雪の北八ヶ岳を歩く。北横岳登頂と坪庭周遊
読者レポーターより登山レポをお届けします。下島朗さんは八ヶ岳の北横岳(きたよこだけ、2480m)へ。雪山初心者向けといわれるコースです。
文・写真=下島 朗
冬でも晴天率が高いといわれる八ヶ岳。なかでも北八ヶ岳は、なだらかな山が多いため、天候がよければ厳冬期でも足を踏み入れやすいエリアとされています。
雪山に関しては万年初心者を自認する私ですが、冬山装備と晴れ予報を確認して北横岳へと出かけました。
北八ヶ岳ロープウェイで標高2237mの坪庭へ
未明に自宅を出発して中央自動車道を西へ。甲府盆地に差しかかると正面にドーンと南アルプスが見えます。白根三山が朝日を受けてオレンジ色に輝いていました。一気に気持ちが上がります。
ところが、その先で見たのは雲に包まれた八ヶ岳。右側の金峰山(きんぷさん)も、左側の鳳凰三山(ほうおうさんざん)も、後方の富士山も、すべて快晴。しかし、なぜか八ヶ岳だけ雲の中です。一気に気持ちが下がります。
北八ヶ岳ロープウェイの山麓駅に着いたのが8時半ごろ。ロープウェイの始発は9時です。少しずつ雲が高くなっているように思うのですが、北横岳はまだ見えません。今、登っても山頂部はガスの中でしょう。
行くか止めるか、別の山に変更するか、迷いながら待つこと30分。うっすらと北横岳の山頂部が見えてきました。まだ迷いはありましたが、準備を整えてロープウェイ乗り場へ。
予定より遅れましたが、9時40分発の便に乗ることができました。ほぼ満員で、登山の人が4割、スキー、スノーボードの人が6割くらいでした。
標高2237mまで来ました。一面の雪景色です。空にはグレーの雲が広がっていましたが、ガスはありませんでした。東側には青空も見えます。ザックを降ろして、久しぶりにサングラスとアイゼンを装着しました。
歩き始めて、まず思ったのは「冬靴とアイゼンって、こんなに重かったかな」ということ。昨シーズンは、足に痛みがあって冬期登山を休んだため1年9カ月ぶりの12本爪です。
坪庭へと続く歩道は、雪が踏み固められてフラット。なのに、いきなり前爪を引っかけるという情けなさ。歩き方を思い出しながら、ゆっくりスタートしました。
坪庭に上がって振り返ると南アルプスが見えます。しかし、いつの間にか雲が増えていました。これから向かう北横岳の上には、まだまだ雲が居座っています。
坪庭から北横岳を往復して雪山を楽しむ
15分ほどで北横岳への分岐に到着、ここを左に曲がります。坪庭の縁で少しだけ下り、そこから先は樹林帯を登っていきます。登山道は、しっかり踏み固められていて幅も充分。木々のおかげで風がないため快適に歩くことができました。
ロープウェイの山頂駅から約1時間で北横岳ヒュッテへ。ここまで来れば山頂は遠くありません。
ヒュッテを過ぎると最後の急登が待っています。チェーンスパイクで登っている人もいましたが、苦戦していました。下りは、もっと大変そうでした。
やがて周囲の木がなくなって、視界が開けてきました。北横岳ヒュッテから約15分、北横岳の南峰(2472m)に到着です。
北横岳の山頂部には2つのピークがあります。より標高が高いのは北峰(2480m)です。
気温は、あきらかに氷点下。でも、たぶん2桁ではない。風は弱めで、強いときでも体感で10mくらい。雪山にしては穏やかだったと思います。周囲の人も「今日は暖かい」と言っていました。
とはいえ、カメラ操作のために手袋を外すと、すぐに指先が痛くなります。ザックから小物を取り出すのも面倒で、のんびり休憩できる状況ではありませんでした。
北峰で15分ほど過ごして、再び南峰へ。すると、先ほどは雲に包まれていた南八ヶ岳がだいぶ見えるようになっていました。しかし、この日はここまで。赤岳や阿弥陀岳の山頂を見ることはかないませんでした。
