雪の奥多摩を歩く。川苔山、大岳山、三頭山へ、ちょっとハードな近郊スノーハイキング

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東京から行きやすい奥多摩は、登山者でにぎわう山域だ。しかし多少の積雪を見る冬場には、登山者少なく、静かな雪道と冬ならではの好展望を楽しめる。そんな奥多摩の三つの山を紹介しよう。

文・写真=打田鍈一

目次

雪の奥多摩を歩くヒント

ここで紹介するコースはいずれも登山道、道標は整備されているが、積雪で道が不明瞭な箇所もある。道が不明でも他に登山者は居ないと思ったほうがよく、読図力は必要だ。雪対策としてロングスパッツは必携。厚い落葉に雪が積もった部分が多く、本格的なアイゼンだとツメに刺さった落葉を核に雪がダンゴになり滑落の原因になることも。雪の低山ならではの危険で、ツメが広く浅いチェーンスパイクのほうが具合がよい。靴は雪山用のハイカットではなく、ゴアテックスブーティ搭載のトレッキングシューズ。日影と日向で雪の状況が大きく違う奥多摩では、このほうが歩きやすい。コースタイムは後期高齢者の実踏タイムだ。川苔山は2022年2月18日、大岳山は同2月25日。三頭山は2023年1月18日。三頭山はこの三山で標高は最高だが雪は最少。奥多摩での雪を楽しむなら2月下旬のほうが適しているようだ。

大展望の奥多摩の名山へ 川苔山(かわのりやま)

1363m

飯能市・柏木山から望む川苔山

川苔山に登山コースはいくつかあるが、ここでは鳩ノ巣駅を基点に周回するコースとした。花折戸(はなおりど)尾根の登山口に道標はなく、石垣上の神社への鉄階段があるだけだ。神社の脇から踏み跡で尾根に出るが、道はあまり明瞭ではない。それでも古い道標が時折現われ、南に大岳山(おおだけさん)方面が開けるとゴンザス尾根を合わせる。取材時は筑摩山(ちくまやま)でチェーンスパイクを付けた。本仁田山(ほにたやま)が近づくと富士山が姿を見せ、その手前には三頭山と笹尾根が。

花折戸尾根登山口。道標はない
本仁田山からは三頭山越しに富士山がみごとだ

本仁田山からは、明るい冬木立越しにめざす川苔山を眺める雪の尾根道で、本日のハイライト。積雪は膝丈だがトレースはしっかりしているので、歩きやすい。大ダワから続く鋸尾根は4つのピークを越えるが展望はない。ベンチのある舟井戸から、雪と雑木林の気分のよい道で川苔山頂上に躍り出る。西に開けた山頂からは、雲取山(くもとりやま)を中心に、左に七ツ石山(ななついしやま)、鷹ノ巣山(たかのすやま)、右に芋ノ木(いものき)ドッケ、天祖山(てんそさん)などの展望が大きい。山々のコントラストは雪のおかげで明瞭だ。

瘤高山へはめざす川苔山を樹間に眺める快適な尾根道だ
空が開けると川苔山頂上は近い
川苔山頂上は一面の雪野原
川苔山頂上は西に大展望。右に雲取山、その尾根の奥に飛龍山。七ツ石山、鷹ノ巣山と左へ続く

帰りは来た道を舟井戸(ふないど)まで戻り、左の鳩ノ巣駅への道標に従う。単調な植林の山腹道に飽きる頃、車道に出れば大根ノ山ノ神(おおねのやまのかみ)はすぐ先だ。熊野神社を過ぎるともう市街地で、鳩ノ巣駅に帰り着く。

大根ノ山ノ神に下り着いてホッと一息

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 10時間14分
※積雪期のため、コースタイムは著者の実踏タイムを記載(ヤマタイム記載の標準タイムのおよそ1.7倍相当)
行程:鳩ノ巣駅・・・本仁田山・・・コブタカ山・・・大ダワ・・・舟井戸・・・東の肩・・・川苔山・・・東の肩・・・舟井戸・・・分岐・・・大根ノ山ノ神・・・鳩ノ巣駅
総歩行距離:約13,000m
累積標高差:上り 約1,536m 下り 約1,536m
コース定数:31
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この記事に登場する山

