【書評】“奇跡の鳥”復活作戦の熱い日々を追う『ライチョウ、翔んだ。』
(評者=上田恵介)この本は、ライチョウ保護にひとかたならぬ情熱をもって取り組んだ中村浩志による保護活動、特に中央アルプスにライチョウを復活させるプロジェクトの全容を追ったドキュメントである。
山に関する新刊の書評を中心に、山好きに聞いたとっておきもご紹介。
【書評】“奇跡の鳥”復活作戦の熱い日々を追う『ライチョウ、翔んだ。』
(評者=上田恵介)この本は、ライチョウ保護にひとかたならぬ情熱をもって取り組んだ中村浩志による保護活動、特に中央アルプスにライチョウを復活させるプロジェクトの全容を追ったドキュメントである。
【書評】富士山最後の強力 並木宗二郎の生涯『雪炎 富士山最後の強力伝』
(評者=石丸哲也
)本書の主人公、並木宗二郎氏は1994年に引退した富士山最後の強力。夏季、ブルドーザーでの荷上げが一般的になった後も、山頂の富士山測候所へ運ぶため危険な冬季の強力を続け、21年間で400回以上も登った。本書は引退の2年後に刊行されたドキュメンタリーを文庫化したものである。
【書評】避難小屋シリーズ第2弾『帰ってきた避難小屋』
(評者=武石浩明)避難小屋は地域により大きく事情が異なる。橋尾は色鮮やかなイラストの中に、細かい文字で小屋の注意書きも再現し、事情をさりげなく説明する。避難小屋の間取りや成り立ちについても興味深い。
【書評】“山ヤのバイブル”ベスト盤。入門の書としても『昭和登山への道案内 ベストセラー「日本登山大系」を旅する』
(評者=森山憲一)言ってみれば本書は、「『日本登山大系』のベスト盤」という内容になっている。ミュージシャンのベストアルバムが初心者ファンにとっては格好の入口となるのと同じように、『日本登山大系』を知らない人にとっては本書は貴重な一冊になると思う。なにしろ、全10巻からおいしいところだけを一冊に選り集めているのだから。
【書評】30年間の自然との関わり、そしてこれから『73歳、ひとり楽しむ山歩き』
(評者=九里徳泰)本書で圧倒されたのは、南アルプス南部の単独行である。この登山の話はご本人から断片的に聞いてはいたが、そのモチベーションと行動力には驚いた。「自分の山をやりなさい」という田部井さんの言葉を突き詰めて単独行を実現する。
【書評】マタギ村の生活が教えてくれる山と人のあり方『現代アートを続けていたら、いつのまにかマタギの嫁になっていた』
(評者=吉田智彦)マタギの集落といっても、クマを捕ることだけが村人の生きる糧ではない。焼畑、鮎かき、きのこ狩り、ヤマドリ猟、薪割り、海辺の集落との物々交換……。自然から恩恵を得て暮らす生活は、とにかく体を使う。そして、足りない部分は住民同士で助け合う。
【書評】没後50年山と文芸の世界にあらためてふれる『尾崎喜八選集 私の心の山』
(評者=石黒敦彦)本書は21世紀の日本の文化・文学への「山からの贈り物」である。20世紀の近代登山と博物学的な詩精神の最良の部分が一冊にまとめられて、21世紀に引き継がれたことを喜びたい。
【書評】支配人昇格新たな魅力で文庫本化『黒部源流山小屋暮らし』
(評者=三宅 岳)さっぱりしつつも巧みな文章に、そしてさすがは画伯とほめちぎりたくなる絵の数々に、背負った責任はグンと重くなっているはずなのだが、そんなものをぱっと振り切った明るさがあふれている。
【書評】 日本唯一の北極冒険家デビュー作『北極男 増補版 冒険家はじめました』
(評者=花岡 凌)人生を変えた一冊は何かと聞かれたら、私はこの本だと断言できる。北極男こと、著者の荻田氏は北極冒険家である。アルバイトで資金を貯めては北極へ冒険に向かう。
【書評】志半ばで遭難した6人の軌跡を辿り人生と時代を回顧『未完の巡礼 冒険者たちへのオマージュ』
(評者=長谷川昌美)植村直己、長谷川恒男、星野道夫、山田昇、河野兵市、小西政継。「昭和」という時代の後半に活躍したこれらの著名な冒険家、写真家、登山家に共通するものといえば、いずれも志半ばにして海外で遭難、生還できなかったという事実だ。