残雪と花、夏へ向かう天空の縦走路。会津駒ヶ岳を歩く1泊2日
読者レポーターより登山レポをお届けします。ケロケロさんは会津駒ヶ岳(あいづこまがたけ、2133m)へ。
文・写真=ケロケロさん
1日目:滝沢登山口~会津駒ヶ岳〜中門岳〜駒ノ小屋
会津駒ヶ岳は、尾瀬国立公園内にある3つの日本百名山のうちの1つ。なだらかな稜線に広がる湿原の景色が美しい山です。
今回は登山口となる福島県檜枝岐村(ひのえまたむら)に前泊し、メインルートである滝沢登山口から登山を開始しました。
朝6時、国道沿いのバス停から滝沢登山口までの林道には、すでに多くの登山者が歩いていました。30分ほど歩いて登山口に着くと、近くの駐車スペースは満車で路肩に縦列駐車が続いていました。さすが人気の百名山です。
ブナやミズナラの原生林の中、しばらく急な登りが続きます。気温が高く、すぐに汗が滴り、息も上がります。 こまめに休憩を取って水を飲み、ゆっくり登って2時間ほどで水場のベンチに到着。水は充分持参していたので、汲みに行きませんでした。
しかし虫が多い! 休憩で立ち止まると、たちまち百匹くらいの虫(ブヨ)が群がってきました。防虫ネットを帽子の上からかぶり、その上からハッカ油スプレーをふりかけましたが、数カ所刺されてしまい、数日たった今もまだかゆくて閉口しています。
標高が上がるにつれオオシラビソが増え、やがて森林限界へ。景色が開ける爽快感がたまりません。
木道が延びる先にはめざす駒ノ小屋……の手前に、しっかりと残る雪。解けて緩んだ状態で、多くの人は滑り止めなしで歩いていましたが、私は雪道に慣れていないので、傾斜のある雪面をキックステップで登るのは緊張しました。
駒ノ小屋のテラスでパンとコーヒーの昼食をゆっくり取った後、小屋に荷物を預けて中門岳をめざしました。
先ほどの雪道がやや怖かったため、無理せず軽アイゼンを装着。サングラスとトレッキングポールを手に、雪原へ。日差しは強いものの、雪の上は涼しく快適です。木道をアイゼンで歩くのはご法度なので、雪面が現われるたびにアイゼンを着けたり外したりし、時間がかかりました。
階段を登って会津駒ヶ岳山頂へ。展望はあまりありません。山頂から急坂を下り、なだらかな雪面を足跡を頼りに進みました。
中門池のほとりには「中門岳(この一帯を云う)」の標識。最高地点は木道の終点にあり、池塘の点在する小高い丘をぐるりと一周できました。
駒ノ小屋に戻り、自炊室で早めの夕食を作り、宿泊者同士で山の話に花が咲きました。夜は小屋番さんに案内してもらい、雪の上を歩くサンショウウオを観察。尻尾を振りながら歩く愛らしい姿に大感動! 一生の思い出になりました。
薄雲がかかっていましたが、街中では見られない星空も楽しめました。
2日目:駒ノ小屋〜大津岐峠〜キリンテ
翌朝は小屋の前で御来光を迎えた後、大津岐峠(おおつまたとうげ)方面へ縦走し、キリンテへ下山しました。
これまでと違い、岩を乗り越えたり、切れ落ちたトラバースを渡ったりとやや険しい区間もありましたが、次々に現われる花々や大展望の尾根歩きが楽しい縦走路でした。中門岳方面とはまた違う花々も楽しめました。
雪もかなり残っていて、早朝は表面が硬かったため軽アイゼンを使いました。一度、面倒でアイゼンを着けたまま雪のない登山道を歩こうとしたところ、小石に引っ掛けて転びそうになりました。かえって危険なので、面倒でも毎回外さないといけませんね。
雪は日中解けるためか足跡が残っておらず、登山道の入り口を探しながら進みました。
大津岐峠では道標が倒れていてわかりづらかったですが、V字に折れてキリンテへ向かいます。木立の中をジグザグに下る単調で長い下り。倒木や崩壊地もありましたが、2時間ほどで道路まで下りて来ました。
キリンテからバスで滝沢登山口入口まで戻り、燧の湯で汗を流して帰路につきました。
会津駒ヶ岳の今年の山開きは7月5日。これから多くの登山者でにぎわうことでしょう。そのころには雪もさらに溶け、もっと歩きやすくなっていると思います。残雪と花の縦走路、生き物との出会いをたっぷり楽しんだ2日間でした。
(山行日程=2025年6月28~29日)
MAP&DATA

ケロケロさん(読者レポーター)
散歩をするように山を歩いて、木々や草花の折々の姿や、生き物との偶然の出会いを楽しみたい。双眼鏡をぶらさげて、関東近郊の山をのんびり歩いています。
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