強烈な個性が勢ぞろい！ 厳選ご当地アルプスガイド【山と溪谷2025年2月号】

西日本湖南アルプス（こなんあるぷす）

滋賀県／太神山（600m）

山岳仏教の色彩を残す花崗岩質の露岩の山塊

大正11年、京都山岳会が会報で「湖南アルプス」して発表したのがはじまり。標高600m弱の低山群だが、露岩がアルペン的な雰囲気をもつ。主要なピークは最高峰の太神山（たなかみやま）、双耳峰の矢筈ヶ岳（やはずがたけ）、八畳岩（はちじょういわ）が山頂に鎮座する笹間ヶ岳（ささまがたけ）、そして険しい露岩をついて登る堂山（どうやま）の4座だ。一帯は古来、風化花崗岩の砂礫が大雨で流される土砂災害が多く、江戸・明治以降、砂防対策を重ねてきた。中でも鎧（よろい）堰堤は、新旧の砂防堤が重なる珍しい存在だ。今では緑も戻り、点在する花崗岩帯を縫うように流れる渓流と相まって、とくに若女谷（わかめだに）や富川道（とみかわどう）などは日本庭園のような美しさだ。

太神山の山頂部にある不動寺（ふどうじ）は、平安時代に天台宗の高僧・円珍（えんちん）が創建した古刹で、巨岩の上に立つ本堂は、京都の清水寺（きよみずでら）のミニチュア版を思わせる懸かけ造りだ。登山適期は晩秋から冬、春にかけて。標高が低いので夏場はつらい。秋はマツタケ山のため、不動寺への参道以外は立ち入り禁止となる。新名神高速道路の建設で通行止めのルートもあり、計画時には注意したい。

（文・写真＝岡田敏昭）

MAP＆DATA

高低図

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最適日数：日帰り

コースタイム： 5時間

行程：アルプス登山口・・・富川道分岐・・・迎不動・・・太神山登山口・・・矢筈ヶ岳分岐・・・太神山・・・矢筈ヶ岳分岐・・・出合峠・・・矢筈ヶ岳・・・出合峠・・・御仏河原・・・富川道分岐・・・アルプス登山口

総歩行距離：約12,000m

累積標高差：上り 約876m　下り 約876m

コース定数：22

アクセス：往復 JR琵琶湖線石山駅（バス23分、450円）アルプス登山口バス停
［マイカー情報］名神高速道路・瀬田西ICから県道29号、県道109号で約8km、田上公園駐車場へ。約10台、無料の駐車場あり。

アドバイス：道中、とくに危険な箇所はないが、バリエーションルートの枝道が多いので、現在地をこまめに確認しよう。堂山はスリリングな露岩地帯で、転・滑落に注意。新名神の工事が完了したら、笹間ヶ岳にも足を延ばしたい。

（『山と溪谷』2025年2月号より転載）