アジアとヨーロッパを結ぶトレイル「トルコ リキアン・ウェイ」:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(5)

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トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る「世界のトレイルを巡る旅」。第5回目は、アジアとヨーロッパを結ぶ国トルコが舞台。トルコ南岸で地中海を眺めながら歩いた「リキアン・ウェイ」は、農園、荒野、海など、突如景色が切り替わるサプライズが楽しいトレッキングだった。

 

海沿いに続く古代の道

2016年6月6日(世界一周55日目)

キルギスを歩いた後は、ウズベキスタン、ジョージアを旅し、アジアとヨーロッパを結ぶ国トルコに入った。

トルコに入って僕らが向かったのは地中海沿いの街フェティエ。トルコの南岸には美しい地中海と古代リキアの遺跡を楽しめる、「リキアン・ウェイ(Lycian Way)」と呼ばれるロングトレイルがあるのだ。今日はフェティエから、途中カヤキョイの村を抜け、美しいラグーンが広がるオリュデニズまで歩くことにした。

はじめは松林に囲まれて眺望がなかったが、40~50分ほど登り続けるとフェティエの街を見下ろせるポイントに着いた。遠くに海が見える・・・、この旅ではじめての海沿いのトレッキングに心が躍る瞬間だった。

カヤキョイには、ギリシャ移民がかつて住んでいた集落が、そのまま廃墟として残っている。古代遺跡では無いが、斜面に沿って1千軒を超える廃墟が広がる風景はなかなか見応えがある。

フェティエの町並みを見下ろす

廃墟が立ち並ぶカヤキョイ

 

ここからオリュデニズへのトレイルは、海岸線を望む人気のトレッキングルートになっていて、水着姿で歩くような人も含め、何人かのハイカーを見かけた。6月初旬のトルコ南岸はすでに夏の様相で、ジリジリとしたきつい日差しが照りつける。厳しいコンディションだが、周りに高い山が無いせいか空を広く感じ、青く輝く地中海はもうすぐだという期待感が、少しだけ足取りを軽くしてくれた。

そして、楽しみにしていた地中海は突然現れた。

目の前に飛び込んできた地中海

 

エメラルドグリーンの海――。オリュデニズの海岸線は緩やかなカーブを描き、その先端でラグーンを形成している。海から砂浜への青のグラデーションがとても美しい。このトルコ屈指のビーチの全景を楽しむためには、パラグライダーに乗るかトレッキングするかしかない。そんな贅沢な眺めだった。

ここからはオリュデニズのビーチに向かって下っていく。水着姿のリゾート客で賑わう砂浜のビーチで、トレッキングスタイルの僕らは明らかに浮いた存在で、なんだかおかしくて二人で笑ってしまった。

オリュデニズの美しいラグーン

白砂のビーチが今日のゴール

 

断崖から臨む地中海の街

2016年6月7日(世界一周56日目)

オリュデニスを後にした僕らは、さらに東へ50kmほど行ったカシュという街にやってきた。ここも地中海に面した街だが、リゾート地特有の派手さはなく、地元の人の生活と観光産業がうまく溶け込んでいて、どことなく落ち着く街だった。また円形劇場などの古代リキアの遺跡があり、歴史を感じる街でもある。

落ち着きのあるカシュの街

 

カシュの街は海と断崖絶壁に挟まれた場所にあり、リキアン・ウェイのトレイルは断崖の上の内陸部から海に向かって続いている。僕らはバスで少し内陸まで移動し、そこからカシュの街に向かって歩き始めた。

断崖の上は、麦畑が広がる農園地帯に続き、どこまでも続く広い荒野が広がっていた。遮るものなく降り注ぐ太陽の光を全身に受けて、喉が渇き頭がクラクラし始めた頃、突然青い海が現れた。アップダウンのない平坦なトレイルから、突如景色が切り替わるサプライズが楽しいルートだ。

どこまでも続く広い荒野を歩いた

 

崖から見下ろす先には、アドリア海に面したどこかの街を彷彿とさせるオレンジ色の屋根が続き、正面遠くにはギリシャであるカステロリゾ島(メイス島)も見える。海と空、それぞれが異なる青さで輝き、下から吹き上げてくる海風に吹かれながら、いつまでも眺めていたくなる景色だった。

昨日のオリュデニズと同様に、海沿いのトレッキングは開放感があって良い。時間があれば、さらに街から街へと繋いで何日も歩いてみたいトレイルだ。

断崖絶壁からの眺め

 

青の洞窟

2016年6月8日(世界一周57日目)

翌日、カシュからフェリーでギリシャのカステロリゾ島へ渡った。全長500kmにも及ぶリキアン・ウェイのルートの中から、カシュ近郊を訪問場所に選んだ理由の一つがこの島にある。

潮風に吹かれること30分ほどで、トルコとは異なるパステルカラーの建物が見えてくる。港に面して可愛らしいレストランが建ち並ぶこの島は、ちょっとしたリゾートアイランドで、多くの人は日帰りでトルコから遊びに来る。

パステルカラーの建物が並ぶカステロリゾ島

 

フェリーが港に着岸し、僕らもギリシャの離島に足を踏み入れると、よく日焼けした親父が「ケーブ?」と声を掛けてきた。ケーブとは、この島の観光名所「青の洞窟」のことである。青の洞窟はイタリア・ナポリのカプリ島が有名だが、ここは知る人ぞ知るスポットとなっている。

親父のボートに揺られること15分で青の洞窟へ。そこは、海の青とも、空の青とも、氷の青とも違う、深く透き通った神秘的な青が広がる場所だった。とても明るく、まるで海の底が発光しているかのようだった。

トレッキングと組み合わせて、こんな場所を楽しめるのもリキアン・ウェイの魅力だ。洞窟の後は、少し奮発して、海沿いのレストランで食事をとった。

神秘的な青の洞窟

 

海と共に歩くことができるロングトレイル

リキアン・ウェイは、フェティエからアンタルヤまで続く、およそ500kmのロングトレイルです。全行程をスルーハイクすると3週間から1か月ほどかかるため、旅行と組み合わせてトレイルを楽しむ場合は、部分的に歩くのをおすすめします。

リキアン・ウエイは街から街へトレイルが繋がっているため、どこからどこまで歩くかは自由に選択できます。眺望を楽しむか、遺跡を楽しむか、ビーチを楽しむか、それぞれの好みに合わせてアレンジできるのも魅力です。

トルコ、リキアン・ウェイでのトレッキングに関する準備やアクセス、ルート、気候や装備については、トレイルトラベラーズのブログにもまとめていますので、よろしければご覧ください。

トルコの大衆食堂ロカンタにて

 

プロフィール

Trail Travelers 山野尚大・優子

山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
【ブログ】
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トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」

旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。

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