奥多摩の名山に登り、自転車で青梅街道を快走!道草を楽しむハイク&バイク旅【ルポ・チャリ登】
川苔山へいざ!
少し進むと、ようやく川苔山登山口が現れたのでした。カスク(ヘルメット)をバックパックに入れ、輪行バックに自転車を入れていると、バスがやってきました。6人ほどの登山者が降りてきて、次々にゲートを越え登山道に消えていくのでした。私は、自転車を看板に地球ロックすると、一番最後に登山道へと進みました。
ゲート付近はアスファルトの道で、林道川乗線でした。杉林に囲まれた道を登っていきます。元々はきっと伐採した木を運ぶ道だったのかなと思いつつ、歩いていきます。しばらく歩くと看板が出ていて、登山道への入口がありました。道路はさらに山へと延びていました。入り口から登山道に進むとすぐに苔むした渓流が現われ、ここが東京であることを忘れてしまいます。山形の面白山(おもしろやま)エリアにも似た森はどこか親しみがわいてきます。
百尋ノ滝から山頂へ
山頂の標識や道中の案内標板には「川苔山」「川苔谷」と表記されたり、バス停は川乗山だったりと、なにやらややこしい感じです。じつは、このややこしさには原因があるようなのです。以前、国土地理院の地形図で川乗山と誤記されていたことがあるそうで、この誤記は平成8年発行の地形図より「川苔山」「川苔谷」と修正されたとか。正式には川苔山・川苔谷なんですね。あらためて直すのも経費もかかりますしね。
苔むした沢沿いに登山道があります。この登山道を進んでいくと、多くの石積みを見かけることが増えてきます。集落があったのでしょうか、道の脇に石積みがあったり、砂防ダムの代わりなのか、細い谷間に石が積まれて、水が流れています。日差しが入ると、なんとも美しい眺めです。秋には周囲の森に先立ち、沢沿いが先に紅葉するさまが見れるのだろうと想像しながら歩くのもけっこう楽しいものですね。
「尋」はその昔、日本で用いられた長さの単位だそうで、現在のメートル法では約1.8mくらいだそうです。そう考えると「百尋」とは181.8mとなるのですが、百尋の滝の実寸は約40mほどだそうです。「百尋」と聞いて、なにか人に関するストーリーがあるのかなと思っていたのですけどね。「尋」の漢字を見て長さの単位と聞いてもピンと来なかったのですが、そういえば磯釣りでは、深さを表すのに「ひとひろ」「ふたひろ」と呼んでいます。漢字にすると「尋」だったのですね。
登山道の脇にある百尋ノ滝の案内板付近には、追悼碑がひっそりと建てられていました。手を合わせ、登山道を進んでいきます。
この滝から一気に急な登りに変わっていきます。下を向きつつひたすら登り、スイッチバックを上がっていきます。なかなかの急登でした。分岐で東の肩方向へ進み、さらに登っていきます。分岐からの登りを終えると、川苔山への表示があり、さらに一気に登ると山頂には真新しい山頂碑が立っていたのでした。天候がよければ奥多摩の山々の美しい山容が広がっていたそうです。残念ながらこの日は霧雨。ほとんど視界がなかったのでした。さて、さて。
出発するころ、途中で先行させてもらったご家族に再会。話を聞くと川苔山はかなり人気の山で、普段は登山客が多いそうです。今日は平日で天候もあまりよくないので、少ないのではとのこと。なるほどとうなずき、登っていたばかりの急登を一気に下っていくのでした。
帰りもあまり天候が回復せず。標高を下げ始めても太陽が現われることはありませんでした。こんな日もありますね。
登山口まで着くと、少し霧雨が強くなってきたので、急いで自転車を組み立て軽いアップダウンを越え、奥多摩駅方向へと戻っていきました。
プロフィール
斉藤正史(さいとうまさふみ)
1973年、山形県新庄市出身。ロングトレイルハイカー。
2005年に、アパラチアン・トレイル(AT)を踏破。2012年にパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)を踏破。2013年にコンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)踏破し、ロングトレイルの「トリプルクラウン」を達成した。日本国内でロングトレイル文化の普及に努め、地元山形県にロングトレイルを整備するための活動も行なっている。
自転車 × 登山
自転車と登山を組み合わせると、クルマや公共交通機関とはひと味違った風景が見えてきます。自転車のサドルにまたがって、あの山めざしてペダルを踏めば、新しい楽しみに出合えます。
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