女性の登山スタイルは、下着も山仕様に![1]-快適性アップの「山ブラ」選び-

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山に行くときに、ウェアはばっちり登山仕様。だけど下着は、いつもと一緒・・・ということはありませんか? 肌に直接触れる下着こそ、きちんと機能性を備えたものを選びたいもの。そこで、女性同士でもなかなか話題にならない「山ブラ」事情について、レディースアウトドア専門ショップ LaLaさかいやの山岸さんに話をうかがいました。

取材・文=辻 歌

写真=PIXTA
CONTENTS

ソフトな着用感・低山ハイク向け
縦走登山・山小屋泊り向け
バスト揺れ軽減・トレラン向け​

登山下着の重要性と、選び方の基本

ライター辻: 山小屋やテント、下山後の温泉などで着替えるときに、普段づかいのブラやショーツをつけている人をたまに見かけます。登山仕様の下着の重要性を、きちんと広めたいですね。

山岸さん:登山下着の役割は、不快感を減少させること。たとえば、せっかく速乾性のあるTシャツを着ていても、肌にいちばん近いブラの素材が濡れていると、その不快感が着用ストレスにつながります。
バストは表面積も体積もあるので、ブラの乾きがすばやく行われないとバスト全体がとても冷たくなり、汗冷え感が強くなる原因に。登山中の汗冷えは、低体温症などの危険性を伴うので、この状態は避けたいところです。

ライター辻:まずは、汗冷えしにくい素材を選ぶのが大切ですね。

山岸さん:もうひとつは、バストのホールド力があるものを選ぶことが重要です。登山中、とくに下りでは体にかかる衝撃がかなり強いため、一歩ごとにバストが激しく揺れます。その揺れによって、バストを支えているクーパー靭帯が伸びたり損傷したりすると、将来的にバストの形が崩れやすくなってしまうことも・・・。バストの揺れを軽減するために、しっかりホールドするものを選ぶといいでしょう。

登山時に着けるブラのNGとOK

ライター辻:「こんなブラは山ではNG」を教えてください!

山岸さん素材として避けてほしいのが、コットンを含むもの。コットンは、吸水性がよいけれど速乾性が低いという特徴があります。登山は運動量が多く、たくさんの汗をかくため、乾きが遅いと不快感につながりがち。また、山では標高が高くなるにつれて気温が下がり、強風など天候の変化も大きく、そのような状況下で乾きの遅いウェアを着用することは、体温を奪い、汗冷えや低体温症のリスクを高めてしまうからです。

ライター辻:普段づかいの下着だと、よくない理由は?

山岸さん:一般的なブラは、速乾性や抗菌防臭性が重視されていないものが多く、山向きではありません。また、後ろホックで留めるタイプだと、ザックを背負ったときに外れてしまう可能性もあるので注意が必要です。

ライター辻:では、登山におすすめのブラは、どういった特徴があるのでしょうか。

山岸さん:素材としては、ポリエステルやウールを使ったものが多いです。

ポリエステルは、速乾性が高く、生地の編み方などでやわらかな肌あたりに仕上げられるのが特徴。ほかに速乾性のある素材としてはナイロンもあり、これらの繊維をいくつか組み合わせているアイテムもあります。

さらに、撥水加工を施したものも。撥水加工をすることで、生地自体が保水しにくくなり、濡れた生地が肌に触れにくいため汗冷えを軽減できます。このタイプを着用するときは、ブラから弾かれた汗をすばやく吸収・拡散させる素材のアンダーウェアやベースレイヤーをレイヤリングしてくださいね。

ライター辻:ウール素材は、速乾性とは異なるメリットがありますよね。

山岸さんウールは、吸湿性に優れ、1年を通して心地よく着られる調温調湿の機能があります。汗を早く乾かすのではなく、汗をかいてもヒヤッと冷たい感じにくいのがポイントです。また、ウール繊維自体に天然の抗菌防臭効果が備わっているので、臭いにくいのがうれしいですね。

