ロープウェイで本格登山。ちょうどいい山、谷川岳

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ビストロきっちょむ登山隊・興津剛さんによる登山レポート。今回は谷川岳(たにがわだけ、1977m)へ。

文・写真=興津 剛


さてさて、「ついにきたぜ夏休み!」って世間が浮き足立っている先日、谷川岳に登ってきました。冬の谷川岳にはちょくちょくきているけど、無雪期は13年ぶり! 久しぶりに雪のない谷川岳に登ってきました!

なんてこと言っちゃうと「すごい雪山に登っているんだぜ、俺!」って感じがするでしょ? まぁやっぱりね、俺くらいのレベルになっちゃうと、夏山では物足りないっていうかさ、より孤高で危険な山を求めちゃうって言うかね。わかるかな? こういう男のロマンをさ。やっぱり山はロマンだよ、奥さん。

って、あんまりくだらんことを長々と書いていると、編集さんにズバッとカットされちゃうから話を先に進めるけど、本当はただ「リフトがある雪山!」ってことで、谷川岳=雪山になっているだけです(笑)。

無雪期の谷川岳は、本格登山デビュー!的な方に本当にピッタンコ! めちゃくちゃおすすめです。危なすぎず、距離&標高差も程々。でも、がっつり登りと、岩岩した鎖場の道で、「山に登ってるぞ感」が半端ないです。

「ハイキングでは物足りない! 俺は登山がしたいんだ!」そんな方はぜひこの谷川岳に行ってみてください!

谷川岳ロープウェイ
谷川岳ロープウェイだヨッホ!

谷川岳のロープウェイは星野リゾートに加わって、名前が「谷川岳ヨッホ」になったんだって。「ヨッホ(joch)」はドイツ語で「鞍部(あんぶ)」という意味らしい。ふーん、まぁよくわからんけど、このダルマは欲しい(笑)。

谷川岳ロープウェイ乗車中の景色
ロープウェイは平日8時、土日祝7時が始発だヨッホ!

谷川岳にはロープウェイを使う天神(てんじん)尾根ルートと、西黒(にしぐろ)尾根というものすごい大変なルートがあります。甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)の黒戸(くろと)尾根といい、この西黒尾根といい、「黒」がつく尾根は要注意ですね。

夏の午後
夏の午後には御用心

この日は「午後から落雷の確率が80%です」とスタッフの方に言われました。夏の午後は夕立や雷雨の可能性があるから、先手必勝が基本ですね! この日の山頂には常に雲が!

谷川岳登山道
今年は特にクマにも御用心

登り出して5分で、前を歩いていた方が「クマがいた!」と言っていました。こんなロープウェイのすぐそばにも出るのか! その15分後にも追い抜いた別の方が「いまそこにクマがいました!」。

谷川岳の山頂
谷川岳の山頂

樹林帯の間から谷川岳の頂が見えます。あんな向こうの山頂まで2時間ほどで歩けちゃうんだから、人間の足ってすごいなぁ。巨大化したクッキーマンだったら、あそこまで3歩です。

岩な道
岩岩な道

登り出して30分でいよいよ本格的な登りがスタートしますよ! スニーカーだと足がドカーーン!って爆発しちゃうので、登山靴でお越しください。

登山道登り
こんな登りが続きます

ゴツゴツとした岩場の登りが1時間ほど続きます。

視界が開けたところからの景色
視界が開けたらこの景色

かなり登ってきたぜ〜〜〜。直射日光が当たるところでは山の上でも暑い!

山頂までの道のり
まだまだ先は長い!

先を見ると、まだまだ先が長い! 谷川岳の山頂までは標高差650mほど。本格登山入門にはもってこいのレベルですね!

山頂付近のケルン
山頂付近のケルンが見えた!

はるかかなたにケルンが! あのケルンまで行けば、山頂はすぐそこ!

頂までの道のり
シリーズ「見えてからが長い!」

でも「見えてからが長い!」ってのが、本当に山あるある! ぜんぜん近づいてこない(笑)。

ガスに包まれた山頂
シリーズ「山頂だけガス!」

そしてこの「山頂だけガスってる」っていうのは、これはいちばんベタな展開! これはもうお約束ですよね〜。みんな大好きでしょ? 「押すなよ、押すなよ」的な、「ガスるなよ、ガスるなよ」的なやつね!(笑)

肩ノ小屋
山頂直下の肩ノ小屋

山頂直下の谷川岳肩ノ小屋に到着〜。ここまできちゃえばもう山頂はすぐそこです。

ケルン
ケルン

下からずっと見えていたケルン。はるかかなたのように思えたのは、40分前。40分でここまで登れちゃうのか! 人間ってやっぱりすごい!

トマの耳
ガスガスのトマの耳

谷川岳は双耳峰(ピークが耳のように二つあるよ!ってこと)で、手前にあるのがトマの耳。奥が最高峰のオキの耳。とりあえず最初にトマの耳に到着。

オキノ耳
オキノ耳はガスの中

先のオキノ耳方面は完全にガスってます。こうなったら、もちろん行かないよね〜。また晴れた日に来てね!ってことなので、あっさり下山開始。なんてったって、午後から雷の確率80%らしいし!

登山者
続々と登ってくる人たち

のんびりと下山を開始すると、どんどん登山者が上がってきます。みんながんばってね!

