさんは岩手と秋田県境の焼石岳(やけいしだけ)へ。

文・写真=こう


秋の焼石岳を初めて目にしたのは、須川(すかわ)温泉から栗駒山(くりこまやま)に登ったときだった。北側に目を向けると、真っ赤に染まるどっしりとした山塊があり、気になって調べると焼石連峰だった。

3年前に登ったときは、10月の1週目で紅葉がちょうど見頃だったが、今年の紅葉は遅いので10月中旬でも間に合うと思い、焼石岳へと向かった。

今回は、焼石岳でもっとも人気のある中沼登山口から登った。序盤はやや傾斜のきつい登りが続くが、40分ほど登ったところで中沼(なかぬま)に着く。ベンチがあり、腰を下ろして休憩することができる。空を見上げると雲の流れが速く、風が強そうだったが、中沼は木に囲まれているおかげか風が優しく、鏡のような水面には焼石連峰が映し出されていた。

焼石岳 登り始めは森の中を歩く
登り始めは森の中を歩く
中沼に映り込む焼石連峰
中沼に映り込む焼石連峰

中沼から銀明水(ぎんめいすい)避難小屋までは緩やかな登山道で、道のすぐ脇に小川が流れている。水の流れる音が心地よく、足どりが軽くなった。

途中、泥を避けられない道や木道がぐらつく箇所があるので、滑ったり転んだりしないように注意しながら歩いた。

銀明水に着くとベンチがあるので、急ぐ気持ちを落ち着かせ、足を休ませた。すぐ近くの銀明水避難小屋にはトイレもあり、とてもありがたい存在だ。

焼石岳 銀明水避難小屋手前から横岳を仰ぎ見る
銀明水避難小屋手前から横岳を仰ぎ見る
焼石岳 銀明水避難小屋
銀明水避難小屋

銀明水避難小屋から少し進むと視界が開けてくる。泥まみれの階段を登り、木道を進むと、右手には小さな滝を見ることができる。標高を上げるにつれて、紅葉の色づきがよくなっていくので、写真を撮る回数が増え、進むのが遅くなった。

焼石岳 振り返った時に見える紅葉
振り返った時に見えた紅葉
焼石岳 紅葉に囲まれた道
紅葉に囲まれた道を進んでいく

紅葉した木々に挟まれた道をしばらく進むと、草原が現われ、その先に焼石岳の山頂が見えた。草原を囲むように、焼石岳、東焼石岳、横岳(よこだけ)が立ち並んでおり、ほかではあまり目にしたことのない景色に心が躍った。また、紅葉は燃えるような赤が印象的だが、オレンジ、黄色、緑が混ざっており、錦の絨毯のような風景は圧巻だった。

錦の絨毯の奥には焼石岳
錦の絨毯の奥には焼石岳
焼石連峰 紅葉する横岳
紅葉する横岳
焼石連峰 東焼石岳の斜面と草もみじ
東焼石岳の斜面と草もみじ

姥石平(うばいしだいら)に着くと、ハクサンイチゲがちらほらと咲いていた。紅葉だけではなく花の名所でもある焼石岳には、秋でも初夏の花が咲くようだが、紅葉とハクサンイチゲを一緒に見られる場所はほかにはあまりないだろう。

姥石平から焼石岳の方向に少し進むと、泉水(せんすい)沼があり、そこのベンチで休憩しながら早めの昼食をとった。同じく紅葉の名所である栗駒山と比べると、こちらは圧倒的に登山者の数が少ないので、歩いているときはもちろんだが、休むときものんびりと過ごすことができる。絶景を眺めながら腹も満たすことができて、この上なく幸せな気持ちになった。

姥石平から見た焼石岳
姥石平から見た焼石岳
焼石岳 季節はずれのハクサンイチゲ
季節はずれのハクサンイチゲ
泉水沼のベンチから見た焼石岳
泉水沼のベンチから見た焼石岳

焼石岳の西側からどんどん雲が湧いてきて、その勢いは増しているように思えたので、慌てて山頂へと向かった。途中までは景色も見えていたが、山頂に着くころには周りは真っ白になってしまった。山頂から見下ろす泉水沼方面の錦の絨毯や、山頂から西焼石岳へと延びる稜線も好きな景色であるため、見ることができずとても残念だった。

