このエントリーをはてなブックマークに追加

アメリカを代表するロングトレイル!ジョン・ミューア・トレイル:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(14)

トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」
ガイド・記録 2019年03月19日

旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第14回目は、アメリカを代表するロングトレイルのジョンミューアトレイル(JMT)。シエラネバダ山脈の美しい景観とともに、アメリカのトレッキング文化が味わえる自由と自律のトレイル。全長210.6マイル(337km)の行程のうち約3分の1を歩いた様子をお伝えする。

 

ジョンミューアの理念を体現するアメリカの国立公園システム

2016年9月4日(世界一周145日目)

ヨーロッパ各地のトレイルを歩き周った僕らは、大西洋を渡りアメリカ・カリフォルニアへやってきた。ヨセミテ国立公園などがあるシエラネバダ山脈には数多くの美しいトレイルがあり、その中でも人気が高いのがジョンミューアトレイル(JMT)だ。北はヨセミテバレーから南はアメリカ本土最高峰のマウントホイットニーまで続く全行程210.6マイル(337km)。今回僕らはその内の約3分の1を7日間かけて歩いた。訪れたのは9月。登山口に吹く風は冷たく秋の気配が漂う。

僕らはマンモスレイクのホースシューレイク登山口からスタート


「自然保護の父」と呼ばれ、ヨセミテ国立公園等の制定を通じて、現在のアメリカの国立公園システムの基礎を作り上げたジョンミューア。彼の功績に因んで名付けられたこのトレイルは、自然保護の観点から様々なルールが定められている。トレッキングにあたってはパーミット(許可証)制が取られており、各登山口の1日あたりの入山者数が決められている。パーミットを受け取る際にはレンジャーから細かいルールの説明を受け、ハイカーは内容を理解し承諾した旨のサインをしなければスタート出来ない。しかしルールにきちんと従えば、あとは自由に自然を楽しむことができる。自由と自律のトレイルだ。

しばらく歩くとコバルトブルーに輝くマクレオドレイクへ、この景色を見て一気に気分が盛り上がった

少しずつ再生が始まっていた焼け焦げた森

 

山を歩くだけではないトレッキングの新たな魅力

2016年9月6日(世界一周147日目)

JMTのトレッキングは毎日が充実した贅沢な時間だった。特に次々に現れる湖の美しさは素晴らしい。深緑の針葉樹林とグレーの岩山、雲ひとつない青い空、そして太陽の光を受けてキラキラと眩しく光る湖面! JMTを象徴する景色だ。山を越え谷を越え、景色を楽しむ。そして暗くなる前にキャンプ適地を見つけ、その日の寝床を確保する。トレイルに売店やキャンプサイトがあるのはごく一部。必要な荷物を背負って歩き、夜は野営するスタイルだ。日々歩きたいだけ歩き、気に入った場所でキャンプを張る。そんなトレッキングを何日間も続けることができる。キャンプは、一部のエリアを除いて、ルールを守ればどこに張っても良い。

湖を眺められる丘の上にテントを張ったら夕食の準備だ。湖から水を汲み、焚き火用に枯れ枝や松ぼっくりを集める。そういうひとつひとつが何だか楽しい。水も火も全て自然の中から入手するプロセスに、自分もこの自然の中の一部なんだということを改めて気付かされる。山を歩くだけではないトレッキングの新たな魅力だ。日が暮れると急激に冷え込んでくる。焚き火にあたりながら、ゆっくりと夕食を済ませ、食後は一杯のコーヒー。頭上にはこの旅一番の満天の星が広がっていた。

浄水フィルターを使って、湖水から飲料水を作る

焚き火が楽しめるのもJMTの魅力の一つ

 

大自然と向き合える贅沢な毎日

2016年9月7日(世界一周148日目)

JMTは朝も気持ちいい。夜明けと同時にテントから這い出し、日の出を眺める。風がなく全てが静まりかえり、湖面は鏡のようで、徐々に白くなっていく空と太陽で赤く染まり始めるバナーピークを写し込んでいた。静寂から何かが生まれてくるようなものすごいエネルギー。今日も楽しいトレッキングになりそうだ。