登山者のご夫婦と絶景
ベストポディションにご夫婦

下っていると、めちゃくちゃいいところでご夫婦が休憩をしていたので、パシャと一枚。 夫婦で山登りって本当にすてきですよね。

シモツケソウ
シモツケソウ

谷川岳にはたくさんのお花が咲いていました。ニッコウキスゲや、シモツケソウとか、クルマユリも咲いてて、のんびりお花を愛でるのにもぴったりです。

自販機に並ぶコカコーラ
下山後はやっぱりコーラ!

大汗をかいて山から降りてきたら、ロープウェイ駅の自販機でよく冷えたコーラ! ……って、うおおおおお〜〜〜〜! 完売!! ひどすぎる!

最後は悲しい結末になっちゃったけど(笑)、それ以外は谷川岳、本当にめちゃくちゃ最高でした! 関越道で首都圏からもアクセスしやすいし、コースタイムで山頂まで3時間弱と、登りもほどほどでちょうどいい。我々は山頂だけガスっちゃったけど、晴れたら山頂からの眺望もマジでいいですよ!

そしてなにより、やっぱり何度山に行っても思います。「ロープウェイって最高!」って(笑)。大変な区間をロープウェイで上がっちゃえば、最初から標高の高い場所を歩くことができて、おいしいとこ取りができちゃいます。

そんなちょうどいいお山、谷川岳。午後には夕立や雷雨の危険性が上がっちゃうので、できたら早起きをして先手必勝で、ぜひ登ってみてください!

(山行日程=2025年7月22日)

MAP&DATA

高低図
最適日数:日帰り
コースタイム: 4時間30分
行程:天神平・・・分岐・・・熊穴沢避難小屋・・・谷川岳肩ノ小屋・・・トマの耳・・・オキの耳/往復
総歩行距離:約6,681m
累積標高差:上り 約1,023m 下り 約1,023m
コース定数:21

この記事に登場する山

群馬県 新潟県 / 越後山脈

谷川岳 標高 1,977m

 谷川岳は「耳二ツ」といわれ、沼田市や月夜野町(つきよのまち 現・みなかみ町月夜野)方面から見ると、ちょうどネコの耳のような双耳峰に見えるので、手前をトマの耳、奥の高い方の峰をオキの耳と呼びならわしている。  トマの耳は古くから薬師岳とも呼ばれ、山頂には石造りの薬師瑠璃光如来が祭られていたという。一方、オキの耳には、富士山の浅間菩薩が地元の人たちに福を与えんとして降臨したとの伝説も残り、別名谷川富士と呼ばれる。  元来谷川岳は、谷川本谷の北方にそびえる俎嵓を指していたのだが、陸地測量部が誤って、薬師岳に谷川岳と名称をつけた。ジャーナリズムが遭難の起こるたびに「谷川岳」の文字を使用した結果、今日では1963m峰(トマの耳)が谷川岳ということに定着したという。  昭和6年(1931)9月、上越線が開通した翌月、土樽(つちたる)側の万太郎谷で東京の一青年が疲労凍死し、登山者による遭難第1号となった。  谷川連峰の特異性については、次のような点が考えられる。  登山人口の多い首都圏に近くて交通の便がよく、アプローチが短いので、すぐに山に取り付ける。スポーツ登山や大衆登山の普及と相まって、絶好の登山地となった。  日本列島脊梁地の一部として、この山域の局地気象の複雑さは特異ともいえる。東京と清水峠の気温の差は、夏でも9~10度あり、加えて強風、豪雪、雪崩、濃霧といった悪条件が重なる。  標高は2000m内外であるが、峻険な岩壁を有し、高山性を帯びた山々である。地質も複雑で階層状をなし、多様な岩石が分布し、それが地形や植物分布に大きな影響を与えている。例えば、豪雪との関連もあるが、針葉樹林帯がほとんど見られない。  昭和42年(1967)から、群馬県の谷川岳遭難防止条例により、危険地区への入山の届出制や冬山の一時的登山自粛または禁止など規制が行われている。また、毎年融雪期にあたる3月末から5月中旬にかけては、気温上昇による雪崩の発生が予想されるため、危険地区の登山を禁止している。  昭和13年(1938)7月1日、スポーツ登山としての第1回山開きが行われた。西黒沢からガレ沢(当時の主要コース)をつめて尾根に登り、ザンゲ岩から山頂に出た。以後7月の第1日曜日は「安全登山の日」として、現在も山開きの日になっている。  ロープウェイを利用する天神平コースが所要2時間30分。厳剛新道コースは土合駅から4時間40分。西黒尾根コースは土合駅から4時間30分でそれぞれ山頂へ。

プロフィール

興津 剛(おきつ・つよし)

静岡県静岡市出身。本業は登山隊の隊長。 副業はフォトグラファー、キャニオニングガイド、WEBデザイナー。2011年より山のHP「ビストロきっちょむ登山隊」を運営。最近では登山ツアーや、ポップアップカフェなど、みんなで「ワハハ!」ってできるイベントを定期的に開催中です。山に行かない日はジョギングと水泳をして、ダイエットに励む日々。今年の目標は、あと2kg痩せたい!

今がいい山、棚からひとつかみ

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