緑の絨毯と個性的な山容が魅力の伊予富士へ
読者レポーターより登山レポをお届けします。こうさんは石鎚(いしづち)連峰の一座、伊予富士(いよふじ、1756m)へ。
文・写真=こう
「伊予富士」と聞くと、その名から独立峰の姿を想像するかもしれない。しかし、この秀麗な山は、西日本最高峰・石鎚山(いしづちさん)の東に連なる石鎚連峰の一峰である。緑の絨毯を敷き詰めたような笹原の稜線を歩けば、さえぎるもののない大空の下、開放感にあふれた気持ちのいいトレッキングが楽しめる。間近で仰ぎ見る伊予富士は、その個性的な山容と圧倒的な存在感で、訪れる者を魅了してやまない。
標高1100mの登山口からは、往復わずか4時間半。手軽さと絶景を兼ね備えた名峰を求め、伊予富士へと足を踏み入れた。
寒風山(かんぷうざん)登山口から歩き出すとすぐに急登が始まる。序盤はハシゴやロープを使いながら標高を上げるが、少し進むと緩やかな道やつづら折りも出てくるため歩きやすくなる。樹林帯は新緑が美しく、心癒されながら登ることができたが、上に行くにつれて木の葉は少なくなり、桑瀬(くわせ)峠に着くころには木もなくなり、遠景を望むことができるようになった。
桑瀬峠に分岐があり、東側に進むと寒風山や笹ヶ峰(ささがみね)、その反対の西側が伊予富士となる。ササに覆われた稜線だが、剣山で見かけた背の低いササではなく、本州でよく見るような背の高いササヤブが続いていた。ササによって風はさえぎられ、頭上からは日差しが降り注ぐので、暑さにも体力を奪われた。
なだらかな稜線を進んでいくと、ラクダのコブのような2つのピークが、行く手をはばむかのように立ちふさがる。2つの急登を越えると一度樹林帯に入る。直射日光を避けられるため、涼しくありがたかった。樹林帯を抜け視界が開けると、緑の優美な稜線が見え、その先に個性的な山容の伊予富士が堂々とそびえていた。緩やかに下りながら徐々に距離を詰めていくと、登りに差し掛かり、一度伊予富士は見えなくなる。
丘を乗り越えた先で、再び姿を現わした伊予富士はさらに迫力を増していた。雄大な景色はすばらしいが、これからあの頂まで登ると思うと多少気が重くなった。
伊予富士のほぼ正面まで来ると、稜線上に立ち並ぶ3つの凹凸がよく見えた。真ん中の山頂が一番高く、その両脇に同じくらいの高さの峰があり、向かって左側は岩が露出しているが、右側は木に包まれている。それぞれに個性があり、見ていて飽きない景色だった。
山頂に向けての最後の登りは、この行程で最も斜度がきつい上に、道幅が狭く休める場所がないので、ペースを抑えつつ体力を消耗しないように意識しながら登る。
あまりのきつい傾斜にひっくり返りそうになるが、堪えながら一歩ずつ前に進んでいき、ある程度標高を稼いだところで振り返ると、美しい稜線と幾重にも連なる山々を眺めることができた。
急登をつめた先にある山頂は三六〇度の大パノラマが広がっており、特に石鎚山を筆頭に立ち並ぶ石鎚山系の山々が抜群だった。岩に腰を下ろし、息を整えながら、この上ない絶景を心ゆくまで楽しんだ。
山頂から続く急な坂道は、一歩一歩足元を確かめながら慎重に下った。終始眺めがよく、谷底から高く隆起した山々はまさに壮大だった。今いる場所から見えている稜線の端まで縦走するのはかなり骨が折れそうだと思いつつも、いつか笹ヶ峰や平家平(へいけだいら)まで歩きたいという憧れを胸に抱き、石鎚山系の山々にしばしの別れを告げた。
(山行日程=2025年4月30日)
MAP&DATA

こう(読者レポーター)
山形県在住。東北の山のほか関東甲信越、日本アルプスを月に6~8回のペースで登り、風景写真を撮っている。
この記事に登場する山
プロフィール
山と溪谷オンライン読者レポーター
全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。
山と溪谷オンライン読者レポート
山と溪谷オンライン読者による、全国各地の登山レポートや、登山道具レビュー。
こちらの連載もおすすめ
編集部おすすめ記事

- 道具・装備
- はじめての登山装備
【初心者向け】チェーンスパイクの基礎知識。軽アイゼンとの違いは? 雪山にはどこまで使える?

- 道具・装備
「ただのインナーとは違う」圧倒的な温かさと品質! 冬の低山・雪山で大活躍の最強ベースレイヤー13選

- コースガイド
- 下山メシのよろこび
丹沢・シダンゴ山でのんびり低山歩き。昭和レトロな食堂で「ザクッ、じゅわー」な定食を味わう

- コースガイド
- 読者レポート
初冬の高尾山を独り占め。のんびり低山ハイクを楽しむ

- その他
山仲間にグルメを贈ろう! 2025年のおすすめプレゼント&ギフト5選

- その他