山旅をZINEにしよう! [7] 北アルプス・常念岳編

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こんにちは。フリーランス編集者の小野泰子です。仕事だけでなく、プライベートでもZINE(ジン/小冊子)を作っている、根っからの雑誌好きです。山や旅、そして日常で気になったことを拾い上げ、紙に落とし込んで一冊にまとめる作業を長年楽しんでいます。

この連載では、山旅がより思い出深いものになるZINE作りを提案したいと思います。毎回、私が出かけた山を題材に、自由自在なZINEの世界をご紹介。第7回目は北アルプス・常念岳編です。

今回は、いよいよ年の瀬ということで、この一年を振り返りながらZINEを作っていきます。私にとって大きな変化があった2021年。拠点が東京から長野・安曇野に移り、それにより、普段登る山もガラリと変わりました。ご近所の山が北アルプスという、山ヤにとってはなんともうれしい環境。なかでも端正な山容の常念岳(標高2857m)は安曇野のシンボル的な山で、住まいからも真正面に望めます。季節ごと、時間帯ごとに違った表情をのぞかせ、日々、見飽きることがありません。そこで、前回までとは異なり、実際に山に「登る」よりも、麓から「眺める」行為にフォーカスした内容で一冊を仕上げてみることにしました。

Contents
  • 窓の向こうの常念岳について
  • 使った材料
  • 作り方
    1. テーマとタイトルを決める
    2. 仕様を考える・面付けする
    3. レイアウトする
    4. 印刷・製本する
  • 最後に

 

窓の向こうの常念岳について

まだ布団にくるまったまま、ベッド横の障子を開け、窓の向こうに常念岳を眺める――。今夏から、これが朝一番の日課になりました。モルゲンロート(朝焼け)で山肌がほんのりとピンクに染まる日もあれば、霧にすっぽりと包まれ、視界一面が乳白色の日も。たそがれの空に浮かぶ常念岳のシルエットも、未明に明るい月が山影に沈みゆくようすも趣深いものでした。

季節は冬を迎え、真っ白な雪に覆われるにつれ、澄んだ青空のもとで凛々しさが増してきました。今日はどんな姿を見せてくれるかな。これが日々の小さな楽しみになっています。

 

窓から見た雪景色。12月のある日、常念岳山頂に雪煙が舞っていた

 

使った材料

  • A4の紙1枚
  • カッター
  • カッターマット
  • 定規
  • ホッチキス
  • トレーシングペーパー、縫い針、糸(アレンジする場合のみ)

 

両面に印刷するので、A4の紙は薄すぎないほうがよい。コピー用紙よりもやや厚めがベスト

 

作り方

1_テーマとタイトルを決める

拠点が変わったことで、新しい山との新しい関係が生まれました。安曇野が「おらが町」になり、常念岳が「おらが山」になったのです。登って、眺めて、親しんで。今回は、日々の暮らしのなかにいつも存在する常念岳にスポットを当てようと思い、「眺める」ことにテーマを絞りました。

窓からの情景にハッとするたび、カメラを構えたので、写真フォルダを見返すと、さまざまな顔をした常念岳がありました。そのなかから、とくに印象的だったカットを選び、ZINEに載せることに。

タイトルは『私と窓の山』。2021年の自分を振り返るという趣旨から、タイトルに「私」というワードを入れました。「窓の山」は窓から見る常念岳を指します。

 

常念岳に登ると、槍ヶ岳方面の展望が抜群。しかし、山行時の写真はあえて今回のZINEでは使わない

 

2_仕様を考える・面付けする

今回は、1枚のA4の紙を切ったり、折ったりして、A6サイズ、8ページの冊子に変身させます。仕上げに、定番の「中綴じ」で背(山折りの部分)をとめる仕様に。

次の行程ではパソコンを使い、レイアウトしますが、その前に「面付け」を整理しておきましょう。面付けとは、印刷の都合に合わせ、複数のページを1枚の紙に配置する作業です。

今回は紙の両面をそれぞれ4分割し、8ページを作りだします。表面と裏面にページ番号をつけると下図のようになります。製本の際にわかりやすいので、「切る」「山折り」「谷折り」も書き込んでいます。

 

面付けがひと目でわかるメモ用紙を用意しておくと、次からの行程がスムーズに。1の裏に2、8の裏に7を書いている

 

3_レイアウトする

前回まで、文書作成ソフト(Word)でレイアウトしていましたが、友人に便利なデザイン作成ツール(Canva)を教えてもらい、これを活用してみることに。パソコンでもスマホでも操作可能です。

まずは「A4縦」にサイズを設定し、表面用と裏面用に分けて作業開始。先ほどの面付けどおり、各ページに配置したい写真と文字を入力していきます。

 

表面に4ページ分をレイアウトしたパソコン画面。十字のガイド線は後で消す

 

4_印刷・製本する

レイアウトできたら、続いて印刷です。表面と裏面をいっしょに選択し、「長辺綴じの両面印刷」に設定して印刷します。

ここからは製本です。行程2の面付けにならい、まずはカッターで印刷した紙を上下に切り分けます。それぞれの表面を山折りにしたらページ順になるよう、紙を重ねましょう。最後にホッチキスで背を2カ所とめたらできあがりです!

ホッチキスは中綴じに便利な針の角度が変えられるものを利用しました。一般的なホッチキスでもよく、その場合は180度に開いた状態で使います。クッションとして消しゴムなどを紙の下にあてておきましょう。後は消しゴムから針を抜き、紙にそって折り畳めばOKです。

 

中綴じがしやすいホッチキスで、背を2カ所とめている

 

最後に

中綴じのZINEはいろいろなアレンジができるので、いくつかご案内しましょう。例えば、ホッチキスでとめた後、好みの糸を背にかけるだけでも雰囲気が変わってきます。

別のサンプルでは、カバーのようにトレーシングペーパーを加えました。タイトルの一部である「私と」を、本体の1ページ目ではなく、トレーシングペーパーに印刷してみたり。

また、ホッチキスでとめる代わりに糸で綴じるのもよいですね。極細の赤い糸を使い、結んだ後も長めに糸を残してラフなかんじにしました。

 

トレーシングペーパーを加えたサンプル(左)と、赤い糸で綴じたサンプル(右)

 

アイデアをどんどん盛り込みながら、ZINE作りを楽しんでもらえるとうれしいです。2021年の自分自身と山との関わりを振り返る、よい時間になりますように!

 

プロフィール

小野泰子(フリーランス編集者)

長野県大町市在住。登山、トレッキング、散歩といった歩くこと全般をテーマに、山岳系の雑誌、書籍、ウェブに携わる。プライベートでも四季を通じて山に入り、縦走、アルパインクライミング、雪山登山にいそしんでいる。ZINE作りのワークショップを随時開催。山のみならず、街で出合った“山の片りん”をインスタグラム(@ono_b_yasuko)に投稿中。

山の「記憶」を「記録」に

山旅がより思い出深いものになるZINE作り。フリーランス編集者・小野泰子さんが出かけた山を題材に、自由自在なZINEの世界をご紹介します。

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