静かな夜明けを迎えるサウザンドアイランドレイク

バナーピークが目の前に迫る、圧倒的な迫力

9月は秋の気配たっぷり、草紅葉が綺麗だった


僕らのJMTは歩き始めるまでが大変だった。枠の少ないパーミットを何とか取得し、ルールを理解し、必要な装備を準備する。予定していた登山口までのバスが無く、100km先まで人生初のヒッチハイクをしたり、アメリカの連休に重なってしまったトレッキング前日はキャンプサイトの空きがなく泊まる場所を探して街をさまよったり。この旅で一二を争うバタバタぶりだった。それでも、一歩トレイルに入れば、やっぱり来てよかった! と心から思える素晴らしさがあった。ハイカー達は自由に歩ける喜びを感じながら、ルールを守ることに誇りを持ち、トレイルには足跡しか残さない。ヨーロッパとはまた違うアメリカのトレイル文化を味わえたトレッキングだった。

大きな峠を越えて今日のキャンプ地を探して歩く

どれだけ歩いても飽きない景色

 

アメリカを代表する人気のロングトレイル

日本でもロングトレイルという言葉をたくさん耳にするようになり、JMTは日本人ハイカーもたくさん歩くようになっています。そのため、歩くために必要な情報は多くなってきてはいますが、日本とは異なるトレイル文化・ルールを理解し、必要な手続きを事前に済ませ、限られた期間で海外まで行ってトレッキングしてくることは、やはりハードルが高いことだと思います。パーミット取得の手続き一つとっても、歩き始める場所によって取得先・手続きが異なったり、トレイルヘッドが数多く存在してそれがJMTを歩くためのトレイルヘッドとして有効なのかを確認したりと、僕らもかなり手こずりました。

それでも人気が高まる一方なのは、やはりこのトレイルが持っている魅力が多くの人を惹きつけて止まないからでしょう。憧れのJMTとして、ルートを検討し、ルールを理解し、必要な装備を直前まで悩み続ける、そのプロセス自体もアメリカのロングトレイルを歩く楽しみのひとつなのだと思います。

大変だけど、その分素晴らしい経験ができるJMT。3、4日のセクションハイクであってもその魅力は十分に味わえるので、多くの人におすすめしたいトレイルです。

ジョンミューアトレイルでのトレッキングに関する準備やアクセス、ルート、気候や装備については、トレイルトラベラーズのブログにもまとめていますので、よろしければご覧ください。

ハーフドームまで来ればゴールのヨセミテはもうすぐだ
教えてくれた人

Trail Travelers 山野尚大・優子

山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
【ブログ】
http://trailtravelers.net/
【Facebook】
https://www.facebook.com/trailtravelers/
【Instagram】
https://www.instagram.com/trailtravelers/

同じテーマの記事
[総集編]独断と偏見で選ぶオススメ海外トレイルベスト3:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(20)
旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第20回目は、総集編。独断と偏見で選ぶオススメ海外トレイルベスト3をお伝えする。
タスマニアの原生地を歩く:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(19)
オーストラリア・タスアニア島――。世界自然遺産に指定されているタスマニア原生地の最深部を歩く65kmのトレッキングルート・オーバーランドトラック。毎日が見知らぬ動植物との出会いの連続だった。
南半球のトレッキング天国ニュージーランド:トレイルトラベラーズ 「世界のトレイルを巡る旅」(18)
旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第18回目は、ニュージーランド。ニュージーランド最高峰のマウントクックを望むミューラーハットルート、山岳風景と苔生すブナ林が美しいルートバーン・グリーンストーントラック、マオリ族の聖地トンガリロ・ノーザンサーキットを歩いた様子をお伝えする
嵐の大地パタゴニア:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(17)
旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第17回目は、嵐の大地とも言われる南米大陸南端の地パタゴニア。アルゼンチン側では難攻不落の尖塔セロトーレ、クライマー憧れの山フィッツロイを巡り、チリ側ではトーレス・デル・パイネ国立公園内を巡ったトレッキングの様子をお伝えする。
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

