ライチョウにも遭遇。中央アルプス主稜線、檜尾岳~空木岳縦走

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読者レポーターより登山レポをお届けします。Jimny-Hikerさんは中央アルプスの檜尾岳(ひのきおだけ、2728m)、空木岳(うつぎだけ、2864m)を縦走。

文・写真=Jimny-Hiker


9月半ば。花は終盤を迎え、紅葉にはまだ早い端境期。個人的には静かな山を楽しめるので、好きな時期でもあります。秋雨前線の影響が強く、アルプス稜線をテント泊縦走するのには気温の低下で雨に濡れると低体温症のリスクもあり、数日入山するには直前まで決めるのが難しい時期。

前線の影響を受ける日本海側に近い山域は避け、比較的安定した中央アルプスへ向かうことに。前日に檜尾小屋に連絡しテン場を予約。直前での予約は平日に山へ行ける特権です。

菅ノ台(すがのだい)駐車場は1日800円、トイレあり。駒ヶ根高原スキー場駐車場は無料。始発7時15分のバスでしらび平、その後ロープウェイで千畳敷へと向かいます。

事前に駒ヶ岳ロープウェイオンラインチケットを購入すると、バス+ロープウェイチケットの利用がとてもスムーズです。

1日目:千畳敷~三ノ沢岳~檜尾岳~檜尾小屋

千畳敷

平日ながら始発のバスは臨時が出る盛況。ほとんどの登山者が八丁坂をめざす中、一人、極楽平への登山道を登ります。クマ出没中とのことで、可能であれば登山道変更の案内あり。熊鈴2個、ミニ撃退スプレー持参。

ナナカマドの赤い実

ナナカマドの赤い実。葉はまだ青く色づきはもう少し先です。

宝剣岳

稜線からシンボルの宝剣岳(ほうけんだけ)。

宝剣岳分岐から三ノ沢岳へ

宝剣岳分岐から三ノ沢岳(さんのさわだけ)へ。コースタイムは2時間30分とあります。

ウラシマツツジの紅葉

ウラシマツツジの紅葉。薄紅葉ですが、短くはかない最高の季節がすぐそばまでやってきています。

三ノ沢岳山頂

三ノ沢岳山頂。奥に三角点もあります。

すばらしい稜線

花崗岩とハイマツに覆われたすばらしい稜線。個人的に花崗岩の山がとても好きです。

宝剣岳へと続く稜線

木曽前岳(きそまえだけ)、木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)、中岳(なかだけ)、宝剣岳へと続くすばらしい稜線美。登山道はハイマツが濃く、ヤブ漕ぎほどではないですが、所々で肩のあたりまで伸びていて押し返される場所もあります。

島田娘

三ノ沢岳から主稜線へ戻り島田娘(しまだむすめ)へ。予定の行程だと千畳敷から三ノ沢岳を往復すると6時間かかるはずでしたが、3時間半ほどで戻ってきました。個人差もあると思いますが、テント装備を背負ってこの時間で戻って来れたのはうれしい誤算(普段はそんなに速くありません)。檜尾小屋は16時以降になると踏んでいたので、早めに到着できそうです。

