緊張の連続、その先に待つ絶景。北アルプス・不帰ノ嶮から唐松岳

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読者レポーターより登山レポをお届けします。yamatsuzukiさんは不帰ノ嶮(かえらずのけん)から唐松岳(からまつだけ、2696m)へ。

文・写真=yamatsuzuki

1日目:猿倉~白馬鑓温泉小屋~天狗山荘テント場

お盆休みの前半が悪天候のため、天気が落ち着いた後半に予定変更。八方バスターミナルから猿倉(さるくら)登山口まではバスで移動。猿倉荘はドラマの撮影場所にもなっていました。トイレ、水場があります。身支度を整えてスタートです。

歩きだしてすぐに白馬(はくば)大雪渓との分岐があります。今回は二日目の不帰ノ嶮に備えて、コースタイムの短い白馬鑓(はくばやり)温泉ルートで天狗山荘に向かいます。

猿倉荘
登山口にある猿倉荘
白馬大雪渓ルートとの分岐
白馬大雪渓ルートとの分岐

大雪渓へのルートのほうが人気が高いようで、白馬鑓温泉のルートは下山時に歩く人が多い印象です。

白馬鑓温泉が見えるまでは樹林帯であまり景色もないので、どんどん進みます。短いですが雪渓歩きもありました。アイゼンやピッケルはなくても大丈夫でした。この雪渓から白馬鑓温泉小屋までも急登で、なかなかたどり着きません。

白馬鑓温泉小屋までは比較的平坦の登山道
白馬鑓温泉小屋までは比較的平坦な登山道
白馬鑓温泉小屋
白馬鑓温泉小屋
白馬鑓温泉小屋手前の雪渓
白馬鑓温泉小屋手前の雪渓歩き

疲れたので小屋で休憩です。温泉はうわさ通りの開放的な立地です。今回は利用しませんでしたが、一度は小屋に泊まってゆっくり温泉に入ってみたいです。テント場もきれいに整地されていました。

白馬鑓温泉小屋 テント場と小屋
テント場(画像左下)と小屋
白馬鑓温泉小屋 開放的な温泉
開放的な温泉
白馬鑓温泉小屋から見える温泉
小屋から見える温泉

ここから鎖場が続くのでトレッキングポールをしまって歩きます。岩場で滑る箇所もあるので慎重に歩きます。急登の岩場を抜けると、チングルマの果穂やクルマユリが見られました。

チングルマ
たくさんのチングルマ
クルマユリ
鮮やかな色をしたクルマユリ

汗だくになって稜線に上がったら、ガスが少し抜けてすばらしい景色と迫力ある白馬鑓ヶ岳が目の前に。午後から雨予報だったので、山頂には行かずに天狗山荘へ向かいました。結局、雨は降りませんでしたが……。

白馬鑓ヶ岳
存在感ある白馬鑓ヶ岳
天狗山荘のテント場
小屋の手前がテント場

天狗山荘のテント場は約30張でフラットな場所も多い印象です。今回は目の前に白馬鑓ヶ岳が見える場所にテントを張ることができました。残念ながらガスの時間が長かったです。

水場の水はそのまま飲むことができます。また小屋の自炊室が利用できるので助かります。ランチ営業もされています。今回のビールとおでんの組み合わせは最高としか言いようがありません。

天狗山荘 おいしいおでんとビール
おいしいおでんとビール
天狗山荘 売店と自炊室
売店と自炊室はきれいで快適です
天狗山荘 テント場からの白馬鑓ヶ岳
テント場からの白馬鑓ヶ岳

夕日の時間まではゆったりまったりとテント場で過ごします。ガスで期待薄でしたが、諦めずに夕日の時間にテント場から白馬鑓ケ岳方面に少し戻った場所で待機。途中でライチョウに出合いました。

ライチョウの家族
ライチョウの家族

ガスでまったく景色が見えない中で我慢の時間です。諦めなくてよかったです。いきなりガスが抜けて、とても美しい夕日と雲海が目の前に!!

美しい夕日と雲海
ガスが抜けた後の夕日

思わず「すげー!!」と声が出ました。こういうタイミングがあるから、山での時間は貴重ですばらしい。まさに細胞が震える感動的な時間になりました。

すばらしい夕日で全身が満たされたので、不帰ノ嶮に備えて寝ます。1日目終了。

2日目:天狗山荘テント場~天狗の頭~不帰ノ嶮~唐松岳~八方池山荘

事前の天気予報では2日目は朝から快晴のはず……でしたが、テントから出ると深いガスの世界。そして強風で寒い。

「天気予報と違うやん」と思いながらも、テントを撤収して4時過ぎにスタート。天狗の頭付近で御来光を予定していましたが、ガスの中で景色は見えないのでそのまま天狗の大下りに向かいます。2日目の核心部の天狗の大下りは約300mを激下りします。滑りやすい岩と鎖場が続くので慎重に下ります。