焼石岳山頂手前より、西側の紅葉
焼石岳山頂手前より、西側の紅葉
山頂から見た西焼石岳(※2021年10月撮影)
山頂から見た西焼石岳(※2021年10月撮影)

気を取り直して、先へ進むことにした。山頂への上りは泉水沼方面から登ったが、下りは南本内岳(みなみほんないだけ)方面へと向かうことにした。こちらは途中に大きな岩を越える箇所があり、歩いていて楽しいルートだ。一瞬ガスが抜けたので、山頂を振り返ると西側斜面が赤く染まっていた。

分岐にたどり着くと、南本内岳には向かわずに、東焼石岳をめざした。木々に囲まれた区間を抜けていくと、草もみじが広がり、東焼石岳山頂まで見晴らしのいい道が続く。山頂で晴れを待とうとするも、風が強くさえぎるものもないため、山頂標識に挨拶だけして、姥石平へと下ることにした。

焼石岳山頂から南本内岳方面へと下る道
山頂から南本内岳方面へと下る道

下山を開始すると、一瞬ガスが抜けて、再び焼石岳を見ることができたが、またガスの中に隠れてしまった。一喜一憂しながら進んでいると、あっという間に姥石平に着いてしまった。名残惜しさに少し休んでいたが、風が冷たく長居はできなかったため、銀明水避難小屋まで戻って休憩した。しばらく休んでから下山を開始すると、人も少なく、スムーズに下ることができた。中沼に差し掛かるころにはすっかり天気も回復しており、山にかかる雲は朝よりも少なくなっていたが、揺らぐ水面に焼石連峰の姿は見えなかった。

東焼石岳から登ってきた方向を見下ろす
東焼石岳から登ってきた方向を見下ろす
ガスの中から現われた焼石岳
ガスの中から現われた焼石岳
焼石岳 中沼と青空が美しかった
中沼と青空が美しかった

(山行日程=2024年10月13日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 6時間50分
行程:中沼登山口・・・中沼・・・分岐・・・銀明水避難小屋・・・姥石平分岐・・・焼石岳・・・九合目・・・姥石平分岐・・・銀明水避難小屋・・・分岐・・・中沼・・・中沼登山口
総歩行距離:約14,500m
累積標高差:上り 約987m 下り 約987m
コース定数:27
アドバイス:中沼登山口の駐車場は40台程度でそこまで広くないため、早めに行く必要がある。駐車場までの尿前(しとまえ)林道は未舗装の悪路で路面は凸凹している。道幅は狭く、すれ違いは困難であるため、注意して走行すること。
こう(読者レポーター)

こう(読者レポーター)

山形県在住。東北の山のほか関東甲信越、日本アルプスを月に6~8回のペースで登り、風景写真を撮っている。

この記事に登場する山

岩手県 / 奥羽山脈中部

焼石岳 標高 1,547m

 奥州市の西に位置し、山名は薬師岳から転化したという説と、主峰を西側から見たときの、黒い岩の積み重なった様子からともいわれる。  花の山で、登山道の標高1300mから上部に姥石平を中心として広い高原状の地域がある。ここは遅くまで雪が残り、一部は湿地になっている。風も強いので樹木の侵入が少なく灌木の混じった草原だ。  春の雪解けとともに可憐なヒナザクラをはじめエゾウサギギクなど色とりどりの花が咲く。北海道と南・北アルプスに分布するキバナシャクナゲは、岩木山に続きこの山でも発見された。クロユリも同じような分布をしていてこの山でも見つかった。本州ではこの山にしかない北方系の植物も分布するなど、植物地理学的にも重要な山である。  姥石平の先に円頂丘状の頂上があり、一等三角点が設置されていて、この山域の天竺山、経塚山、横岳、獅子ヶ岳などの火山群が眺められる。さらに姥石平とは違ってイワテハタザオ、タカネナデシコなどの乾性の高山植物が多い。  登山口近くへ行くバスはないので、水沢駅からタクシーを利用する。中沼コース、ツブ沼コースとも登山口から頂上まで3時間ほどである。途中の銀明水には避難小屋がある。  2011年10月31日、東日本大震災による地殻変動で、これまでの標高から1m低くなったことが国土地理院から発表され、現在は1547mの山となっている。

プロフィール

山と溪谷オンライン読者レポーター

全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。

山と溪谷オンライン読者レポート

山と溪谷オンライン読者による、全国各地の登山レポートや、登山道具レビュー。

編集部おすすめ記事