雲がわく稜線

中央アルプス主稜線は雲がわき、いい演出をしてきました。雨は降らないといいのですが。三ノ沢岳と比べると登山者の数が少し増えてきました。

檜尾岳

濁沢大峰(にごりさわおおみね)を経て檜尾岳へ。奥に檜尾小屋が見えます。避難小屋が改修され有人の山小屋になってからすでに4年経つそうです。

檜尾小屋

檜尾小屋でテントの受付を済ませます。テント場は先に受付し、場所を決めてから設営のルールです。この日は全部で17張とのこと。平日にしては多く感じました。

テント場

小屋で買ったビールをおいしくいただく。あたり一面ガスに覆われ、夕陽は絶望的ですが……。諦めの悪い私は一人、檜尾岳山頂へ。

檜尾岳山頂からの見る夕陽

難しいと思いきや、貸切の山頂で一瞬、ガスが切れ現われた夕陽に感動。

檜尾岳山頂からの景色

その後も粘り、山並みが見えるまで回復する数秒シャッターを押す。ひとときの夕陽を堪能しました。

2日目: 檜尾小屋~熊沢岳~木曽殿山荘~空木岳~池山小屋~菅ノ台駐車場

翌日は秋雨前線の影響で早い時間から天気が崩れる予報。

2時45分にアラームセット、テント撤収と準備を整え4時少し前にスタートし、熊沢岳山頂で日の出に間に合うよう動きます。

暗さとガスで視界がよくない道

稜線の風は強く冷たい。暗さとガスで視界があまりよくないので、道をロストしないよう注意が必要です。

雲が取れたのは西側

雲が取れたのは西側のみで、日の出は拝めませんでしたが、空は赤くそまっていました。

熊沢岳山頂

熊沢岳山頂。振り返ると一面ガスだった稜線を雲が越え、すばらしい景色。

東川岳と南駒ヶ岳

東川岳(ひがしかわだけ)と南駒ヶ岳。空木岳は雲の中です。

大きなブロッケン

大きなブロッケンが出ます。

目の前にそびえる空木岳

少しずつ稜線の天気は回復し、目の前にそびえる空木岳。鞍部まで下り登り返しがきつそうです。

木曽殿山荘

鞍部にある木曽殿山荘で食事と大休憩。朝露で濡れていたハイマツも乾いてきたので、レインウェアを脱ぎ整えます。

ハイマツに覆われた空木岳

ハイマツに覆われた空木岳。花崗岩の山容といい、すばらしい景色。

ライチョウ

ふと耳を傾けるとライチョウの鳴き声。いた、いました。中央アルプスでライチョウ復活事業が開始されて以来、麦草岳(むぎくさだけ)や将棋頭山(しょうぎがしらやま)へ訪れましたが会えなかった。うれしい、やっと会えました。

稜線を散歩するライチョウ

稜線をお散歩。よく見ると足に印の着いた個体とない個体。今年生まれた子どもがいる親子のようです。中アだけですでに200羽近くいるというので、どんどん増えていそうです。

ライチョウ

ここだけで5羽いたでしょうか。これから秋を迎え厳しい冬がやってくる。無事越冬できますように。

乱立する花崗岩

乱立する花崗岩。木曽殿越側は池山側と違い、険しい印象です。

空木岳山頂

6年ぶりの空木岳山頂。

駒峰ヒュッテ

駒峰ヒュッテが見えました。あとは長い長い池山尾根が待っている。

花崗岩の砂とウラシマツツジの紅葉

花崗岩の砂とウラシマツツジの紅葉がいい。

駒石

駒石もどっしりと健在でした。

以前は池山林道最終地点まで車で登ることができましたが、数年前の土砂崩れ以降通れなくなってしまいました。現在復旧作業中。無事に菅ノ台へ下山しました。

(山行日程=2025年9月9~10日)

立ち寄り
早太郎温泉郷・こぶしの湯

早太郎温泉郷・こぶしの湯

下山後の温泉はいちばん近くに早太郎温泉こまくさの湯がありますが、休館日。近くにある早太郎温泉郷・こぶしの湯へ。
https://drop-of-alps.com/

南北に広い信州によく訪問するので、以前から使用している信州物見遊山手形を利用。 1980円で手形に参加している12施設に入浴でき、2~3回入浴すれば元が取れる優れもの。1年間有効期限があるのでたっぷり楽しめます。入りたい温泉で山を決めるのも悪くない。

下山メシ
「明治亭駒ヶ根本店」のソースかつ

「明治亭駒ケ根本店」のソースかつ丼

山を堪能後の温泉でさっぱりした後はソースかつ丼で贅沢。ボリューム満点! そばまでつけておいしくいただきました。
https://www.meijitei.com/komaganeten.html

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:1泊2日
コースタイム:【1日目】9時間
【2日目】10時間30分
行程:【1日目】
千畳敷・・・極楽平・・・三ノ沢分岐・・・三ノ沢岳・・・三ノ沢分岐・・・極楽平・・・濁沢大峰・・・檜尾岳・・・檜尾小屋

