スカルパ「登山靴」のユーザー人気は「トリオレ プロ」、どこが魅力?
スカルパの「登山靴」でヤマケイオンラインのユーザーに人気の商品は何だろうか。投稿コーナー「みんなの山道具」からユーザーの声をピックアップし、その製品について、さかいやスポーツ 斎藤さんに解説してもらった。
取材/文=吉澤 英晃
監修=さかいやスポーツ 斎藤 勇一
トリオレ プロ GTX|堅牢かつコスパよしのアルパインブーツ
「スカルパ」はイタリアにある登山靴のトップメーカー。そのなかで「みんなの山道具」で投稿数の多いモデルが、北アルプスや南アルプスなどの岩稜帯で活躍するアルパインブーツである「トリオレ プロ GTX(TRIOLET PRO GTX)」です。
「トリオレ プロ GTXはスカルパの中核をなす代表モデルと言えます。岩場に強いのはもちろんですが、コストパフォーマンスに優れ、足幅が広めなので日本人の足に合いやすい点も特徴です」(さかいやスポーツ斎藤さん)
「みんなの山道具」の投稿数の多さからも、スカルパを代表する登山靴であることが伺えます。価格に注目してみると、多くのアルパインブーツが40,000円以上なのに対して、トリオレ プロ GTXは税込で3,7800円。これは確かにコストパフォーマンスが高いと言えますね。さらに足幅は日本人の足に合いやすとのこと。自分の足に合うかどうかは登山靴を選ぶ上で重要なポイントですよね。
「日本人向けに開発されたオリジナルの足型を使っているため、足幅は広めです。しかしソールの形状はクライミングを意識して内側に湾曲しているので、小指が靴の中で当たって痛みを感じてしまう人もいるかもしれません」(同)
単純に足幅が広めといっても、ソールの形状やアッパーの素材によって履き心地は大きく変わってしまいます。商品説明や見た目だけでは判断が難しいので、やはり登山靴を選ぶ時は試し履きを行うといいでしょう。
登る山がいつも岩稜帯とは限りません。アルパインブーツは一般的なトレッキングを楽しむ人には向いているのでしょうか?
「もちろん岩稜帯向きの登山靴なのですが、例えば荷物の多い縦走登山などにもオススメできます。ソールが硬いので、地面からの突き上げによる疲労や、不安定な路面からくる体のフラつきを軽減してくれます。そのため重装備で長距離をゆっくり歩くのにも適した登山靴でもあるのです」(同)
これならテント泊を考えている人なども検討してみる価値は大いにありますね。ちなみに、このシューズはアイゼンを装着することが可能です。冬山で履いても問題ないのでしょうか?
「基本的には6~10月中旬の無積雪期使用で、場合によっては雪渓などの雪が出てくるシーンを想定しています。しかし、登山に慣れている人は4~5月の残雪期に低山の雪山をこの靴で楽しむ人もいます」(同)
積極的な冬山での使用は避けたほうがよいですが、経験を積めばこの靴が活躍できる時期の範囲を広げることができそうですね。
製品情報
トリオレ プロ GTX
- 価格
- 35,000円(税別)
- サイズ
- #39~#47(24.9cm~29.7cm)
- 重量
- 約880g(片足、#42)
トリオレ プロ GTX WMN
- 価格
- 35,000円(税別)
- サイズ
- #36~#42(23.1cm~26.7cm)
- 重量
- 約720g(片足、#38)
クリスタロ GTX|トレッキングブーツと侮ることなかれ
スカルパの中でトリオレ プロ GTXに次いで「みんなの山道具」で投稿数の多いモデルが「クリスタロ GTX(CRISTALLO GTX)」。一見するとトリオレ プロ GTXに似ていますが、この靴はスカルパの登山靴の中でどのようなポジションなのでしょうか?
