日本百名山に惜しくも選ばれなかった山たち、その理由は「登ってない」、「背が低い」
登山者から高い人気を誇る日本百名山。その百名山を選んだ深田久弥氏は、苦渋の決断で百名山に選ばなかった山があるらしい。そこで、惜しくも落選となった山々を、理由と合わせて地域別に紹介しよう。
文=編集部、写真=編集部・Pixta
何故選ばれなかった? そこには様々な理由が・・・
登山者なら誰もが知っている日本百名山。その選定者は、文筆家で登山家でもある深田久弥。自らの50年近くにわたる登山経験のなかから名山と思う百座を選んだものだ。
深田の著書「日本百名山」の巻末には百名山選定の経緯が書かれている。そこで述べていることを確認すると「百名山のうち、70座はすんなりと決まったが、残りの30座は選ばれなかった他の候補を紙一重の差だった」とのことだ。
百名山に惜しくも漏れた山について、深田は「愛する教え子を落第させる試験官の辛さに似ていた」「今後再販の機会があれば若干の差し替えをする」と述べている。
では具体的に百名山に選ばれなかった理由はどんなものであったのか。地方ごとに見ていこう。
北海道・・・7座
深田自身が登っていないため選ばれなかったのは、ウペペサンケ山、二ペソツ山、石狩岳、ぺテガリ岳、芦別岳、駒ヶ岳、樽前山の7座。
アクセスの悪さが仇となり、多くの山々が落選。深田は「登ってみもしないで選定するのは、入社試験に履歴書だけで採否を決定するようなもので私の好まないところであった」とコメントしている。しかし一方で「不公平な理由で除外したことは申し訳ない」とも。
東北・・・5座
入れるべきか迷ったのが、秋田駒ヶ岳、栗駒山。また、「いい山だが、少し背が足りない」としたのが森吉山、姫神山、船形山の3座だ。
いずれも立派な山ではあるものの、1000m~1600m代という標高の低さがネックとなったようだ。
上信越・・・10座
深田自身は好きだが、高さが第二級であるとしたのが、女峰山、仙ノ倉山、黒姫山、飯縄山、守門岳、荒沢岳、白砂山、鳥甲山、岩菅山の9山。また、弥彦山については「名山だが背が低すぎる」という理由で落選。
東北と同じく上信越の山々も高さが理由でNGとなった山がほとんどだった。
北・南アルプス・・・13座
「入れたかったがやむなく落とした」としているのが、北アルプスでは雪倉岳、奥大日岳、針ノ木岳、蓮華岳、燕岳、大天井岳、霞沢岳、有明山、餓鬼岳、毛勝山の10座。南アルプスでは、大無間山、笊ヶ岳、七面山の3座が挙がった。
さすがは激戦区のアルプスだけあって、多くの名山が選に漏れている。ちなみに有明山は深田お気に入りの山で百名山に内定していたが、まさかの登山道崩壊で登ることができず。代わって土壇場で滑り込んだのが日光白根山だった。
北陸・・・2座
深田自身が登っていないので漏れたのが、笈ヶ岳と大笠山の2座だ。深田のふるさとである北陸だが、上記2座は登っておらず選外に。現在の笈ヶ岳は強烈な藪が生い茂げる静寂の山だが、百名山に選ばれていたら人気の山になっていたかもしれない。
関西・・・4座(山域)
高さがないとされたのが、鈴鹿山脈、比良山地、比叡山。また、深田自身が登っていないのが、奥高野の山々だ。
関西の山々は、最大の弱点である標高のなさが主な理由となっている。一方、鈴鹿山脈の御在所岳にいたっては、高さが足りないのに加えて「遊園地化している」とバッサリと切り捨てられてしまった。
中国・・・2座
入れたかったがやむなく落としたとしているのが氷ノ山、名山と推すには物足りないとしているのが蒜山だ。いずれも、他の山域に比べるとかなり漠然とした理由で落選している。この決断で、中国地方の百名山は伯耆大山のみとなっている。
九州・・・4座
念頭にはあったがやむなく落としたとしているのが由布岳、市房山、桜島の3山で、「名山だが背が低すぎる」山に英彦山を挙げている。
それぞれ、「個性のあるみごとな山」と評しながらも、泣く泣く選外となった上記の山々。九州も意外と名山揃いで深田の頭を悩ませたようだ。
いずれにせよ、百名山に選ばれなかった山も、百名山に負けず劣らず良い山であることには違いない。上記に挙げられた山にも是非機会があれば登ってみよう。
現在発売中のワンダーフォーゲル2020年4月号の特集は、「テーマで知る。レベルで選ぶ。日本百名山案内」。
深田が葛藤した末に選ばれた百の山々を、「縦走」、「花」、「紅葉」、「雪山」など、それぞれの山の魅力が際立つテーマごとにカテゴリー分けしてオススメのコースや登り方を紹介している。ぜひ書店で手にとってみてほしい。
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From ワンダーフォーゲル編集部
隔月で発行の雑誌、『ワンダーフォーゲル』。注目の特集記事や取材裏話など、雑誌編集部からとっておきの山の話を、神出鬼没に紹介!