このエントリーをはてなブックマークに追加

日本山岳史上最大の謎といわれる剱岳初登頂。そのルートの謎に迫る

From ワンダーフォーゲル編集部
たしなみ 2020年06月04日

日本山岳史上最大の謎といわれる剱岳初登頂。誰がどのルートで登ったのかを探検家の高橋大輔さんが、さまざまな角度から解き明かして、気づいたこととは?

文=編集部 写真=高橋大輔

探検家の高橋大輔さん。別山の山頂から剱岳を望む

 

初登頂は平安時代!? 剱岳初登頂のミステリーに挑む

険しさゆえに明治時代に入っても人跡未踏といわれた剱岳。その初登頂は明治40年7月の日本陸軍陸地測量部の柴崎芳太郎たちであるはずであった。しかし、山頂には平安時代のものと思われる錫杖頭と鉄剣が残っていたのだ――。これは小説や映画の「剱岳 点の記」にある有名なエピソードだ。

では、登山道もなく、装備も貧弱であろう1000年以上も前に一体誰が、どのルートから登頂したのだろうか。このミステリーを解明しようとしているのが探検家の高橋大輔さんだ。

平安期は、仏教徒により日本各地の山が開山されていた時代であり、「錫杖頭」という宗教儀礼に使うものが残されていたことから、高橋さんは剱岳の初登は山岳信仰の修験者であると予想する。では、気になる登頂ルートは?

明治40年に剱岳の山頂で見つかったという錫杖頭。平安時代のものだったという


「まず考えられるのが別山尾根です。ここは現在でも剱岳のメインルートですし、立山信仰の拠点であった室堂を起点とするのも山伏にふさわしいように思えます。ただし足場やクサリ場が整備されている今とは違いますし、ロープ等もないのでかなりリスキーなコースだったでしょう。」

実際、明治期に登った柴崎隊も別山尾根ではなく長次郎谷の雪渓を登り詰めたそう。ただし、このコースも、「山伏は荒行でもない限り雪を越えて登頂を試みることは考えにくい」と高橋さんは話す。そこで浮かんでくるのが北アルプス三大急登でおなじみの早月尾根だ。

早月尾根は山頂直下こそ獅子頭やカニのハサミなどの難所があるが、別山尾根ほど岩場の登下降があるわけではない。そしてもうひとつ有力な理由がある。

当時の山伏たちは、登りながら剱岳を遠くから拝む「遥拝」の気持ちがとても強かった。別山尾根の場合だと起点の室堂から剱岳を見ることはできないが、高橋さんが調べて見つけたのが、立山川を遡り「ハゲマンザイ」という場所から早月尾根に突き上げるルートだった。

立山川を渡渉しながら剱岳を目指すルートに挑戦する高橋さん
 

ハゲザンマイと呼ばれる谷筋から剱岳方面を見上げる


「このルートは川沿いなので、登山中の飲料水を確保しやすいというメリットがあります。さらにルート上から剱岳の姿が見えていることも多いので、遥拝できるポイントがあるのではと思いました。実際にNHKの山岳番組のクルーと一緒に登ってみたのですが、途中に奇岩や滝、岩室など山伏たちが行場に使えそうな場所がたくさんありました」

ハゲザンマイの谷筋の様子。このルートなら飲料水を確保しやすく剱岳を遥拝できる


この山行で高橋さんは剱岳の初期登頂者が早月尾根を利用したのではないかという思いが深まったという。そしてこれらの体験や考察をひとつの仮説にまとめて今年書籍を出すそうだ。出版を楽しみにしたい。

現在発売中のワンダーフォーゲル6月号の特集は、「剱・立山大全」。ビギナーからベテランまで、レベルに合わせて楽しめる、丸ごと一冊剱・立山大特集となっている。

本記事のような雑学的なコラムから、魅力的なコースガイドまで、剱&立山エリアを完全網羅した特集となっている。ぜひ書店で手にとってみてほしい。

記録・ルポ 調査 歴史・文化 日本の山
教えてくれた人

ワンダーフォーゲル編集部

剱・穂高ガイドの完全版。憧れの剱・立山連峰へ!
豪雪に削られた急峻な山々はすべての登山者の憧れの地だ。「岩と雪の殿堂」と呼ばれる剱岳は一般登山道最高難度のルートである。
一方、室堂を起点に東にそびえる立山、西に広がる弥陀ヶ原は、ビギナーでもスケールの大きい景観を楽しめるエリアだ。
ビギナーからベテランまで、レベルに合わせて楽しめる、丸ごと一冊剱・立山大特集!
 ⇒詳細はコチラ!
 ⇒Facebook
 ⇒Twitter