「アッパーの素材やソールの仕様を変更することで価格を抑えたモデルがクリスタロ GTXです」(さかいやスポーツ斎藤さん)
トリオレ プロ GTXと見比べると、アッパーの素材にナイロンを使用している面積が多いことが分かります。このような細かい変更によって可能になった販売価格は税込でなんと27,000円。これは安い。さらに説明は続きます。
「メーカーではトレッキングブーツと呼んでいますが、ソールの硬さはトリオレ プロ GTXに代表されるアルパインブーツとほぼ一緒です。岩稜帯に向いていますし、荷物が重くなりがちな縦走登山やテント泊山行などにもオススメできます」(同)
高所登山用にアルパインブーツが欲しいけど高価で手が出せないという人は、ぜひ検討したいモデルといえますね。
これだけ性能が似ていると、単純に価格で比較してトリオレ プロ GTXよりもクリスタロ GTXの方が優れているように思えるのですが、他に違いはあるのでしょうか?
「クリスタロ GTXにはアイゼンを装着するコバ(ワンタッチアイゼンやセミワンタッチアイゼンを装着する時に必要な、つま先とカカトに施される溝)がありません。その為、クリスタロ GTXを購入する人には、冬と春から秋の季節で登山靴を履き分けている人が多いです」(同)
残雪期の雪山も想定範囲に含めるとトリオレ プロ GTXが候補に挙がります。しかし、シーズンによって登山靴を使い分けできる人にとっては、非常にコストパフォーマンスがいい登山靴がクリスタロ GTXといえそうです。
製品情報
クリスタロ GTX
- 価格
- 25,000円(税別)
- サイズ
- #39~#48(24.9cm~30.3cm)
- 重量
- 約800g(片足、#42)
クリスタロ GTX WMN
- 価格
- 25,000円(税別)
- サイズ
- #36~#42(23.1cm~26.7cm)
- 重量
- 約650g(片足、#38)
モンブランプロ GTX|冬山入門にもおすすめの定番モデル
スカルパが展開するウィンターブーツである「モンブランプロ GTX(MONT BLANC PRO GTX)」。このモデルの基になった登山靴が「モンブラン GTX」です。
「モンブラン GTXの足指周りがゆったりしていたのに対して、フィット感と剛性を向上させたのがモンブランプロ GTXになります。さらにゲイターを付けることで保温性も確保できるように進化しました。2019年の冬にフルモデルチェンジを予定しています」(さかいやスポーツ斎藤さん)
ゲイター付きのデザインは一見するとエキスパート向けの登山靴に思えるのですが、どのような人にオススメなのでしょうか?
「ゲイターとタンにはストレッチ性のあるゴアテックス素材が使われているため、足首周りが非常に柔らかいのも特徴の一つです。最近では冬山登山を始めたいという人の中で、ソールの柔らかいトレッキングシューズしか履いたことがないという方が増えています。ソールが硬く足首周りがしっかりした登山靴を履くと、歩き方や歩幅が変わってくるのですが、そのような歩き方に慣れていない人には、足首周りの柔らかいモンブランプロ GTXのような靴が履きやすいと思います」(同)
見た目によらず、冬山入門者にもオススメとのこと。その柔らかさと歩きやすさは、是非一度足を入れて試して頂きたいポイントです。さらに、足を蹴り出す、段差に立ち込む時などに足指が動く人には、フィット感の高い靴を履くことによって、靴の中での足のズレを抑えることができるそうです。
初級者にもオススメできるウィンターブーツということは分かりました。では、対応できる冬山のレベルはどうでしょうか?
「ウィンターブーツと言っても、寒さを防ぐために使われている素材は断熱材だけです。厳冬期の高山を登る場合は、さらにしっかりとした保温性のある登山靴を検討したほうがいいかもしれませんね」(同)
とは言え、厳冬期を除けば2000m級以上の山でも充分活躍可能。大半の冬山は充分楽しむことができそうですね。
製品情報
モンブランプロ GTX
- 価格
- 53,000円(税別)
- サイズ
- #39~#48(24.9cm~30.3cm)
- 重量
- 約910g(片足、#42)
モンブランプロ GTX WMN
- 価格
- 53,000円(税別)
- サイズ
- #37~#43(23.7cm~27.3cm)
- 重量
- 約780g(片足、#38)
※掲載した情報は、2019年1月現在のものです
「みんなの山道具」ユーザーのおすすめ度調査
ヤマケイオンラインのユーザーが実際に使っている登山用品を投稿するコーナー「みんなの山道具」。この記事ではユーザー投稿を登山ブランドごとにピックアップし、人気順(投稿数順)にギアをまとめた。