エベレストを見に行こう! ヒマラヤの山々を眺めながら歩くエベレスト街道に流れる時間

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世界最高峰の山といえば、エベレスト。この山に登るのは簡単ではないものの、その頂を眺め、思いを馳せることは難しいことではない。展望台となるシャンボチェへは、日本から行けば帰路も含めると10日ほどかかるが、そこには素晴らしい絶景と、何か懐かしさを憶えるネパール独特の時間が待っている。

シャンボチェの丘から眺めるエベレスト


「エベレスト街道」という道をご存知ですか? 世界最高峰のエベレストは登山愛好家でなくても1度は見てみたいと思う山だと思います。エベレスト街道とは一般的に、ネパールのルクラ(2,840m)という村からエベレストのベースキャンプ(5,350m)までのトレイルのことを指します。

「街道」と聞くと車が行きかう道を思い浮かべる人も多いと思いますが、アスファルトの道ではなく、車両通行はできません。農道のようなトレイル上に村が点在する田舎道です。

そのエベレスト街道に世界中のトレッカーが集まる理由は、特別な登山技術を必要とせず、エベレストをはじめとするヒマラヤの山々を眺めることができるからです。

山の斜面にへばりつくように位置するルクラの空港


エベレスト街道沿いには、ナムチェバザール(3,440m)という街道最大の村があります。この村はシェルパ族を中心とした人々が暮らしており、現在も周囲の村々との交易の中心地としての役割を担っています。トレッカーはこの村まで通常、1泊2日かけ歩きます。

ナムチェは擂り鉢状に斜面にへばりつく様な形状をしており、周囲は氷雪を抱いた山々に囲まれています。初めてこの村にたどり着いたトレッカーはその景観の素晴らしさに圧倒されることでしょう。

すり鉢状の場所に広がる村、ナムチェバザール


近年はナムチェも若者を中心に発展が進んでいます。インターネットカフェや登山用品店、おいしいパン屋さんなどが建ち並び、トレッカーにとっても重要な拠点となっています。

このナムチェの裏手にシャンボチェというこんもりとした大きな丘があります。この丘に上がると世界最高峰エベレスト(8,848m)や、世界第四の高峰ローツェ(8,516m)などの世界の名峰の山岳景観を楽しむことができます。日本の最高峰の富士山は標高3,776mです。標高5,000m~8,000mの山々が連なる山容は私たち日本人にとって、この景色は訪れた人にしか分からない聖域のようなものです。

一般的にこのシャンボチェを訪れるまでかかる日数は、日本出発から帰国まで10日前後が必要です。体力の目安としては、無雪期の八ヶ岳一般ルート・山小屋泊程度の経験があれば大丈夫です。


エベレスト街道の魅力は山だけではありません。ロッジに宿泊しながら夕食前に地元のシェルパ族と触れ合う時間、古き良き日本を思わせる農村風景、時計を必要としないゆっくりとした時の流れ――、ここで過ごす時間は格別なものとなるでしょう。

★「世界の果てまでイッテQ!」でお馴染み!「天国ジジイ」貫田宗男さん」と行くエベレスト展望トレッキングとシェルパの里9日間

帰国した後に、私が思い出すネパールは“里山の情景”です。そして引き寄せられるように、また訪れたくなるのです。私が訪れる度に立ち寄るバッティ(茶屋)には、顔見知りとなった男の子がいます。初めて会った時は小さな子供だったのが、だいぶ年月がたち・・・。まもなく独り立ちし、シェルパとしてトレッカーを案内する年頃になりました。そんな思いを馳せながら過ごせるのもネパールの魅力です。

エベレスト街道沿いに暮らす子供たち
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プロフィール

寺井 信之

アルパインツアーサービス株式会社/本社営業部
30歳で大手旅行会社より登山・トレッキング専門の同社へ。体育会系でならした体力を活かし年間100日以上ツアーリーダーとして世界の山旅を案内している。
現在は各国最高峰を中心に世界中の山を担当。公私ともに「山」が中心とした生活を送る。趣味は銭湯めぐりで都内を中心に200以上の銭湯を制覇している。

アルパインツアーサービス株式会社

マッターホルン北壁の日本人初登攀を成し遂げた芳野満彦(アルパインツアー元会長)が、1969年に日本で初めてヨーロッパ・アルプスへのハイキング・ツアーを実施して以来、約半世紀にわたり、世界中の山岳辺境地の山旅を企画、実施してきた。「トレッキング」という言葉を日本に定着させた、世界の山旅のパイオニア的存在。

⇒アルパインツアーサービス

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