室生山地最高峰の倶留尊山で晩秋を堪能、枯野にススキの穂が輝く曽爾高原、池ノ平の絶景

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紅葉もすっかり終了し、広葉樹の樹木は落葉して山は寂しげな風景となる晩秋――。緑の草原だった場所は、すっかり枯野となってしまうが、この枯野が広がる風景もまた趣がある。三重県と奈良県の県境にそびえる倶留尊山は、ススキの穂が黄金色に輝き、晩秋の風情が楽しめる。

 

今回紹介するのは、三重県と奈良県の県境に延びる、室生山地の最高峰の倶留尊山。読み方は「くるそやま」で、日本三百名山の1つにも数えられれている山だ。火山活動によってできたという地形は、東側(三重県側)は断崖絶壁、西側(奈良県側)は緩やかな高原が広がるという特異な地形を形成している。

奈良県側の緩やかな斜面は曽爾高原と呼ばれる場所で、室生赤目青山国定公園に指定されている緑の草原が広がる自然豊かな場所として知られている。

美しい緑の草原の時期も良いが、晩秋の枯野が広がる頃も趣がある。そんな晩秋の倶留尊山を、急峻な三重県側から周回するルートのレポートを、週刊ヤマケイから紹介する。

 

ススキの穂が輝く池ノ平から室生山地最高峰を目指す

倶留尊山は室生山地の中心に位置し室生山地の最高峰です。三重県側には池の平、奈良県側には曽爾(そに)高原があり、11月下旬の時期はススキの穂が黄金色に輝き、晩秋の風情が楽しめるところです。この日、2017年11月25日は穏やかな天候に恵まれましたが、昨夜の冷え込みで山道には霜柱が立っていました。

ススキの穂が揺れる池ノ平から見る大洞山(写真=金丸勝実)


この山域は、倶留尊山を経由する曽爾高原からの登山、または池ノ平を組み入れた周回ルートがお勧めです。いずれも歩行距離が約6km、所要時間が約4時間弱のコンパクトな周回が楽しめます。三重県側からは池ノ平、奈良県側は曽爾高原が基点となり、今回は三重県側の池ノ平から周回しました。

 

池の平から亀山峠に登ると、眼下にススキ野原が広がる曽爾高原が一望できます。この時季は野焼きの前で、稜線に沿って幅が5mほどの防火帯が造られていました。野焼きが行われると一面が真っ黒になります。

県境稜線から見下ろす、枯野が広がる様子が独特な曽爾高原(写真=金丸勝実)


ルートは稜線に沿って左手に曽爾高原を見ながら登り、最初のピークが「二本ボソ」になります。展望の良いところで、倶留尊山、池ノ平越しに大洞山、尼ケ岳が見えます。なお、この山域は私有地なので料金徴収所があり、大人は一人500円です。

倶留尊山へは稜線に沿っていったん鞍部まで下り登り返します。稜線の東側は断崖になっているので注意が必要です。山頂に到着すると多くの登山者で賑わっていました。紅葉はすでに終わり、華やぎはありませんが、郷愁を誘う晩秋の風景の楽しめるのが低山歩きのよいところです。

下山は稜線を西浦峠まで進み、東に下って東海自然歩道に合流します。途中に展望のより三ツ岩があるのでぜひとも立ち寄ってほしいところです。

 

プロフィール

金丸勝実

1956年三重県鈴鹿市生まれ。教育者、登山家、山岳ライター。90年代から本格的に鈴鹿や台高の山を歩きはじめ、花を中心に撮影活動をするかたわら、ガイドブックや山岳雑誌の執筆を続けている。
ホームページ「歩人倶楽部」やSNSで、山や花に関する情報を提供している。
⇒歩人倶楽部

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