角田山で日本海の絶景と春の花に癒される低山ハイク
読者レポーターより登山レポをお届けします。こうさんは新潟県の角田山(かくだやま、482m)へ。雪割草(オオミスミソウ)など春の花が人気の低山です。
文・写真=こう
1カ月前までは、どの山に行っても白一色の世界だったが、気温の上昇とともに彩りが戻ってきた。高い山はまだ雪に覆われており白く輝いているが、標高の低い山々は気温の上昇とともに地面が露出し、草花が芽吹き、春の訪れを告げる。
3月中旬を過ぎたあたりに、新潟市にある角田山に登り、春の陽気と日本海から吹き付ける潮風を浴びながら、スプリングエフェメラルを愛でるのが、ここ数年の私の恒例行事となった。
毎週のように週末に白銀の世界へと向かう生活も悪くなかったが、そろそろ春の暖かさと華やかさを感じたいと思い、例年同様に角田山へと向かった。
春の花には、太陽光を浴びないと開かないものが多いので、いつもの登山よりも遅めの時間にスタートすることにした。また、上りでは景色のいい灯台コースを使い、下山で花がたくさん咲く古墳コースを使う計画を立てた。
角田浜の駐車場をスタートすると、まずは灯台をめざす。灯台の下には手彫りのトンネルがあり、そこを進むと岩壁をえぐり抜いたような道となる。強風の影響もあり、激しく波が打ちつけていたため、奥には進まず引き返した。
トンネルを戻って出ると、左手に灯台に向かうための階段がある。一度砂浜に降りて、海抜0mから角田山へと向けて踏み出した。階段はつづら折りになっているが、なかなかの斜度である。灯台まで登り、やや広くなっているスペースに行き日本海の展望を楽しむ。普段は佐渡島を眺めることができるが、今日は春霞の影響で遠くの景色がはっきりしない。
灯台より先は、いよいよ登山道となる。序盤は視界が開けており展望がよい。下に目を向ければ、風によって勢いを増した白波が幾重にも重なり、勢いよく浜辺に向かっていた。次第に木々が増え、緑に囲まれた登山道になるが、赤いツバキの花が散りばめられており目を惹かれた。
緑のトンネルを抜けると急にヤセた尾根道となり、角田山で一番の展望を堪能しつつ尾根歩きを楽しめる。さえぎるものがないため、風が強いことが多いが、この日は特に風が強く、幾度となく体を揺さぶられた。急斜面に差し掛かると、岩場も現われるため、転倒には充分注意して進みたいところだ。
岩場が終わると、再び樹林帯へと入ることになり、風が和らいだ。登山道の脇に目を向ければ、ちらほらと雪割草が姿を現わす。
雪割草とは早春に咲く一部の花を指す通称であり、オオミスミソウやミスミソウ、スハマソウなど正式な名前は別にあるのだが、雪を割って咲くというのがなんとも健気であり、春を告げるのに適したネーミングであるため、個人的にはあえて雪割草と呼びたい。
そんな雪割草に元気をもらいながら、徐々に傾きがキツくなっていく尾根を登り進める。斜度に加えて、上に進むにつれて、足元がぬかるみを増してきた。階段を登り切るとようやく平らになるが、今度は泥と雪が混ざり足の置き場に戸惑う道となった。
山頂は木に囲まれており展望はないため、越後平野の展望がよい観音堂へと向かった。観音堂の前には芝生の広場があり、ベンチもあり休憩にうってつけだ。昼時だったため、景色を堪能しながら昼食をとることにした。
山頂に戻ると、北側に延びる尾根へと進む。斜度が急な道が続くが、ロープが整備されていたため安心して下ることができた。
急な下りが終わると緩やかな道になり、雪割草やセリバオウレン、キクザキイチゲなどの花々が現われた。尾根上にはたくさんの木々があったが、葉を纏っていない木々の隙間からは暖かい日差しが降り注いでいた。
途中の分岐で古墳コースに進むと、そこからは両脇に雪割草が咲く道がひたすらに続く。色とりどりで、形もさまざまなオオミスミソウがそこかしこに咲き乱れているため、観賞に足を止めつつ、ゆっくりと登山口をめざした。
最も花が咲いている場所には、植生保護のためのロープが張られており、登山道以外立ち入り禁止の看板もあるが、それを無視して踏み入る人もいるようだった。今後もこの花々を見続けられるように、訪れる全員がルールを守って楽しんでほしい。
終盤には、コース名の由来となっている古墳を見ることができる。発見されたのは数年前とまだ新しく、それ以前はコースの一部となっていたのか、丘とおぼしきその古墳の上には、道のような踏み跡も見られた。古墳を過ぎたところの急な下りを過ぎると、登山口に着く。墓地を通過して道路に出た後は、角田浜をめざして車道を歩く。浜に着くと相変わらず体を揺らすような強い風が吹き荒れていたが、その風に耐えながら花を咲かす健気な春の妖精たちに、元気を与えられた山行だった。
(山行日程=2025年3月22日)
MAP&DATA

こう(読者レポーター)
山形県在住。東北の山のほか関東甲信越、日本アルプスを月に6~8回のペースで登り、風景写真を撮っている。
この記事に登場する山
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