登山用のファーストエイドキット。汎用性のある道具を使いこなして軽量に

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まりまりさんからの質問!

質問:ファーストエイドキット、あれもこれも必要!?と、ドンドン医療セットが増え、いつもかさばりがちです。どんなセットで携帯すれば一番いいのでしようか? 教えてください!

 

ファーストエイドキットで必ず持っておきたい5つのモノ

山という不確定な要素が多い場所で行動する登山では、どのような登山であっても、負傷や体調不良などのトラブルは、つきものです。小さなトラブルでは、雨の中の行動で手がふやけ、尖った岩角や、折れた枝に接触して指を切ってしまう。大きなトラブルでは、下山中に足を捻って、捻挫や骨折をする。落石で大きな外傷を負う・・・など。誰にでも可能性があります。また、行動するのが苦痛なほど膝が痛くなり、ゆっくりとしか前進できず、日が暮れてしまった・・・なども、しばしば発生するトラブルです。

こういった非常時のトラブルに対応する救急用具のセットがファーストエイドキットです。ただ、想像できる、あらゆるトラブルに対応しようと考え、専門用具を携帯しようとすると、ファーストエイドキットの数はどんどん増えて困りますね。では、必ず持っておきたいものはなんでしょうか?

僕が必ず持つべきだと考えているのは、

  • 各種サイズの絆創膏
  • テーピングテープ(幅違いで2種類程)
  • 三角巾
  • 清潔な水
  • 痛み止めなどの常備薬

の5つです。

 

携帯するだけでなく、活用できる知識も必要

絆創膏は沢山の種類が出ていますが、濡れてもはがれにくく、負傷していて片手しか使えなくても扱いが簡単なものが使いやすいです。日常から使ってみて、良い物を見つけてください。

テーピングテープは、簡単な事象では、靴擦れの予防や、さらに実際に靴擦れを起こした際の患部の保護にも使います。膝や手首などの関節の故障、痛みの際に、テーピングで保護、動きの抑制が可能です。さらに骨折や捻挫が疑われる負傷では、患部に直接巻いたり、添え木を当てた上から固定するのにも使ったりします。多くの場合は、幅の比較的狭いタイプ、幅広のタイプと2種類用意すれば、なんとかなるでしょう。伸縮性のあるキネシオテープも持っていると、更に便利です。

三角巾も、大きな傷の保護、止血、腕や足の捻挫、骨折の際の固定など、活用場面の多い用具です。ただ、テーピングテープと三角巾は共に、負傷した箇所にあわせた固定の仕方など状況に合わせた使用方法を、本で学習したり、先達からの指導を受けるなどしていないと、現場での有効な活用は難しいです。

本格的に学びたい場合は、日本赤十字社などで行われている「救急法」の講習会に参加するのが良いでしょう。 そんなに長時間の負担のかかる講習ではなく、学習できるチャンスがあります。登山をする人は、一度は受講することをお勧めします。テーピングテープと三角巾は、使用方法を習得すると、相当の負傷にも対応することができますが、逆に使用方法がわかっていないと、宝の持ち腐れになります。ぜひ、使いこなしてください。

 

小さく軽いので持っておくと良いペットボトルの蓋

ペットボトルの水とセットで、2mm程度の穴を空けたペットボトルの蓋をキットの中に入れておくと、いざという時に重宝します。切傷などのケガの場合は、とにかく患部を洗い、土、汚れなどを除去することが必要です。穴を開けた蓋を用意しておくと、シャワーのように勢いよく水が出せるので、患部だけに強い力で洗浄が可能になります。

 

内服薬の譲渡は基本NGです

内服薬は、日常的に使っているものを各自の責任で最低限の薬を持つことが必要です。必ず用意していただきたいのは、自分の身体に合った「痛み止め」の薬です。頭痛や、歯痛だけではなく、膝が痛くて行動できない、傷が痛い、骨折が疑われる状態で、搬送の際に激痛があるときに痛み止め薬は極めて有効です。

内服薬で注意したいのは、基本的には「自分で用意した薬を服用し、他人には譲渡しないこと」です。これは市販薬でも守るべきことで、本人も気がついていないアレルギー要素があった場合、飲み慣れていない薬の服用で強い反応が出て、危険な事態に陥る可能性はゼロではないからです。よく“足の攣り”の際に、効果のある漢方薬を「これ飲んでみたら、すぐ効くよ」と気軽に渡しているのを見ることがありますが、これも止めるべきです。内服薬は、自分の日常的に使用している薬、身体にあった薬を各自の責任で持ってください。

山でのトラブルを色々頭に思い浮かべると、持ち物がどんどん増えてしまうのは大変わかります。その場合は、今回の解説を参考に準備してみてください。各自が道具を使いこなせるようになれば、少しづつキットの中身を減らすことができるのではないでしょうか。

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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