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ヨーロッパでいち早く夏山シーズンを迎えるピレネー山脈、「ブレッシュ・ド・ローランの峠越え」へ

世界の山旅・絶景への誘い
ガイド・記録 2019年02月21日

ヨーロッパの山と聞けばアルプスが有名だが、スペインとフランスの国境にそびえるピレネー山脈の魅力は、優るとも劣らない。標高は3000mを越え、長さは約450kmにも及ぶピレネー山脈の魅力のポイントを余すことなく伝える。

 

これがピレネー山脈トレッキングで随一の人気の、大岸壁の裂け目「ブレッシュド・ローラン」。峠越えのハイライトシーンの1つだ


フランスとスペインの国境沿いに、東西約450kmに渡って標高1000mから3000mクラスの山々が連なっている場所、それがピレネー山脈です。

フランス側、スペイン側ともに、氷河によって形作られた雄大なU字谷や雪や氷河を頂いた山々が多様な自然環境や美しい景観を形作っていて、一年を通して多くのアウトドア愛好家を魅了する、ヨーロッパでも有数のネイチャースポットになっています。今回から数回にわけて、このピレネー山脈のハイキングやトレッキングの魅力をお伝えします。

ピレネー山脈は、ヨーロッパ・アルプスと比較すると低緯度に位置していて平均標高も低いことから、夏山の山麓ハイキングのシーズンは、アルプスより一足早い6月上旬頃から始まります。

今回は、夏場の数あるトレッキングルートの中で、最も人気の高いコースの一つでもある徒歩による国境の峠越えコースを紹介します。

 

ピレネー山脈を徒歩で横断するブレッシュ・ド・ローランの峠越え

ピレネー山脈のトレッキングのなかで、不動の人気を誇るのが、フレンチ・ピレネーの、ガヴァルニー圏谷とスペイン・ピレネーのオルデサ渓谷を結ぶ、「ブレッシュ・ド・ローラン(ローランの裂け目/2,807m)の峠越え」のコースになります。なお、ベストシーズンは7月から8月にかけてとなります。

ガヴァルニー圏谷、そしてオルデサ渓谷とも、世界遺産に指定された巨大なU字谷です。この2つの谷の源頭部の国境稜線上には、冒頭の写真で紹介したように、まるで巨人が剣でたたき割ったかのような裂け目が岸壁にあり、夏の間には多くのトレッカーがこの峠を越えて行きます。

フランス側のガヴァルニーからの眺望。眼の前には国境の稜線が広がる

 

ガヴァルニー溪谷を詰め、大岸壁の裂け目へ

それでは本コースをダイジェストで紹介していきます。峠越えのトレッキングは、フランス側のガヴァルニーから出発し、峠越えののち、スペイン側に建つ山小屋ゴリッツ小屋に1泊してから、翌日オルデサ溪谷に下って行く1泊2日のパターンが一般的です。

まずは、ガヴァルニー溪谷の草原や森の緑や、雪解け水が流れる清流に癒やされながら標高を徐々に上げていきます。すると、まるで円形劇場のような大岸壁が広がります。山の上から白糸が垂れるように見える、いつくもの滝が目に入り圧倒されることでしょう。

巨大な岸壁が円形劇場のように広がるガバルニー大圏谷


そして、岸壁に付けられたつづら折りの斜面を登るとそれまでの景色とは一変し、岩や残雪が織りなす、モノトーンの高山の景色となります。さらにぐんぐんと高度を上げながら、やがてブレッシュ・ド・ローランの峠に差し掛かる頃には、真夏でもあたり一面が雪に覆われてきます。路面のコンディションによっては、軽アイゼンなどが必要になってきます。

峠に向かって伸びる、雪面のトレースを辿り、両側の大岸壁を仰ぎ見ながら、がれ場を登ると、そこがブレッシュ・ド・ローランの峠になります。

峠からは、これまでたどってきたフランス側の雄大な景色だけでなく、初めて目にするスペイン側の景色が目に飛び込んできます。峠に到着したときの、達成感と爽快感は、トレッキングで国境を越えるというこのコースならではの醍醐味といえるでしょう。

 

快適な山小屋、そしてオアシスのような景観が広がるオルデサ溪谷へ

ローランの峠を経て、スペイン側の大溪谷の源頭部に着くと1泊目の宿となる、ゴリッツ小屋が現れます。この小屋は、峠越えのトレッカーだけでなく、ピレネー山脈の名峰ペルディード山を目指す登山者が滞在する人気の山小屋です。

快適な環境を提供するゴリッツ小屋。シャワーも完備!


2018年に増築工事が一段落、ダイニングスペースや宿泊などがリニューアルし、より快適に利用できるようになったことも人気の秘密です。山小屋では、熱々のシャワーを浴び、シンプルですが美味しい山小屋料理やお酒を楽しむことができます。

スペイン人のトレッカーは話好きな方が多く、夕食時は常に賑やかです。私達日本人や外国から来たトレッカーにも気さくに話しかけてくれ、楽しい団らんになることは間違いなしでしょう。

オルデサ溪谷の谷底に向かって下る様子。広大な景色が続く


翌日は、いよいよオルデサ傾向に下って行きます。ガヴァルニーを登ったときと同じように、つづら折りの道を通って斜面を谷底に向かってぐんぐんと下ります。夏の間はオルデサ溪谷の源頭部の岸壁はレモンイエローのマメ科の花々に覆われ、まるで花の桃源郷のようになります。

オルデサ溪谷の両岸をマメ科の花が彩る。まるで桃源郷のような景色が広がる


美しい花に囲まれた場所を過ぎて、やがて谷底にたどり着くと、今までの荒涼とした景色から一変し、牛がのんびりと草をはむ牧歌的な景色が広がります。トレッキングのゴールまでは、美しい清流に沿って、爽やかなブナ林や草原の中を抜けながら歩きます。

オルデサ溪谷の谷底に広がる爽やかなブナ林


氷河谷、雪渓の峠越え、大岸壁、溪谷、森林、草原とヨーロッパのハイキングコースの中でも、わずか二日間でこれほど変化に富み、また歩いて国境を越えるというドラマ性は他のヨーロッパのトレッキングコースに類がなく、ぜひこの夏にお勧めしたいベストコースです。

海外 ガイド
教えてくれた人

北島 聡之

アルパインツアーサービス株式会社/本社営業部
学生時代はオリエンテーリングの世界大会にも出場した経験もあり地図読みのスキ ルは社内随一。
また、高山植物や樹木にも詳しく「花旅ハイキング倶楽部」のチー フリーダーとして活躍する一方、社内の30鉢を越える観葉植物の世話にも日々奔走 中。趣味は日本茶と焼き物や巡り。

アルパインツアーサービス株式会社

マッターホルン北壁の日本人初登攀を成し遂げた芳野満彦(アルパインツアー元会長)が、1969年に日本で初めてヨーロッパ・アルプスへのハイキング・ツアーを実施して以来、約半世紀にわたり、世界中の山岳辺境地の山旅を企画、実施してきた。「トレッキング」という言葉を日本に定着させた、世界の山旅のパイオニア的存在。

⇒アルパインツアーサービス

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