紅葉の季節に岳沢から前穂高岳に登る。美しい渓谷で過ごした2日間【紅葉レポート】

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読者レポーターより登山レポをお届けします。させよしさんは岳沢(だけさわ)小屋に1泊し、北アルプス・前穂高岳(まえほたかだけ、3090m)へ。

文・写真=させよし

1日目:上高地~岳沢小屋

10月13日はスポーツの日で祝日ということで連休を利用して穂高連峰の前穂高岳に行ってきました。

新宿発・上高地着が12時ごろのバスで上高地入りしたのですが、交通事情や渋滞により1時間遅れでスタートとなりました。河童橋周辺を含めて大変なにぎわいとなっていて、上高地の人気の高さを思い知りました。海外の人が多かったように感じました。

河童橋を渡って木道をしばらく行った先で、脇にそれたところに岳沢登山口があります。木道とメンテナンスの行き届いた登山道をゆっくりゆっくりと上がっていくと、岳沢の谷筋に出ます。

すでにそこでは紅葉がはっきりと出ていて、緑と黄色の山肌にところどころ赤みが混じったパッチワークのような景色を見ることができました。登山道から木漏れ日を透かして見る紅葉が美しかったです。

木漏れ日を透かして見る紅葉
木漏れ日を透かして見る紅葉

岳沢小屋までは3時間かかりませんでした。こじんまりとした3棟ほどの小屋ですが、きれいに掃除が行き届き、とても過ごしやすかったです。

岳沢小屋のテラスから見下ろせば岳沢カールが真っ黄色に色づき、遠くに焼岳(やけだけ)を望むことができました。見上げれば前穂に至る道が赤と黄色に染まっていることが見て取れます。有名なかわいいベンチを見ることもできました。 

岳沢テラスから見る紅葉
岳沢テラスから見る紅葉

2日目:岳沢小屋~重太郎新道~前穂高岳~重太郎新道~上高地

翌日、早朝5時7分に小屋を発ちました。

黎明、ゆっくりと傾斜の厳しい重太郎新道(じゅうたろうしんどう)を登りながら、時折息をついて見下ろしてみれば、よりはっきりと、黄色い木々が渓谷を流れるように彩りを加えていました。 

重太郎新道 登山道からみる紅葉と渓谷
登山道から見る紅葉と渓谷

あと2週間も過ぎれば霜月となり、この光景も終わって雪に覆われるのでしょう。そんなことを思いながら、切り立った岩稜に這う鎖をつかみつつ登っていきました。

カモシカの立場、ライチョウ広場を越えて紀美子平(きみこだいら)まで2時間半程度でした。

道中はハシゴあり鎖あり、切れ落ちた岩稜を横目に進むことになります。岩場に慣れておくことが大事なコースだと思います。 

紀美子平で一服。奥穂に向かう吊尾根を横目に前穂山頂へ向かいます。

紀美子平より
紀美子平より

ここからの道は一層険しく、岩と岩の間をよじ登りすり抜けて登ることになりました。ザックをデポして登る人も多かったです。

8時過ぎ、前穂高岳山頂に着きました。山頂は静かで、厳しいと思っていた風もなく、かえって暖かいほどでした。

ガスで山頂からの景色は期待できないのではないかと思っていたのですが、山頂は晴れ渡り、見回せば間近に奥穂高岳をはじめ、すべての稜線を目でたどることができ、遠くに富士の姿まで見渡すことができました。山頂の奥に歩いていくと、涸沢を見下ろすことができました。

前穂高岳山頂から涸沢を見下ろす
山頂から涸沢を見下ろす

親しみのある涸沢も美しく紅葉し、そろそろ冬が近いのだなと知ることができました。今回の山行では今まで見た紅葉のうち最も美しい渓谷の姿でした。天気にも恵まれた充実した2日間を過ごすことができました。

(山行日程=2025年10月12~13日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:1泊2日
コースタイム:【1日目】2時間30分
【2日目】7時間50分
行程:【1日目】
上高地バスターミナル・・・河童橋・・・風穴・・・岳沢小屋
【2日目】
岳沢小屋・・・岳沢パノラマ・・・紀美子平・・・前穂高岳・・・紀美子平・・・岳沢パノラマ・・・岳沢小屋・・・風穴・・・河童橋・・・上高地バスターミナル
総歩行距離:約11,700m
累積標高差:上り 約1,650m 下り 約1,650m
コース定数:40
させよし(読者レポーター)

させよし(読者レポーター)

2017年の誕生日に思い立って登山を始めて、ゆるく関東近郊から北アルプス周辺までの登山を楽しんでいます。山のアクティビティ全般が好きなので、最近は仕事でなければ山に向かう日々です。

この記事に登場する山

長野県 / 飛騨山脈南部

前穂高岳 標高 3,090m

 前穂高岳は南北に連なる穂高連峰の主稜線から奥穂高岳で分岐し、東に延びる吊尾根でつながっている頂。全体から見れば集団よりちょっと東にずれた岩峰で、南は明神岳の岩峰を起こして上高地へすっぱりと切れ落ち、北は北尾根を起伏させながら屏風岩で横尾谷に接している。北西は涸沢カールが見事に削り取った岩壁で、北尾根や前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳が半円を描いて涸沢カールを抱きかかえているように見える。  前穂高岳を北穂高岳から眺めると山頂部が3つの頭に分かれ、その先大きく起伏しながら屏風ノ頭へ高度を下げていく北尾根が見事である。上部からⅠ峰、Ⅱ峰、Ⅲ峰……と数えてⅧ峰まである。この北尾根はⅠ峰からⅤ峰までを上半部、Ⅵ峰からⅧ峰までを下半部と分け、初級のバリエーション・ルートになっている。ことに上半部は岩登りの感触が楽しめるので人気ルートとなっている。  前穂高岳は、穂高連峰の中で唯一の長野県だけの山で、上高地から岳沢経由で直接登れるので人気がある。またこの山の魅力は穂高の主稜線から1行ずれているために、穂高連峰から槍ヶ岳への大展望が楽しめるという点にあるだろう。  さらに、北穂高岳の滝谷と肩を並べるほどのロッククライミングのゲレンデでもある。井上靖の名作『氷壁』の中で、物語の初めに、魚津恭太と小坂乙彦が厳冬の前穂高岳東壁で墜落事故を起こし、ナイロンザイルが切れるアクシデントに見舞われるシーンは、実際に起きた事故をモデルにしている。「ナイロンザイル切断事件」として社会問題になったほどだ。  前穂高岳の東側にある奥又白谷の奥又白池が登攀基地になる。頂上直下の東壁もすばらしいが、北尾根Ⅳ峰のフェースもまた見事である。明大ルート、松高ルート、新村ルート、甲南ルートなど、パイオニアたちの名をつけた、さまざまな登攀ルートは、山男の血を躍らせてくれる。  涸沢側ではⅢ峰フェースが登攀対象で、末端の屏風岩もクライマーの世界だ。屏風岩の登攀ベースは横尾谷で、第1ルンゼ、第2ルンゼや東壁、中央壁、中央カンテ、慶応稜など、ブッシュ混じりながら標高差700mというスケールはダイナミックだ。  しかし、前穂高岳そのものは一般向の山で、上高地から岳沢を通り、一気に頂上へ登る岳沢コースは途中に岳沢小屋(岳沢ヒュッテは2006年の雪崩で崩壊、2010年夏に岳沢小屋が新規に開業予定)があり、6時間30分で頂上に立てる。また穂高岳山荘からは奥穂高岳、吊尾根を通って2時間30分である。  なお、明神岳には一般登山道はない。

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