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登山靴のプロに聞く! 自分でできる、靴を長持ちさせるお手入れ法

登山道具の買い方・選び方、ショップのスタッフに聞きました!
道具・装備 2018年11月15日

これまで「長く使うための修理のタイミング」、「耐用年数と修理の現場」を登山靴のプロに教えてもらったが、安全な登山を楽しむ道具としての登山靴に、自分でできることは? 最終回は、長く愛用したくなる靴選びのポイントと、セルフメンテナンスについて聞いてみた。

取材/文/構成 辻 歌

 

 

株式会社ICI石井スポーツの本社内にある製靴工場(登山靴技術研究所)


登山靴選びは、とことんフィット感を追求してほしい

ライターT: これまでは登山靴の修理について伺ってきましたが、そもそも買うときに気をつけたほうがいいポイントがあれば教えてください。

中さん: なにはともあれ、自分の足にフィットしたものを! となります。登山靴は、あまり頻繁に買うものではありませんから、わからないことも多いかと思いますが、その点についてはお店のスタッフに相談して、実際に店頭で履いて歩いてみて、フィットするものを選ぶというのが基本中の基本となります。買ってみて、どうしても痛みを感じるようなら、遠慮なく当たり出しの相談をしてみてください。

ライターT: 足に合っていないと、結局履かなくなりますからね。ほかにありますか?

中さん: 素材で言うなら、昔ながらのオールレザーの登山靴は、耐久性がいいです。きちんと手入れしてあげると長持ちするのが天然皮革の良さです。実際、40年くらい大切に履いている靴を直したこともありますよ。

オールレザーの登山靴は、何度も修理を繰り返して長年愛用する人が多い。かなり年季の入った靴の修理を行うこともある

 

使用後は乾かして、お手入れは防水スプレー

ライターT: 登山靴を長く使うためにも、自分でできるお手入れの方法について教えてください。

中さん: レザー靴であれば、クリームやオイルを塗ることが絶対に必要です。ただ、最近のものは、レザーでも化学繊維(以下、化繊)とのミックスが多いでしょ? そうしたタイプの場合は、全体に防水スプレーをかけるくらいでいいと思っています。もちろん、レザーにはオイルを塗った方がいいのですが、オイルを塗ると化繊で機能性を持たせている空気の通り道を防いでしまうので、おすすめはできません。
クラシックなレザー靴ならクリームやオイルを塗る、レザーと化繊のミックス素材のものは保革成分が入った防水スプレー、ナイロンとか合成皮革の場合は普通の防水スプレーをしておくといいです。

「登山靴のプロ」中工場長


ライターT: なるほど、防水スプレーだけならお手入れもラクですね。

中さん: あとは、靴は使った後にしっかり乾かすことが大事です。最近の主流となるライニング(表面処理)はGORE-TEXなどの防水素材で、縫い目にはフルシーム加工を施しているタイプです。基本的に内部には水が入らない構造ですが、防水素材の手前までは水が浸入するわけです。表面が乾いているからといって安心していると、内部にカビが生えてくることがあります。

ライターT: 使用後は、中までしっかり乾かすことですね。

中さん: そう、もちろん中敷きは抜いて乾かしてください。また、本体と中敷きの間に砂が入ってしまい、その中に尖った石のかけらなどがあると防水膜を傷つけることがあります。そうすると防水性が損なわれてしまうので、登山から帰ってきたら必ず中敷きを抜いて、砂を払って、乾かしましょう。ちょっとしたひと手間で“持ち”が違ってきますよ。

ライターT: ほかに気をつけることはありますか?

中さん: 乾かすときは、風通しがある程度いい日陰で干してください。絶対にダメなのは直射日光です。速く乾かすためといっても、日当たりのいい外に置いておく乾かし方はアウトです。真夏の太陽にさらされると、それだけでソールの剥離が起きる可能性もあります。なにせ、今の靴は高温に弱いですからね。

 

工場内は、靴にも人にも快適な湿度に整えられている

 

湿気は大敵! 保管場所のおすすめを伝授

ライターT: 雨の日に登山すれば、靴が泥だれけになっていることがありますよね。こういうときは、どうしたら良いでしょうか?

中さん: 登山靴は丈夫なので、乾いてから専用ブラシで「ブワーッ」と泥を飛ばすだけでもいいですよ。

ライターT: 水で洗うのはダメですか?

中さん: レザーを使っている靴の場合は、おすすめしません。レザーは水を完全に吸ってしまうと、変形が起きてしまいます。水に濡らして絞ったウエス(布)を用意して、そのウエスに靴についた汚れを移すのが、いちばんリスクが少ない方法です。レザー以外の素材でも、水で洗ってしまうと内部には水がたっぷり溜まってしまいます。そこからしっかり乾かすのは大変ですので、水洗いはあまりおすすめしません。

靴を構造を研究するために、切断して確認することもある


ライターT: おすすめの保管方法を教えてください。

中さん: もし許されるなら、リビングに置いておくのがベストです。リビングって、心地良い湿度とか、家で一番快適な環境じゃないですか。とはいえ、リビングに登山靴があるのはちょっと・・・という意見もあると思うので(笑)。
絶えず風が通る場所はよくありませんが、ある程度空気の循環があって、湿気が少ない状態のところであれば大丈夫です。あとはホコリ除けに布切れを1枚かけるなど、それ程度のケアでいいと思います。扉付きの下駄箱の中や、購入時の箱に入たまま積んでおくのは好ましくないですよ。

 

「靴は、命に直結しているもの」という思い

中さんの作業場。確実な修理を行うために、道具の手入れも怠らない


中さん: 面倒な手入れをしないといけない・・・というより、伝えたいのは「靴に興味を持ってほしい」ということ。興味を持っていれば、なんらかの変化に気づくし、ちょっとくらい手入れもするでしょうから。

ライターT: 靴に愛着をもって接してれば、急なトラブルも少なく、登山がもっと安全に楽しめる気がしますね。

中さん: 「靴は、命に直結しているもの」という思いは、工場のスタッフが共通して持っています。だから、安心してお客様に渡せる状態に修理しています。

ライターT: 中さんたちの熱い思いが、ずっと「登山靴技術研究所」では受け継がれているのですね。

中さん: 入社以来40年以上、この道一筋です。靴の技術をどこかで学んだ訳ではなく、ここで全てを学びました。連綿と続くこの工場の思いと技術を、先輩たちに教えてもらって、後輩に引き継いで。だから私は「靴のプロ」ではなく「登山靴のプロ」。自分の靴をいつも大切にしていても、困ったことがあればいつでも「登山靴のプロ」に頼ってくださいね。

中さんが石井スポーツの門を叩くきっかけとなったという、約40年前のカタログの1ページ。ここから靴への興味が始まったという

登山靴 メンテナンス用品
教えてくれた人

中 真人

Mt.石井スポーツの本社内にある製靴工場(登山靴技術研究所)の工場長。学生時代、石井スポーツが発行した山道具カタログに載っていた同工場の記事を見て入社を決意。以来約42年間、登山靴職人として製造と修理を手がける「登山靴のプロ」。

Mt.石井スポーツ 製靴工場

「Mt.石井スポーツ」オリジナルのハンドメイド靴の製作と、登山靴の修理を行う、通称「登山靴技術研究所」。店舗へ出張しての「登山靴相談会」を不定期で開催している。
Mt.石井スポーツ

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