ダイナミックな地球の物語を知る『日本の山ができるまで 五億年の歴史から山の自然を読む』
評者=鈴木みき
山を歩いていて「どうしてコマクサは白い石の斜面にばかり咲いているの?」「この山は不思議なカタチだな」と思ったことはないだろうか。私はいつもそんなことばかり考えていて、その疑問を解決してくれたのが小泉武栄先生の『山の自然学』(岩波新書)と『山歩きの自然学』(山と溪谷社)だった。
それを読んで山を含む自然全部が地球そのものの営みなのかと目覚めた私は、ほかの地質や地形の本もいろいろ読んではみたが、登山者目線で書かれている小泉先生の説明ほど体感的に想像して読めるものはなかった。私にとって小泉先生は知りたいことを教えてくれた救世主。もし20年遡って学び直せるなら小泉ゼミでしごかれたい。何を隠そう……いや、何にも隠れていないが愛読者なのである。
そんな小泉先生の新刊はこれまでとは違うアプローチで山の自然に迫る意欲的な作品だ。話は日本列島がまだ大陸とくっついていた5億年前から始まる。2000万年前の大陸からの離脱、陸地の拡大、活発に山が高くなった300万年前から現在までが時系列に書かれている。これまでは山ひとつひとつの成り立ちや個性について書かれたものが多かったが、よりダイナミックな地球の物語を知ることができる。改めて地球規模で日本の山は特別だと深く思い知る。帯のキャッチコピーにもなっている「日本の山はなぜこんなに美しい」のか、私なりに理解し、腑に落ちた気がする。
知ればまた山を歩くのがいっそうおもしろくなる。きっと山を見る目が変わるだろう。
(山と溪谷2020年4月号より転載)
登る前にも後にも読みたい「山の本」
山に関する新刊の書評を中心に、山好きに聞いたとっておきもご紹介。
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