曇一時雨
明後日

曇時々晴
(日本気象協会提供:2019年9月22日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW パタゴニア キャプリーン・ミッドウェイトを刷新
パタゴニア キャプリーン・ミッドウェイトを刷新 独自の立体構造で優れた吸汗速乾性と伸縮性を備えた「キャプリーン・ミッドウェイト」。アンバサダー3人の評価にも注目!
NEW 生きるための道具選び。シチズン「プロマスター」
生きるための道具選び。シチズン「プロマスター」 すべての道具の選択基準が「生きるために役立つ」ということ。K2登頂をめざした写真家石川直樹氏が本格志向の道具選びを語る
NEW モンベル「ストームクルーザー」の秘密に迫る
モンベル「ストームクルーザー」の秘密に迫る 定番レインウェア「ストームクルーザー」。日本の登山者に向けた雨具はどのように生まれ、どう進化したのか? その秘密に迫る
NEW 丈夫で伸縮性の高い、ハイブリッドなパンツを試す
丈夫で伸縮性の高い、ハイブリッドなパンツを試す 高橋庄太郎さんの連載「山MONO語り」。今月はホグロフスの「ラグドフレックスパンツ」を、岩場もある恵庭岳でチェック!
NEW 飛騨から登る北アルプス フォトコン優秀作品発表
飛騨から登る北アルプス フォトコン優秀作品発表 2部門に554点を投稿いただいたフォトコンテスト。審査員2名が選んだ優秀作品4点ほか、受賞作品が決定!
NEW 秋山PICK UP ITEM! シリオ
秋山PICK UP ITEM! シリオ 『秋山JOY』連動企画!ストレスフリーの軽量トレッキングシューズ、シリオの「P.F.46-3」を紹介
NEW カリマー「クーガー」モニターレポート公開中
カリマー「クーガー」モニターレポート公開中 25kgの荷物を5〜6時間背負っても疲労感が少なくフィッティングの良さを実感したという、もりちかさんのレポート公開!
令和の秋、紅葉登山の季節が到来!
令和の秋、紅葉登山の季節が到来! 秋の足音が少しずつ聞こえてきました。いよいよ山が最も色づく、紅葉シーズンの到来!
NEW 山の麓に住む。大町市に移住した家族の物語
山の麓に住む。大町市に移住した家族の物語 山好きが高じて大町市に移住した2つの家族。移住の経緯や大町暮らしの魅力を聞いた。移住体験会では参加者を募集中!
NEW 山と自然を感じる2日間!丹沢 山モリ!フェス
山と自然を感じる2日間!丹沢 山モリ!フェス 10月5~6日に開催される、山とアウトドアのイベント「山モリ! フェス」。スタンプラリー、ワークショップ、自然観察ツアー...
ロープウェイで登れる百名山
ロープウェイで登れる百名山 ロープウェイやリフトなどを使って、一気に標高を稼げる百名山はいくつあるかご存知?
王道の北アルプス縦走コースを歩こう
王道の北アルプス縦走コースを歩こう 森林限界を越えた稜線に、果てしなく続く縦走路。稜線歩きの醍醐味を思う存分楽しめる、北アルプスの縦走コースを紹介。
名峰・那須岳登山へ! 個性豊かでダイナミック
名峰・那須岳登山へ! 個性豊かでダイナミック 活火山の茶臼岳、峻険な朝日岳、最高峰の三本槍岳ほか、花畑の稜線や温泉など魅力満載の那須連峰。ほかにも湿原・お花畑・温泉と...
山で便利・安心! 登山用アプリ&GPS
山で便利・安心! 登山用アプリ&GPS スマートフォンの普及で高価で手の届かなかったGPS機器が誰でも使える! 初心者向けのノウハウから裏技まで、登山アプリとス...
ツラく、キツく、長い急登の登山道を制す
ツラく、キツく、長い急登の登山道を制す 長い急登を汗水流し、気合と根性を振り絞って、延々と登った先にある素晴らしい景色と充実感を味わいたいなら、ココに決まり!
「踊っている木」、どの山に行けば見られる?
「踊っている木」、どの山に行けば見られる? 標高は2017m、日本百名山の一座として知られています。はじめての山中泊、はじめての縦走登山などにも適した山です。