ライター辻:デザイン面も、登山での快適性を高めるよう工夫されているかと思います。

山岸さん:ホックなしやレーサーバックなどは、体をダイナミックに動かしやすいデザインがメイン。また、ザックとの相性を考慮して、ショルダーハーネスと縫い目が干渉しにくい仕様になっているものが多いです。

縫い目が肌側にこないようにして肌あたりのストレスを減らしたり、汗がたまりやすいアンダーバスト部分の汗抜けを重視したりしているアイテムもありますよ。

タイプ別・おすすめ山ブラ

ライター辻:いろんなタイプがあって、選ぶのに迷いそうです・・・。

山岸さん:肌に直接触れるものなので、着用感や素材感が苦手だとつらい! いろいろ試して、自分の好みの着用感と求める機能が合致したものを探してみてください。

ライター辻:選ぶときの参考になるよう、タイプ別に、おすすめ商品をピックアップしてもらいました。

ソフトな着用感・低山ハイク向け

ブラの締め付け感が苦手な方は、つけ心地の快適性を追求したものを選んで。バストのホールド力は強くないので、動きが比較的ゆるやかな低山ハイク向きといえます。

モンベル/ジオライン メッシュ ソフトブラ

通気性の高いメッシュ素材を使用。ソフトで通気性のよいパッドを備えているので、つけ心地が優しい。

価格:3,400円(税別)
問:モンベル
https://www.montbell.jp/

 

ファイントラック/ドライレイヤーベーシックフィットブラ

汗冷えや汗のベタつきを軽減する「ドライレイヤー」シリーズのブラ。伸びがよく、やわらかな着心地。

価格:4,700円(税別)
問:ファイントラック
https://www.finetrack.com/

 

縦走登山・山小屋泊り向け

数日間の登山を想定するなら、抗菌防臭性は備えているほうがベター。また、山小屋やテントでの着替えがしやすいデザインを選ぶといいでしょう。

スマートウール/シームレスレーサーバックブラ

ウール混素材で、長期間にわたり着用しても臭いが気になりにくい。シームレス構造のため、肌あたりが快適。

価格:6,600円(税別)
問:ロストアロー
https://www.lostarrow.co.jp/

 

モンベル/ジオライン メッシュ フロントホック ソフトブラ

メッシュ生地、パッドともに通気性の高いものを採用。フロントホックタイプなので、着替えがしやすい。

価格:3,900円(税別)
問:モンベル
https://www.montbell.jp/

 

バスト揺れ軽減・トレラン向け

C3fit/エアーベントスポーツブラ

運動中の揺れを抑えるハイサポートタイプ。高い通気性と速乾性も兼ね備え、発汗量の多いスポーツにぴったり。

価格:5,500円(税別)
問:ゴールドウイン
https://www.goldwin.co.jp/goldwin/c3fit/feature/sports-bra/

 

CW-X/HTY138

5方向サポート機能があり、走るときに重宝。ラージサイズ(E~Hカップまで)に対応。

価格:5,300円(税別)
問:ワコール
https://www.cw-x.jp/


次回は、山岸さんが、あれこれ悩みが多い「山ブラ」の質問に回答。自分の登山スタイルにぴったりの 「山ブラ」について、さらに深掘りしていきます。

⇒女性の登山スタイルは、下着も山仕様に![2]-「山ブラ」の質問に答えます-

プロフィール

山岸裕子

登山専門店さかいやスポーツの女性向けショップ・LaLaさかいや勤務。なんとなく山をはじめて、ふと気づけば約20年のキャリアになった山好き。最近ハマっているのは、緩めのトレランと、「軽量・時短・美味しい」にこだわった山ごはんを山友と楽しむこと! お店では日々、女性が快適な登山をできるレイヤリングを提案しています。

LaLaさかいや

神田神保町にある、全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店「さかいやスポーツ」の 、レディースウェアに特化したショップ。スタッフは全員女性で、女性ならではの視点を生かした細や かなアドバイスに定評がある。

住所/東京都千代田区神田神保町2-46
TEL/03-3262-0568
営業時間/11:00~20:00
アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分
https://www.sakaiya.com/wp/shopinfo/lala

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