濃いガスで視界不良の登山道
濃いガスで視界不良
天狗の大下りの鎖場
天狗の大下りの鎖場

天狗の大下りの途中でガスが抜けて、目の前に不帰ノ嶮が!! 存在感がすごいです。まったく景色が見えない中で歩いていたので、うれしくなります。そして気が引き締まります。いよいよ不帰ノ嶮です。

不帰ノ嶮
不帰ノ嶮が現われる

一峰までのルートはマーキングもわかりやすいので歩きやすいです。一峰頂上からしっかり下ると、核心部の二峰への登りになります。第一印象は壁です。集中力を高めて丁寧に登ります。三点支持でゆっくり手や足の置き場を確認しながら一歩ずつ。高度感はしっかりあります。とにかくゆっくり丁寧に登ります。

不帰ノ嶮 一峰への登り
一峰への登り
不帰ノ嶮 核心部の二峰
核心部の二峰
不帰ノ嶮 核心部を下る登山者
核心部を下る登山者
不帰ノ嶮 前半の水平ハシゴ
前半の水平ハシゴ

二峰は北峰と南峰に分かれており、南峰を登りきると核心部クリア。三峰には登らず巻き道でそのまま唐松岳に向かいます。

不帰ノ嶮 二峰南峰から白馬方面
二峰南峰から白馬方面
不帰ノ嶮 二峰南峰から三峰方面
二峰南峰から三峰方面

二峰南峰から約40分で唐松岳山頂です。山頂は多くの人でにぎわっていました。三六〇度の絶景ですが、ガスに覆われたり抜けたりの繰り返しでした。山頂も強風で防風対策は必須です。しばらく景色を楽しんでゆっくり下山開始です。

唐松岳山頂で虹色のブロッケン
唐松岳山頂で虹色のブロッケン
唐松岳山頂からの立山方面
山頂からの立山方面
唐松岳頂上山荘
唐松岳頂上山荘

唐松岳頂上山荘で休憩して、縦走最後の八方尾根を下ります。八方尾根は人気があって渋滞すると聞いていましたが、本当に大渋滞です。景色がすばらしいので仕方がないですね。ゆっくり景色を楽しみながら、八方池を通って八方池山荘まで下ります。

八方池からの不帰ノ嶮方面
八方池からの不帰ノ嶮方面

最後はリフトとゴンドラを乗り継いで下山です。

今回の山行は初めてキレットへの挑戦で不安もありましたが、なんとか踏破することができました。また、天気予報が事前情報と違って終日強風でレイヤリングに対する認識の甘さを反省する機会もありました。突然変わる山の天気への対応も含めて、次回以降の課題です。

今後も大自然への敬意を忘れずに、安全に山行を続けたいと思います。

(山行日程=2025年8月16~17日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:1泊2日
コースタイム: 【1日目】7時間15分
【2日目】7時間55分
行程:【1日目】
猿倉・・・小日向のコル・・・杓子沢・・・白馬鑓温泉小屋・・・大出原・・・鑓温泉分岐・・・天狗平
【2日目】
天狗平・・・天狗ノ頭・・・不帰キレット・・・二峰北峰・・・唐松岳・・・唐松岳頂上山荘・・・丸山・・・第三ケルン・・・八方池山荘
総歩行距離:約18,600m
累積標高差:上り 約2,603m 下り 約1,998m
コース定数:60
yamatsuzuki(読者レポーター)

yamatsuzuki(読者レポーター)

2022年に初めての槍ヶ岳登山で、全身の細胞が震える感動とエネルギーが沸き起こる体験をして以来、山にどっぷりはまっています。細胞レベルのわっくわく!!を感じながら山を楽しんでいます。

この記事に登場する山

富山県 長野県 / 飛騨山脈北部

唐松岳 標高 2,696m

 後立山連峰のほぼ中央に位置するが、地味な存在である。ピラミッド型をしたこの山が大きく美しく見えるのは、主稜線の大黒岳付近からである。  主稜線を振り分けに、長野・富山両県からそれぞれ1本ずつの登山道が通じている。東からの八方尾根は、山岳スキー場として知られるが、途中の八方池は不帰ノ嶮を間近に仰ぐ憩いの場である(八方集落よりリフトなど利用して所要4時間)。西からの南越(なんこし)の道は、黒部渓谷からのもので、難路であったが、昭和61年、大黒鉱山跡まで尾根上をたどる新道に切り替えられた(祖母谷温泉より所要9時間)。  唐松岳北方の主稜線は、両側面からの浸食によって険しいやせ尾根となって、不帰ノ嶮と呼ばれている。ここは白馬岳からの縦走では、電気回路における抵抗のような存在となっているのである。南方への稜線はすぐに牛首岳を起こすが、ここも険路である。  八方尾根と主稜線とのジャンクションをなす小突起の西側に、抱かれるようにして唐松岳頂上山荘が建っている。間に深い黒部の谷を挟んで望む、ここからの剱岳の眺めは、後立山八景の1つに数えられよう。

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