南峰からの下り、まずは急斜面が待ち受けています。アイゼンの爪をしっかり雪に食い込ませて慎重に歩きました。
北横岳ヒュッテを過ぎると、しばらく道が平坦になります。そこでは、きれいな青空を見ることができました。
しばらく下ると、樹木への着雪が多い区間にさしかかります。ロープウェイの運行スタッフの話では、今年は雪が多めだとか。そのため、小さなスノーモンスターが大量発生していました。蔵王などの樹氷とは成り立ちが異なりますが、よく探すとゴジラのような姿も見つかります。
さらに下ると、南側が開けたところを通過します。眼下に広がるのは坪庭です。
坪庭から八丁平へ雪原トレッキング
北横岳を下りきって、再び坪庭の分岐へ。ここを左に進んで坪庭の周回コースを時計回りに歩きました。平らな雪面には、細かなシュカブラがたくさんできていました。
道は歩きやすいのですが、風に舞った雪で踏み跡が消えてルートがわかりにくい場所もありました。目印の竿が立っていますが、ガスに巻かれたら見失いそうです。
周回コースを行くと、やがて南側の登山道に出合います。そこに「坪庭南口」の標識があります。そこへ下りる道は、距離は短いものの坂というより崖でした。雪のない時期は岩が階段状になっているのでしょう。しかし今は、雪の急斜面です。
ここと北横岳南峰の手前が、今回の山行で最も急な雪道でした。この2カ所は、しっかりとしたアイゼンがないと上りも下りも苦労すると思います。
坪庭から下りてきて、坪庭南口を右に進むとロープウェイの山頂駅です。しかし、まだ少し時間があったので左へ。八丁平へと向かいました。
八丁平の少し先に雨池峠があります。本当は縞枯山にも登りたかったのですが、ここで時間切れ。ロープウェイの終了時間に間に合わなくなるので引き返すことにしました。
雨池峠からロープウェイ山頂駅まで30分弱。山頂駅手前の開けた場所で再び北横岳を見上げると、上空に黒い雲が広がっていました。
空模様に翻弄されつつも久しぶりの雪山に満足
15時30分のロープウェイで下山、乗客はまばらでした。逆に上りは、まだ満員でした。この時間に上がってくるのは、ほぼスキー、スノボの人。その中に少しだけ観光客がいる感じでした。
この日は飛び石連休の中日でしたが、北横岳ヒュッテも縞枯山荘も閉まっていました。下り最終のロープウェイに乗り遅れたら登山道を歩いて下るしかありません。
ロープウェイを降りて山麓駅の前で再び北横岳を見上げると、なんと青空です。山が微笑んでいるように見えました。
ちなみに、山麓駅の駅舎に向かって右手、駐車場のいちばん奥に登山道の入口があります。ここから山頂駅までコースタイムで上り2時間、下り1時間半です。積雪が多いときは、もっとかかるかもしれません。
今回は、3日連続の晴天予報を信じて、その2日目に来たのですが、予報ほどの好天ではありませんでした。しかも、目まぐるしく状況が変わりました。それでも、2月の雪山としてはいいコンディションだったと思います。
このレポートでは、青空が入った写真を多めに選んでいます。実際には、8割がた雲の下にいた気がします。八ヶ岳といえども、いつもいい表情を見せてくれるわけではないですね。次回も、準備を整えて心して出かけたいと思います。
(山行日程=2025年2月10日)
MAP&DATA

下島 朗(読者レポーター)
“絶景ハンター”と称して、写真を撮りながら山を歩く中高年登山者。好きが高じて自己サイト『絶景360』を開設し、撮り溜めた絶景写真を公開している。
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山と溪谷オンライン読者レポーター
全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。
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