東京都 / 関東山地

川苔山 標高 1,363m

 国土地理院の図中には川乗山と表示されているが、川苔山が正しい。  日原行きのバスを川乗橋で下車し、川苔川に沿って歩き、細倉橋から登山道に入る。川苔川を左右に渡り返して百尋ノ滝への分岐に出たら右に火打石谷に沿った登山道をたどる。百尋ノ滝は約40mほどの滝である。  川苔山へは登山道が火打石谷を渡る地点で二分する。左は火打石谷の源流に沿って曲ガ谷北峰との鞍部に達した後、また、右はウスバ尾根を登ってから頂上に登っていける。  山頂からは雲取山、天祖山、蕎麦粒山がよく見える。山頂から下った東の肩から舟井戸を経て大ダワ、大根ノ山ノ神を経て鳩ノ巣駅に下る。または曲ガ谷北峰へ登り、赤杭(あかぐな)尾根を下るコースもある。  奥多摩駅から川乗橋、百尋ノ滝から川苔山に達し、赤杭尾根から古里(こり)駅まで約6時間。

東京都 / 関東山地

大岳山 標高 1,266m

 片肩上がりの山体はどこからでも識別できる。『武蔵通志(山岳篇)』は「両総地方にて武蔵の鍋冠(なべかぶり)山と称し海路の標となす」と記され、江戸期には江戸湾に出入する船の目標でもあったようだ。いわゆる天文山の1つである。山名も古い文献を見ると大岳となっている。  大岳山へは御岳(みたけ)から登山道をたどるのが一番楽だ。山頂の下に大岳神社があり、広場からは馬頭刈(まずかり)尾根や浅間尾根のかなたに富士山も見える。  大岳神社の里宮は、南秋川の白倉にある。山頂への表参道は白倉からのもので、御岳からの道は単なる登山道だ。この表参道は立派に整備され、馬頭刈尾根に達し大岳山へ登っていく。途中鋸山の分岐に道祖神が1基祭られ、右へ進むと、奥社の横手から岩っぽい登山道となり山頂に立つ。下山路は御岳へ出るのが一番楽だが、馬頭刈尾根を軍道(ぐんどう)へ下るのが面白い。鋸山へは体力が物を言う下りである。  コースタイムは武蔵五日市で下車し、白倉から大岳山に至り、高明山を経て軍道に下りる。武蔵五日市駅まで約6時間。

東京都 / 関東山地

三頭山 標高 1,531m

 三頭山は自然豊かな美しい山。山頂付近は3つのピークからなる。主要登山口は「都民の森」として、登山者のみならず観光客も多く訪れる。  日帰りも可能であるが、できたら山麓の数馬に1泊してみたい。都民の森から登るコースのほか、笹尾根の西原峠から尾根通しに三頭山に登り、西にある鶴峠に下るコースもお勧め。そこには美しいブナ林が残っている。

プロフィール

打田鍈一(うちだ・えいいち)

1946年鎌倉市生まれ東京・中野育ち。埼玉県飯能市在住。低山専門山歩きライター。群馬県西上州で道なき薮岩山に開眼。越後の山へも足を延ばし、マイナーな低山の魅力を雑誌や書籍などで紹介している。『山と高原地図 西上州』(昭文社)を平成の30年間執筆。著書に『薮岩魂―ハイグレード・ハイキングの世界―』『続・薮岩魂 いつまでもハイグレード・ハイキング』『分県登山ガイド10 埼玉県の山』(いずれも山と溪谷社)、『晴れたら山へ』(実業之日本社)、『関越道の山88』(白山書房)のほか、『関東百名山』(山と溪谷社)など共著多数。
(プロフィール写真=曽根田 卓)

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