2025年はどこに登る？大人気の名山から静寂の隠れ名山まで、日本百名山・二百名山・三百名山のなかから25座を厳選【山と溪谷2025年1月号】

中央・南アルプス

百名山
鳳凰山（ほうおうざん）

天を突くオベリスクと白砂輝く山肌の三山
鳳凰山は、現在は薬師岳（やくしだけ）・観音岳（かんのんだけ）・地蔵岳（じぞうだけ）の鳳凰三山として知られている。

鳳凰山には登山前に歴史や伝説を調べる楽しみもある。一山説・二山説・三山説や、「鳳凰」という名の由来、孝謙天皇が山麓の奈良田（ならだ）に移り住んだ伝説や地名の由来を調べる、といったものである。

赤抜沢ノ頭（あかぬけざわのあたま）は地蔵岳の山容を最もよく理解できる場所だ。直下には賽（さい）の河原があり、子授け地蔵が置かれている。子宝を願う夫婦が地蔵尊を一体持ち帰り、無事に出産するとお礼に二体の地蔵尊を返す風習がある。

鳳凰山は、白峰三山（しらねさんざん）や富士山、八ヶ岳の眺望がすばらしく、多くの登山者に親しまれている。最も標高が高い観音岳からは三六〇度の大パノラマが広がり、薬師岳山頂は花崗岩の白砂と奇岩に囲まれ、三山それぞれが個性にあふれている。

夜叉神（やしゃじん）峠から入山し、地蔵岳を往復するコースが人気だが、御座石（ございし）温泉から登るコースや、南精進ヶ滝（みなみしょうじがたき）など名瀑のあるドンドコ沢コースもある。おすすめの季節はタカネビランジやホウオウシャジンが咲く夏と、ダケカンバの黄葉に山肌が覆われる秋だ。なお、鳳凰小屋が改築され、昨秋から営業を再開している。

（写真・文＝伊藤哲哉）

二百名山
南駒ヶ岳（みなみこまがたけ）

空木岳南隣の双耳峰
南駒ヶ岳は中アの名峰・空木岳（うつぎだけ）の南方にそびえる。山頂は二峰で北峰が高点。頂稜部では花崗岩が風化した丸い岩とハイマツの緑が特徴的な風景を醸し、中ア北部の名峰群や南アルプス、御嶽山（おんたけさん）などの展望に恵まれる。越百山（こすもやま）、仙涯嶺（せんがいれい）を含む三山周回ルートがおすすめ。

（写真・文＝津野祐次）

三百名山
黒法師岳（くろほうしがたけ）

シロヤシオとカエデをまとう深南部の秀山
黒法師岳は、文字どおり山頂部が真っ黒で、どの方角から見てもきれいな円錐をなしている。江戸時代から灯台代わりに航海の目印になっていたと聞く。

山頂は針葉樹に覆われ展望はないが、山腹にシロヤシオが群生し、また稜線部は笹原とカエデ類に覆われ、新緑と黄葉の時期はこの世の天国となる。山頂直下のガレ場からは、深南部のみならず南アルプスの山々を遠望できる。さらに南に連なる本邦最南端の２０００ｍ峰・バラ谷の頭から見る黒法師岳、丸盆岳（まるぼんだけ）、不動岳（ふどうだけ）の山並みは深南部随一の展望であろう。

アクセスは飯田線水窪駅から戸中山（とちゅうやま）林道ゲートまで車で入り、等高（とうこう）尾根からの往復が一般的。幕営での野鳥の森からバラ谷の頭～丸盆岳往復、または付近に連なる三座の“黒法師”縦走がおすすめ。

（写真・文＝岸田 明）