冬の人気ハイキングコースの南房総・鋸山で東京湾のパノラマを一望!

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読者レポーターより登山レポをお届けします。上町嵩広さんは千葉県の人気低山・鋸山(のこぎりやま)へ。お寺訪問に下山メシ、フェリー乗船など、山旅を満喫。

文・写真=上町嵩広


東京近郊で冬の低山登山に人気の鋸山に行ってきました。JR内房線・浜金谷(はまかなや)駅を起点・終点にして車力道(しゃりきみち)を登り鋸山頂上へ。そして日本寺(にほんじ)を周遊してから観月台(かんげつだい)コースで下山します。冬晴れのおかげで東京湾の大展望を堪能できる、気持ちのよいハイキングでした。

浜金谷駅からスタートです。道標に従って登山口へ向かいます。駅の近くからは鋸山の長く横たわるような稜線が見えました。その山名の由来のとおり、鋸のようにギザギザしている様子が一目瞭然です。

鋸山 左が車力道 右が観月台コース
左が車力道 右が観月台コース

今回は車力道から登り始めます。登山道に入り上がっていくと、徐々に東京湾の眺めが見え始め、次第に大きく開けていきます。観月台コースや日本寺への分岐点までやってくると「房州石(ぼうしゅういし)」の採石場の跡地が現われ始めますが、まず先に鋸山の山頂をめざします。

鋸山 房州石の岩壁を削り出した階段道
房州石の岩壁を削り出した階段道

山頂方面へ進むと、やがて石の階段道の急登に出くわしました。房州石の岩壁を削り出して作ったのでしょうか。石段にはノミの跡のようなものが見えますが、手掘りだったとしたら気の遠くなるような作業だったことでしょう。溜息が出ます。

鋸山 “東京湾を望む展望台”からの一望
“東京湾を望む展望台”からの一望
鋸山稜線から東京湾・横浜方面を望む
鋸山稜線から東京湾・横浜方面を望む

階段を上がりきると右手に“東京湾を望む展望台”があります。西側の東京湾を一望できる展望スポットです。北から南へ両腕をいっぱいに広げても東京湾が余りあるほどのパノラマは圧巻。この日いちばんの展望でした。東京湾から太平洋に続く水平線が丸く見える、ような気もします。

鋸山頂上からの眺望
鋸山頂上からの眺望

一息ついたら鋸山の山頂へ向かいます。東へ延びた稜線を30分ほど歩けば鋸山に到着です。山頂は北側に千葉県内陸部の方の眺望が開けていました。来た道を分岐点まで戻り、観月台コース・日本寺方面へ進みます。

鋸山の石切場
鋸山の石切場 鋭角に切り取られた岩壁
鋸山の石切場
鋸山の石切場 高く聳える岩壁

すぐに石切り場の跡地がいくつも続きます。一部からはアニメ映画「天空の城ラピュタ」に登場する滅びた古代文明ラピュタの遺跡のようだという声もあるようです。大規模なスケールで垂直や水平に切り取られた岩壁とその周囲に樹木が生い茂り荒れ果てた様子は、確かに失われた文明の廃墟に迷い込んだような雰囲気があります。神秘的であり、また荘厳にも感じます。

鋸山は房州石の産地として有名で、江戸時代から明治・大正時代にかけて盛んに採石されてきました。砂っぽい凝灰岩の一種のようで加工しやすさから近場の江戸・東京で重宝されました。やや青みや緑がかったような色味の白い石材で、東京都内でも房州石を用いた石塀や石蔵などが多く現存しています。風化してボロボロと表面が剥離しているものをたまに街角で見かけます。鋸山の現在のギザギザの稜線は天然の姿ではなく、人が岩を切り出したため露出した結果のようです。恐るべし人間の業。鋸山の山名も本来は「乾坤山」(けんこんざん)だそうです。

観月台コースに合流してさらに斜面を上がっていけば、日本寺への入口です。拝観料をお支払いして境内に入ると百尺観音や大仏など巨大な摩崖仏を拝むことができます。入ってすぐに目にすることができる百尺観音はバーミヤン渓谷の巨大石仏を思わせます(バーミヤンの実物は見たことありませんが)。

鋸山 “地獄のぞき”
鋸山“地獄のぞき”

境内を進み観光ガイドなどでよく紹介される有名な“地獄のぞき”に立ち寄りました。崖上から空中に突き出た岩の先端から、東京湾の絶景を眺めることができます。高所恐怖症の私はビビリで先端まで行くのは無理だったので、手前の方で雰囲気だけ味わってさっさと退散しました。

黄金アジのアジフライ
黄金アジのアジフライ

下山は観月台コースを利用しました。ところどころにある東京湾の眺望スポットで景色を楽しみながら、ゆっくりと下りていきます。浜金谷駅の近くの金谷港まで移動。今回の最大のお楽しみとしていた金谷港の名物“アジフライ”でおなかも満足させました。肉厚の身のボリュームは期待以上です。

金谷港から東京湾を望む
金谷港から東京湾を望む
東京湾フェリーから鋸山を振り返る
東京湾フェリーから鋸山を振り返る

帰路は船旅です。金谷港から神奈川県の久里浜港まで東京湾を横断する東京湾フェリーに乗船して波に揺られます。普段は船に乗ることは滅多にないので、短い乗船時間でも非日常感が増してより旅情を感じます。ソフトクリームをいただきながら、遠ざかる房総半島と鋸山にお別れです。

鋸山は冬でも雪の心配があまりなく気軽に訪れることができ、ついでに海の恵みを味わうことができて、さらに船旅で旅情を満喫できる、観光ハイキングに絶好な山だなとあらためて感じました。

(山行日程=2025年1月17日)

MAP&DATA

高低図
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最適日数:日帰り
コースタイム: 4時間2分
行程:浜金谷駅・・・観月台コース登山口・・・分岐・・・東京湾を望む展望台・・・分岐・・・地獄のぞき・・・観月台・・・観月台コース登山口・・・浜金谷駅
総歩行距離:約5,400m
累積標高差:上り 約672m 下り 約672m
コース定数:16
アドバイス:2025年1月14日から2月14日まで鋸山ロープウェイは点検のため運行休止。

関連リンク

上町嵩広(読者レポーター)

上町嵩広(読者レポーター)

登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。好きな山は八ヶ岳の編笠山。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」。

この記事に登場する山

千葉県 / 房総・三浦

鋸山 標高 329m

 東京湾上から見たこの山は岩山で、山稜が鋸歯状に見えるので山名となったらしい。山中には行基開創といわれる日本寺がある。山麓から山頂まで遊覧道路が造られ、また金谷から山頂まではロープウェイもある。  登山道は裏手の金谷からのコースが1本あるだけで、灌木帯から石切場跡につけられた道を登ってゆき、百尺観音の前に出る。もうそこは観光客が多く、瑠璃光展望台に登ると足下に東京湾が広がっている。海上を挟んで箱根、丹沢、奥多摩の連山の上に富士山を眺めることができる。南方には富山(とみさん)と房総半島が広がっている。  下山は五百羅漢を見て、磨崖の大仏の前に出る。そこから日本寺境内を通って金谷に戻り、東京湾フェリーで浦賀へ帰るのも一興。  浜金谷駅から観月台―百尺観音―五百羅漢―日本寺を経由し、金谷まで約2時間40分。

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