大朝日岳、満開のヒメサユリ。朝日鉱泉周回トレーニング山行
読者レポーターより登山レポをお届けします。naobonさんは、山形県の名峰、大朝日岳(おおあさひだけ、1870m)へ。朝日鉱泉起点の周回コースはコースタイムが約12時間のロングルートで、夏のアルプスのトレーニングを兼ねての山行です。
文・写真=naobon
7月上旬、山形県・新潟県の県境にある朝日連峰の主峰、日本百名山の大朝日岳に日帰りで登りました。雪深いこの山域は、大自然のままの山や自然が残っている地域で、雪解け間もないこの季節、残雪の山並みに、ヒメサユリをはじめ、高山植物が彩鮮やかに咲き誇る、花と緑の楽園でした。
登山前日は、登山口にある「朝日鉱泉ナチュラリストの家」に宿泊し、宿のご主人に登山情報などのアドバイスをいただきました。宿には手書きの登山地図があり、登山道や水場の状況など山の様子が細やかに記載されており、大変参考になりました。朝日鉱泉登山口から、大朝日岳山頂まではいくつかのルートがあります。今回は日帰り山行のため、最短時間・最短距離(それでも8.5km)で直登できる中ツル尾根から登り、山頂到着時間次第で、鳥原山(とりはらやま)コースで下山する計画を立てました。
登山当日は、日の出前の朝4時20分頃に宿を出発しました。天気予報は、朝は曇り時々雨、その後回復するとのこと。中ツル尾根コースは、登山口(562m)から、前半1時間30分ほどは、吊り橋を渡ったり、アップダウンのある川沿いの道を歩いたのち、後半一気に高度を上げる、メリハリのあるコースです。沢沿いの道は、幸い水量も落ち着いていて、足が浸かるような徒渉はなく、岩や石で滑らないよう注意しながら歩きます。霧雨が降っていたので、暑さを感じずに、水辺歩きを楽しめました。途中、ブナの生い茂る孫兵衛平(まごべえだいら)などを通り、最後の吊り橋を通過すると、二俣出合(二合目)に到着です。
二俣出合から、いよいよ本格的な急登となり、ひたすらジグザグの道をどんどん高度を上げていきます。1時間ほど登ると、4合目に着きました。この近くに「長命水」という水場が地図に記載されています。宿のご主人からまだ雪に埋もれていて出ていない可能性もある、と聞いていたので、様子を見に行くことにしました。未整備の急坂を3分ほど下ると、チョロチョロとですが、水が出ていました。雪解けの冷水で、急登の疲れを癒やします。
登山道に戻り、また登り続けます。五合目を過ぎたあたりから傾斜も緩やかになり、眺望が見え始めました。この登山道は、各合目ごとに標識があり、一歩ずつ進んでいることを実感でき、大変な励みになりました。ちょうど雨もあがり、めざす大朝日岳が顔を出し、歩くモチベーションがぐんと上がります。六合目付近から稜線歩きとなり、前後に景色が広がるとともに、高山植物が咲き誇り、彩りが一気に華やかになります。稜線上は心地よい風が吹き、暑さをそれほど感じずに登ることができました。
夏山の天気は気まぐれで、八合目を過ぎた辺りから、またガスが出てきました。最後はガスの中を山頂をめざして一歩ずつ進み、10時15分頃に山頂に到着しました。山頂には誰もおらず、百名山の山頂と思えない静かな時間を楽しみます。ここで昼食をとりつつ、ガスが晴れるのを待つことにしました。昼食は、米どころ山形のお米で作られた宿特製のおにぎりは格別のおいしさでした。
しばらく山頂でガスが晴れるのを待ちますが、当面晴れそうにないので下山することに。当初計画より早めに山頂に着けたので、計画通り、鳥原コースで周回することとします。まず、大朝日岳山頂避難小屋方面に下ります。この小屋は避難小屋ですが、夏の期間中は管理人の方も常駐されており、非常にきれいな山小屋でした。
小屋で小休憩のあと、小朝日岳(こあさひだけ、1647m)に向かいます。途中、この登山道上で一番おいしいと評判の「銀玉水」で水を補給します。勢いよく出る冷たい水に、天の恵みを感じます。
ここから小朝日岳への道が、通称ヒメサユリロードと呼ばれる、ヒメサユリの大群落地です。ちょうど見頃を迎えており、稜線上に桃色の可憐な花々が咲いています。空の青と、残雪の山々と、ヒメサユリの風景が、とても素敵でした。
天候も回復し、初夏の陽差しのなか、小朝日岳山頂まで急登を登ります。中ツル尾根の急登を登った体にはなかなかこたえますが、登りきると大朝日岳連峰の風景が広がり、癒やされました。小朝日岳山頂で鳥原山ルートと古寺鉱泉(こでらこうせん)ルートの分岐となりますが、人がたくさんいたこともあり、分岐道標を見逃し、間違って古寺鉱泉ルートに下りてしまいました。少し下った先で道標を確認したところめざす地点名がなかったこと、山アプリの登山地図上でルートが外れていたこと、ちょうど登ってきた人とも話をしたところ道間違いに気づき、再度小朝日岳を登り返すことに。約40分ほどロスしましたが、小朝日岳からの絶景を再度眺めることができたので、よしとしました。小朝日岳山頂では、昨晩宿でご一緒したご一行とも再会。お互い安全登山を願って、山頂をあとにしました。
気を取り直して、鳥原山方面へ下山を開始します。このルートはロープが設置されている急斜面があったり、雪解け直後でルートが少々ザレ気味であったり、雪渓も残っていたりと、アスレチック要素が凝縮されていました。1時間ほど集中して歩くと、鳥原山山頂(1429m)に到着。山頂の展望台からは、みごとな大朝日岳を見納めることができました。鳥原山山頂から鳥原山避難小屋付近は湿原地帯で、これまでとまた異なる風景が広がっていました。豊かな水場もあり、水分を補給をします。
鳥原山以降は、コースタイムで約3時間ほどの下山路です。ここから下山口までは人と会うことなく、静かな山歩きとなりました。緩やかな緑の豊かな道を進み、金山沢(かなやまさわ)まで高度を下げ、再度登り返して尾根沿いのなだらかな道を進みます。最後は、ジグザグ道で一気に高度を下げ、中ツル尾根との分岐に戻りました。今朝がた歩いた一本目の吊り橋を渡ると、ゴールの朝日鉱泉に到着しました。
今回、道を間違えるハプニングもありましたが、ヒメサユリの花々にも出会え、緑豊かな山懐に抱かれた、満喫の山旅でした。下山後は朝日鉱泉に宿泊し、温泉と地元産のおいしいお食事で長旅の疲れを癒やしました。大朝日岳は紅葉の季節もみごととのこと、いつか錦秋の山々を見に訪れたいと思いました。
(山行日程=2025年7月5日)
MAP&DATA
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naobon(読者レポーター)
東京都在住、神戸市出身。夏山シーズンは日本アルプスの稜線縦走を、冬は低山・里山ハイキングや山城巡りを、気ままに楽しんでいます。山行後の温泉とビールにこの世の極楽を感じる、週末ハイカーです。
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