【2日目】
檜尾小屋・・・檜尾岳・・・熊沢岳・・・東川岳・・・木曽殿山荘・・・空木岳・・・分岐点・・・大地獄・・・池山小屋分岐・・・池山林道終点・・・駒ヶ根高原
総歩行距離:約23,400m
累積標高差:上り 約1,880m 下り 約3,676m
コース定数:63

関連リンク

Jimny-Hiker(読者レポーター)

Jimny-Hiker(読者レポーター)

四季を問わず山と撮影を楽しむハイカー。

この記事に登場する山

長野県 / 木曽山脈

空木岳 標高 2,864m

 中央アルプスのほぼ中央に位置する名峰で、伊那谷の太田切川、木曽谷の伊奈川の源となっている山。その昔は「前駒ヶ岳」と呼ばれていた(営林署の伊那谷経営計画地図にはそう記されている)が、その後、空木岳と名を変えている。  山名の起こりは「卯木」からきている。春、伊那谷からこの山を眺めたとき、中腹以下は黒木の森なのに、山頂部は残雪模様が美しく、それがあたかも満開のウツギの花のように見えるところから、その名がつけられたようである。深田久弥もその著『日本百名山』の中で、「空木、空木、何というひびきのよい優しい名前だろう。もし私が詩人であったなら空木という美しい韻を畳み入れて、この山に献じる詩を作りたいところだ」と書いている。  山頂の東側に広がる空木平は氷河地形で、夏にはお花畑となる。また、花崗岩で構成されている山頂付近は、白い砂礫とハイマツの緑とのコントラストが美しく、その縞模様が印象的である。  頂上からの展望はもちろんすばらしく、北アルプスをはじめ乗鞍岳や御岳山、八ヶ岳連峰、そして目の前には南アルプスの大パノラマと、中部地方のほとんどの山を一望の下に楽しむことができる。  登山コースは駒ケ根口の池山尾根を経て山頂に至るルートと、木曽谷の倉本口から木曽殿越(きそどのごえ)経由で登頂する2つのルートがあるが、最近では千畳敷までロープウェイ(平成10年秋まで運休)を利用、極楽平から南へ縦走してくるパーティが多くなっている。気軽に登れるようにはなったが、やはり3000m近い山。安易に考えないように注意したい。  空木岳登頂の最もポピュラーな池山尾根コースの起点は駒ケ根高原。ここから一気に高度を上げていき、池山小屋を過ぎて原生林帯に入る。やがてマセナギ(馬小屋の入り口に懸ける横棒、マセン棒のようにナギが登山道を通せんぼしている所)、大地獄、小地獄、迷尾根などという、恐ろしげな地名の難所を通過、ダケカンバ帯を抜けると空木平となる。ハイマツの間のお花畑や小鳥たちに迎えられて、もうひと登りすれば山頂である。下山は木曽殿越から伊奈川に下り、木曽谷の倉本駅に下るのが変化に富んでいて面白いだろう。  所要時間は駒ケ根高原から空木岳山頂まで約6時間。倉本駅から山頂まで登り9時間弱、山頂から倉本駅へは下り5時間。千畳敷からは桧尾岳や熊沢五峰などを越えて約7時間の縦走で山頂に立てる。

長野県 / 木曽山脈

檜尾岳 標高 2,728m

 主峰、木曽駒ヶ岳と中部の重鎮、空木岳とのちょうど中間に位置しているのが、この桧尾岳(檜尾岳)である。山頂近くの伊那側に避難小屋があり、中御所谷と太田切川本谷に挟まれた桧尾根に登山道があるため人気のある山。  山名は地元の人々は「桧王」と呼んでいたが、戦後、「桧尾」になり、さらに「桧尾岳」となっている。  主稜線上の中央に位置するだけにその展望は中央アルプス随一を誇る。なんといっても目を引くのは、伊奈川をはさんで大きなカールを抱く三ノ沢岳。北は濁沢大峰から島田娘(しまだむすめ)、宝剣岳、そして木曽駒ヶ岳と主稜線が続き、南は太田切川本谷の深い谷間を挟んで、ピラミダルな空木岳を眺めることができる。  登山コースは千畳敷から極楽平経由で3時間、空木岳からは木曽殿越、東川岳、熊沢岳と越えて3時間強の行程である。

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