山旅をZINEにしよう![1]伯耆大山編

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こんにちは。フリーランス編集者の小野泰子です。仕事だけでなく、プライベートでもZINE(ジン/小冊子)を作っている、根っからの雑誌好きです。山や旅、そして日常で気になったことを拾い上げ、紙に落とし込んで一冊にまとめる作業を長年楽しんでいます。

ZINEとは、MAGAZINE(マガジン/雑誌)に由来する造語なのだとか。個人が自費で制作したり、大手の流通を通さずに広めたりする小冊子を指します。

今回から始まる連載では、山旅がより思い出深いものになるZINE作りを提案したいと思います。毎回、私が出かけた山を題材に、自由自在なZINEの世界をご紹介します。第1回目は鳥取県・伯耆大山(ほうきだいせん)編。まずは気負わず、一冊作ってみませんか?

 

Contents

●今回、使った道具類

●ZINE作りの流れ

 1_テーマを決める
 2_見せ方を考える
 3_仕様を考える
 4_レイアウトする
 5_印刷する
 6_製本する

●最後に

 

今回、使った道具類

・カッター
・コンパスカッター(なくてもOK)
・千枚通し(穴を開けるものなら、何でもOK)
・定規
・カッティングマット
・割り鋲(びょう)
・紙 3種類

 

ZINE作りの流れ

ZINE作りのざっくりとした流れを、今回の伯耆大山編を交えてご紹介します。

 

1 テーマを決める

山に出かけ、心動かされたことは誰かに伝えたくなるもの。「ねぇ、ねぇ、聞いて!」と思わず言ってしまいたくなることをテーマにするといいでしょう。伯耆大山登山では、昨年に比べて雪が少ないことに衝撃を受け、これをテーマにもってきました。軸となる部分が決まると、タイトルもテーマに沿ったものが浮かんできます。今回は「Snow Mountain(スノー マウンテン)」。シンプルですね(笑)。

 

2 見せ方を考える

テーマがもっとも伝わる見せ方を考えます。写真集のように写真を大きく見せて展開する、雑誌のように写真と文章をバランスよく入れていく、エッセイ集のように文章だけを連ねていく、などなど。伯耆大山登山では、「冬山に雪があることが、今後当たり前でなくなっていくのかもしれない」といった不安がよぎりました。昨年より少ないとはいえ、雪にすっぽりと覆われた山の写真を大きく扱い、「白化粧の山はなんて美しいんだ!」という感動に置き換え、伝えることにしました。

最近は、レトロな風合いが気に入って、「写ルンです」で写真を撮ることが多く、その粗い画質をあえて大きくしてみたかったこともあります。

「写ルンです」で撮った伯耆大山の主峰・剣ヶ峰。この一番好きなカットを最初のページに

 

3 仕様を考える

見せ方が決まったら、ZINEのサイズやページ数、綴じ方などにつなげていきます。今回は、写真を大きくのせたかったので、A4以上の判型がよいなと思いました。ちょうど手元にA4の紙がそろっていたこともあり、すんなりこれらを使うことに。迷ったら安直に、すでにあるとか、手に入りやすいとかで紙を選べばよいと思います。

今回、綴じ方は簡単な平綴じにしました。紙を重ね、背と呼ばれる片端をとめる方法です。紙の片面だけに印刷し、1ページにどんっと写真を1点配置することに。使いたい写真が7点あったので、7ページです。これだけでもよかったのですが、その後ろに写真説明のページと、エッセイを入れたページを設けたくなり、全9ページにしました。

 

使った紙は3種類。上から、写真用、写真説明・エッセイ用、表紙・裏表紙用

 

4 レイアウトする

私は本格的なレイアウトソフトは使いこなせないので、普段からなじみのある文書作成ソフト(Word)を活用しています。パソコンを使わず、台紙に手書きしたり、写真を貼りつけたりして、手作り感を全面にだすこともあります。

文章が多いときは、あらかじめ原稿を作っていますが、今回のように少ないときはレイアウトしながら文章も入力しています。

Wordで写真も文章もレイアウト。「挿入→図形→吹き出し」機能をフル活用

 

5 印刷する

そもそも家庭用のプリンターはA4サイズまでなので、これより大きいサイズになるときはコンビニなどを利用して出力します。

今回、表紙用と裏表紙用のやや厚みのある紙は近所の画材店で四切で購入し、A4に裁断して使っています。

メインとなる7ページはA4の白い紙にカラーで、補足の2ページはA4の茶系の紙にモノクロで印刷し、変化をつけています。これら9ページは、表紙と裏表紙ではさんだときに収まりがよくなるよう、紙の上下と右を印刷後に少しカットしました。

中面の9ページは上、下、右をそれぞれ5mmほどカット

 

6 製本する

平綴じの場合、ホッチキスを使ったり、糸でかがったり、クリップでとめたりとアレンジが楽しめます。今回は割り鋲を使ってみました。千枚通しで穴を開け、差し込めばOK。やや厚みがある表紙がめくりやすいよう、鋲で留めた右側にカッターを軽くあて、折り目を入れています。

今回、表紙にちょっと工夫を。小さな丸窓をつくり、1ページ目の山頂をのぞかせてみました。これは丸く切り抜けるコンパスカッターを使っています。

割り鋲は文具店で購入。1箱に100本入りなので、気兼ねなく(!?)使える。今回、使ったのは5本

コンパスの要領で使うカッター。好みの大きさの円に切り抜ける、あると便利な道具

 

最後に

いかがでしたか? まずは身近にある素材や道具で、気軽に山旅の思い出を形にしてみてください。もし、最初のテーマ決めでつまづいたら、例えば撮った写真のなかから好きなカットを10枚選び、「お気に入りショット ベスト10」でまとめるのも手です。なにかしら、自分の手で形にする喜びを味わってもらえるとうれしいです。

プロフィール

小野泰子(フリーランス編集者)

長野県大町市在住。登山、トレッキング、散歩といった歩くこと全般をテーマに、山岳系の雑誌、書籍、ウェブに携わる。プライベートでも四季を通じて山に入り、縦走、アルパインクライミング、雪山登山にいそしんでいる。ZINE作りのワークショップを随時開催。山のみならず、街で出合った“山の片りん”をインスタグラム(@ono_b_yasuko)に投稿中。

山の「記憶」を「記録」に

山旅がより思い出深いものになるZINE作り。フリーランス編集者・小野泰子さんが出かけた山を題材に、自由自在なZINEの世界をご紹介します。

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