経ヶ岳で南アルプスの展望とササユリを楽しむ
読者レポーターより登山レポをお届けします。白麻佑季さんは長野県の経ヶ岳(きょうがたけ、2296m)へ。
文・写真=白麻佑季
中央アルプス北端にある経ヶ岳の登山口は3カ所ある。以前は仲仙寺(ちゅうせんじ)ルートがメインだったが、数年前に経ヶ岳友の会のみなさんが権兵衛(ごんべえ)峠ルートを開通。ササユリ群生地の整備をされてからは、こちらがメインとなった。ササユリの開花時期には、休日の権兵衛峠駐車場はササユリ目的の車でいっぱいになるほどの人気だ。
そのため自宅から一番近くてマイナーな大泉所(おおいずみどころ)ダム登山口を選択したが、駐車場手前の林道は轍が深く、車体の下部を擦りやすいために要注意だ。
大泉所ダム登山口から二合目までは緩やかな林道歩き。二合目から四合目まではつづら折りの急登が続く。筋肉痛だったのでゆっくり登り、呼吸はそれほど上がらなかったが梅雨明け後の夏らしい天気と暑さで滝のような汗をかいた。水は2L持参したがほぼ飲み切った。
四合目手前の展望場所からは、南アルプスや八ヶ岳一帯が鮮明に見えた。
四合目分岐で仲仙寺ルートと合流する。ここから仲仙寺までは、5月に開催されるトレイルランニングレース、経ヶ岳バーティカルリミットで駆け降りるのが楽しい区間だ!
七合目付近よりササユリが咲いていた。
ほかにも鮮やかな赤紫のホタルブクロ、可憐な白い花のセンジュガンピなどが目を引く。八合目手前のヤナギランは、ここまで登れたことを祝ってくれているかのようだった。
七~八合目のきつい登り返しを経て展望のいい八合目までたどり着くと、“もうここが山頂でいいのではないか”と思うことがたびたびあるが、幸い元気に山頂をめざせそうだった。
八合目で、望郷の碑に腰掛けて、男性がタバコを吸い始めた。経ヶ岳がある南箕輪村の中学校では、大芝高原から経ヶ岳八合目まで登る強歩大会を昭和28(1953)年から続けている。私は、初めて勤務した学校の記録係として、ゴールする生徒たちを3年撮り続けた。生徒たちはPTAのみなさんが整備してくれた道を必死にここまで登ってきて満足げな顔でゴール。校長先生と握手した後にお弁当を食べてから集団下山するのが恒例だった。この強歩大会の記念碑として平成4(1992)年に建てられたのが望郷の碑である。そこに腰掛けてタバコを吸うのが私には信じられなかったが、とにかく先へ進んだ。
私が歩き始めると先行者が戻ってきてすれ違った。おそらくヤブこぎを諦めて引き返したのだろう。背丈以上のヤブこぎ区間が少し先にある。少し難儀するが長い距離ではないので、落ち着いて進めば通過できる。
九合目手前の分岐看板を右に降りれば、大泉所ダムに繋がる中尾ルートに入る。このルートは経ヶ岳バーティカルリミットのロングコースにもなっている。大会前に草刈りされるので、快適に歩きたければ大会直後がおすすめだ。
九合目を過ぎて再び下って登り返すと経ヶ岳山頂に到着する。それまで数人しか会わなかったが山頂は混んでいたので、山頂では休まずにコイノコまで一気に降りることにした。コイノコ到着時は40~50人が休憩中で休む場所がなく、少し下るとササユリの群生地だった。
ササユリは見頃を過ぎてはいたが、まだ美しく咲いている花もある。経ヶ岳友の会の人たちが、登山道の脇に緑のロープを張り、シカ避けの忌避剤が入った袋を吊るす作業をしながら、通過する登山者からの質問に丁寧に答えていた。
私は昨年友の会の方から「保全活動に参加しませんか」と声を掛けていただいたにもかかわらず、一度たりとも協力しないままササユリを見にきてしまった不届き者だ。
挨拶だけして、素性がばれないうちに通り過ぎようと思ったら、経ヶ岳バーティカルリミットのTシャツを着ていたことで声を掛けられてしまった。すると私を勧誘してくれた方も作業されていて、なんと同じTシャツ! 見つかってしまって申し訳なさでいっぱいだったが、Tシャツきっかけでしばらくお話することができた。
友の会のみなさんは作業用資材に加えて個人の荷物も背負ってここまで登られた上に、太陽の下で長時間作業されているわけで、その労力は計り知れない。しかも年間相当日数を保全活動に充てておられる。そのおかげで私達は整備された登山道を快適に歩き、きれいなササユリを見ることができるのだから、本当に頭が下がる。あらためて、保全活動に参加せずにごめんなさい!と懺悔した。
休憩後13時にコイノコに戻ると、かなり登山者が減っていた。その先も登山者は減り続け、山頂に戻るころには貸し切りだった。占有できた山頂で、経ヶ岳の名前にちなんで座禅を組んで合掌したり、ヨガの“蓮の花の瞑想”をするなど1時間近くも楽しんだ。
山頂を満喫しすぎて下山開始が15時になってしまった。急ぎたいのは山々だったが疲労と筋肉痛で走れない。これは下山完了まで長丁場になると覚悟したが、案外飽きずに楽しく下ることができた。これは経ヶ岳友の会のみなさんとお話して元気をもらえたことが大きい。彼らのおかげで、経ヶ岳がより一層身近で大切な山だと感じるようになり、とても楽しい山行となったことに心から感謝したい。
(山行日程=2025年7月20日)
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白麻佑季(読者レポーター)
中央&南アルプスに挟まれた、長野県上伊那郡在住。ヨガを仕事にしていて山でもヨガをするのが趣味。さまざまな自然が身近にあるおかげで、毎日元気にゆる~く生きてます。
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