オレンジがかった朱色の花が鮮やかなフシグロセンノウ、花をよく見ると――
夏から秋にかけて、産地で鮮やかなオレンジがかった朱色の花を付ける花がフシグロセンノウだ。その花を詳しく観察すると、意外な発見を見ることができる。
フシグロセンノウは山地の林内に生える多年生草本だ。高山に咲く花ではなく、高山の下山後やアプローチの途中などで見られ、暗い林の中に燃えるようなオレンジがかった朱色の大きな花が目立つ。
ナデシコ科の花らしく、大きく美しい花が特徴だ。花は直径5~6cm、5弁で花弁は深く切れ込まない。蕾もかわいい姿だ。茎は直立し、草丈は50~80cmほどの大きさだ。
おもしろいのは花の内側に、もうひとつ花のような形状のものがあること。あまりに小さいので、よく見ないと気が付かないので、ぜひアップで見てみよう。
花名の由来は1つではない。センノウの花は、昔中国から伝えられたと思われる観賞用のナデシコ科の植物のことだ。花がそのセンノウに似ていて、節(茎に葉が生えている部分)がややふくらみ、紫黒っぽいことから名付けられたと言われている。また、京都の仙翁(せんのう)寺で最初に見いだされたからという説もある。
フシグロセンノウは、色々と不思議がある花なのである。植物観察のおもしろいところは、小さな発見があることだ。フシグロセンノウにも、新しい発見がまだまだありそうだ。
プロフィール
髙橋 修
自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。
髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」
山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。