初心者が楽しめる山の選び方の目安。山岳ガイドに教わる“登山 はじめの一歩”(2)

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山の選び方を知りたい

質問: 丹沢、大菩薩、奥多摩。首都圏近郊にも初心者が楽しめる山々が沢山あることがわかりました。では、その中からはじめに登る山の選び方を教えてください。体力にはあまり自信がありません。


最初は、全力を出し切るような登山をするのではなく、余裕をもった山行計画を立てることが大切です。初心者同士、または初心者だけのグループで登山をすると仮定して(初心者の登山は、複数人で行くことを勧めます)、はじめに登る山の選び方を解説します。体力に自信がない方でも、何回か山を登るうちに、必ず自分なりの力はついてくると思います。

 

コースタイムの合計が4時間前後の山

登山地図やガイドブックのコースタイム(歩行時間)の合計が、4時間前後の山を選ぶと良いでしょう。コースタイムとは、実際の歩行にかかるおおよその時間です(コースタイムの出し方は各媒体による)。写真を撮りながら登れば、当然、コースタイムより時間がかかるでしょう。昼食や、ちょっとした休憩も、コースタイムにプラスされていきます。ということは、「コースタイムが4時間だから、午前10時に出発すれば、2時頃には下山している」とは、ならないことには注意が必要です。

5月は、多くの低山で新緑が美しい季節

 

道に迷うこともありますし、自分や仲間の体調が悪くなることも考えられます。予定していなかったことが起こるのが登山です。“早く出発して、早く降りてくる”計画をはじめから習慣づけると良いでしょう。一般的には、朝は早い時間帯の方が展望の良いことが多いと言われています。早起きして山へ行けば、眼下に広がる美しい景色が見られる可能性が高まります。

 

登山口から山頂までの標高の差が600m前後の山

標高差の大きすぎない山とは、具体的には、登山口から山頂までの標高の差が600m前後の山を指します。“標高差=山の厳しさ”という訳ではありませんが、僕の経験では、一日で1000m以上を登り降りする山は、初心者、特に体力に自信がない方には厳しいでしょう。

 

“有名”で“人気”の山!?

“有名”で“人気”のある山からはじめると良いでしょう。有名で人気のある山は、登山者が多く来るので、登山道が整備され、分岐には道標があることが多いので、道迷いのリスクが低いです。登山者が多ければ、ちょっとしたトラブルでも相談できて安心です。静かな山での山行をしたいのであれば、経験を積み、「人だらけの山は卒業したぜ!」と自分の好みの山に向かってください。

分岐に立てられた道標。目的地までの距離を表示したものもある

 

健康であって、体力に自信がある方であれば、歩行4時間前後、標高差600m前後では物足りないと考える方も多いと思います。しかし「この程度なら、疲れずに登れる」と体感したうえで、ステップアップしてください。最初は余裕のある登山をお勧めします。

 

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初心者の方にお勧めの絞り込み項目は、「体力度」です。“★”を選ぶだけで「歩行時間が4時間前後までで、登高差もあまりないコース」の絞り込みができます。

山域は“関東”、登山最適期を“5月上旬”、体力度“★”で検索してみたところ、208件のコースがヒットしました! ぜひ、自分の行きたい山選びにご活用ください。 ※コースの詳細を閲覧する場合は、会員登録が必要です。

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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