山小屋で過ごす年末年始――。一年を登山で締めくくり、新しい年を山で迎えよう
師走が近づき、年末年始をどう過ごそうか考える時期がやってきた。家で夜更かししながら年越し蕎麦をすするもよし、温泉旅行や海外旅行に行くもよし。しかし、山小屋で過ごすのはなおよし! じつは年末年始にイベントを行なっている山小屋は案外多い。山小屋で迎える新年、その魅力を垣間見てみよう。
文=鈴木香緒
白銀の稜線で迎える新年。その場で出会った人と新年の挨拶を交わす。初日の出を山頂から望み、徐々にオレンジに染まる山肌を眺める。そんな山小屋での年末年始に憧れる人も多いのではないだろうか。
今回は山と溪谷編集部が気になった3つの山小屋イベントと山小屋情報をお伝えしよう。
山小屋で迎える年末年始の魅力って?
特色があるイベント
一口に山小屋で迎える年末年始と言っても、年末年始の催し物の内容は、山小屋によって特徴がある。大晦日にミニコンサートが開かれたり、豪華景品の当たるじゃんけん大会が行なわれたり、新年の書初め大会をしたり…。どの山小屋で年末年始を迎えるか「山小屋選び」をするのもおもしろいだろう。
登山者同士の連帯感
ただでさえ山小屋は、見ず知らずの登山者同士が打ち解けられる不思議な場所だ。年末年始ともなれば、年明けカウントダウンに向けて宿泊客の高揚感も高まり、至る所から乾杯の声が聞こえてくる。登山者やスタッフ全員で、山の上で新年を迎えるという感動を共有する、特別な機会なのだ。
初日の出は山頂で
元旦といえば初日の出。空気も澄んだ山頂で見る初日の出は、町で見るそれとは一線を画す。地平線からゆっくりと姿を現す太陽は、周囲の山を赤く照らし出し、新年の幕開けを象徴するような光景が広がる。天気によっては初日の出を拝めない年もあるが、だからこそ拝めた時の喜びはひとしおだ。
- 華やかな年越しイベント・・・燕山荘
- コンサートでうっとり・・・黒百合ヒュッテ
- じゃんけん大会で大盛り上がり・・・赤岳天望荘
華やかな年越しイベント 燕山荘
冬季の北アルプス入門コースとして知られる燕岳。その山頂付近にあるのが燕山荘。年末年始も登山客が多いので有名だ。稜線上で色とりどりの登山客が作る行列はなんとも心躍る景色であろう。
いつもは消灯時間が早い山小屋も、大晦日は12時過ぎまで消灯せず、まるで年越しパーティ。お酒と年越し蕎麦が振舞われ、初めて来た人も常連客も一緒になって楽しめる。
元日と2日には餅つき大会が恒例だ。稜線上でつきたての餅を食べるのは格別のはず。想像するだけで口角があがってしまう。
なお、燕山荘へのアクセスは、夏山シーズンと違って冬季は中房温泉までは車で入れない。宮城ゲートから林道を約13kmほど歩く必要があることは注意が必要だ。
燕山荘情報
- 問合わせ
- 090-1402-0008(現地)、0263-32-1535(事務所)
- 営業期間
- 12/21~1/5 ※HPを必ず確認のこと。予約制。
- 宿泊料金
- 1万5千円、素8200円
コンサートでうっとり 黒百合ヒュッテ
北八ヶ岳の黒百合ヒュッテでは年末恒例でフォルクローレのミニコンサートが開かれる。「ケーナ」と呼ばれる縦笛の音色が山小屋を包み込む。
北八ヶ岳の銀世界。静寂に包まれた中の暖かな小屋。そこで開かれるコンサート。ぜひ一度、大晦日にだけ奏でられる音楽を聴きに足を運びたい。
じゃんけん大会で大盛り上がり 赤岳天望荘
南八ヶ岳の赤岳稜線上にある赤岳天望荘。大晦日にはじゃんけん大会が開かれ、超満員の食堂で大いに盛り上がる。賞品の量と豪華さもすごいとか。
元日の朝食にはおせち料理とお雑煮が振舞われる。初日の出は、天候に恵まれればオレンジに染まる横岳の山肌が見られ、その光景は荘厳のひとこと。
「冬山」であることをお忘れなく!
見渡す限り白銀の世界、夜には満天の星、地平線から昇る初日の出。山で迎える元旦は、誰にとっても思い出に残る体験になること間違いなし。
しかし、そこは「冬山」であることを忘れてはならない。冬にも雪が積もらない山域はあるが、地上よりも標高の高い場所で雪が降らないという保証はない。雪山装備や雪山登山技術なくして冬山に入ることは、自分の命を危険にさらすことになってしまう。雪山に行ったことがない初心者は、資格を持った山岳ガイドに同行してもらうことも必要だ。
「冬山」という誰もが行くことはできない場所だからこそ、そこで迎える元旦は、町とは違う特別感がある。安全に山を登り、温かな山小屋で思いっきり年越しを楽しもう!
今回紹介したのは、山と溪谷12月号『厳選 全国雪山40コース』の特別企画「山小屋で過ごす年末年始」の一部。ほかにも、クリスマスイベントがある山小屋や、鏡割りをする山小屋などを多数紹介。
上記に紹介した山小屋レポートほか、年末年始営業している山小屋情報は12月号に詳しく掲載しているので、ぜひチェックしてあなたにぴったりな山の年末年始計画を立ててみてほしい。
プロフィール
山と溪谷編集部
『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。
From 山と溪谷編集部
発刊から約90年、1000号を超える月刊誌『山と溪谷』。編集部から、月刊山と溪谷の紹介をはじめ、様々な情報を読者の皆さんにお送りいたします。