同じテーマの記事
すべての登山者が憧れる山・剱岳。その頂を踏むことなく、奥深くへと入り込む静かな縦走路があるのを知っているだろうか
室堂から欅平まで、山の頂を踏むことなく、渓谷を歩き、峠を越える縦走路。「岩と雪の殿堂」を開拓してきたクライマー、大正時代の鉱山労働者、そして戦前の過酷な発電所建設に従事した労働者、さまざまな背景の人々が歩いた道をたどる。
立山連峰はなぜ氷河が多いのか? 内蔵助氷河なら、一般登山者も氷河の上を歩ける!
日本にある7つの氷河のうち、5つが立山連峰で発見されている。そもそも氷河とは? なぜ立山連峰に氷河が多いのか? 立山連峰の氷河のヒミツを教えます!
立山三山は2泊3日がおすすめ! 初めての3000m峰の縦走への誘い
北アルプス北部にある立山連峰。アルペンムード漂う3000m峰の山々に、豊富な残雪、色とりどりの高山植物、信仰の歴史、温泉などなど、多彩な魅力があふれている。魅力を思いっきり味わいたいのであれば、2泊3日の行程で計画するのがおすすめだ。
日本百名山に惜しくも選ばれなかった山たち、その理由は「登ってない」、「背が低い」
登山者から高い人気を誇る日本百名山。その百名山を選んだ深田久弥氏は、苦渋の決断で百名山に選ばなかった山があるらしい。そこで、惜しくも落選となった山々を、理由と合わせて地域別に紹介しよう。
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

曇一時雨
明後日

(日本気象協会提供:2020年7月5日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW 御嶽山の登山道を守る活動 参加者募集!
御嶽山の登山道を守る活動 参加者募集! 岐阜県で御嶽山の登山道を守る取り組みがスタート。編集長萩原、五の池小屋主人と登る特別企画で参加者を募集!
NEW 雨の季節に。パタゴニア「レインシャドー」が復活
雨の季節に。パタゴニア「レインシャドー」が復活 パタゴニアがレインシェル「レインシャドー」シリーズを一新! リサイクル素材、3層構造のストレッチ生地でより快適に!
NEW 後ろが長い傘をチェック!【山MONO語り】
後ろが長い傘をチェック!【山MONO語り】 高橋庄太郎さんの連載は、ユーロシルムの「後ろが長い軽量傘」を雨の中で。ザックを覆うような構造や使用感のレポート
NEW 山小屋を支援しよう【山小屋エイド基金】
山小屋を支援しよう【山小屋エイド基金】 コロナ禍で営業できない山小屋を支援するため、クラウンドファンディングを立ち上げました。ご協力をお願いします(外部リンク)
萩原編集長のヒマラヤ未踏峰挑戦記
萩原編集長のヒマラヤ未踏峰挑戦記 NHKのTV番組でおなじみ萩原編集長、2013年秋にはネパール・ヒマラヤ未踏峰、「アウトライアー」に総隊長として参加。そ...
山道具の買い方・選び方はプロに訊け
山道具の買い方・選び方はプロに訊け 数ある登山道具の中から、自分にピッタリの用具を選ぶには? 登山用具を知り尽くしたプロショップのスタッフが、そのツボを説明...
梅雨時期こそ登りたい、登るべき山
梅雨時期こそ登りたい、登るべき山 雨降りの中で登山をするのは、やはりオススメできないが、梅雨時の今こそ登りたい山はたくさんある!
登山ボディをしっかり作ってから山へ!
登山ボディをしっかり作ってから山へ! 登山自粛、自宅待機で、すっかり鈍ってしまった身体を、チェック&メンテナンスしたから山へ向かいましょう!
NEW 大自然のダイナミズムに触れる北海道の山
大自然のダイナミズムに触れる北海道の山 北海道の山々から厳選! 踏破したい憧れの名山&コース7選
高山植物の女王・コマクサに会える山へ
高山植物の女王・コマクサに会える山へ ほかの植物が生息できないような砂礫地で、孤高に、可憐な姿を見せるコマクサ。殺風景な風景に力強く咲く「女王」を見られる山へ...
新緑が輝く季節、緑を満喫する山
新緑が輝く季節、緑を満喫する山 山肌の色が枯野色から緑色へと急激に変わる季節。山の緑が最も美しい時期に、緑にこだわって行くのにオススメの山。
レンゲツツジが山肌を彩る季節です
レンゲツツジが山肌を彩る季節です 初夏の時期、山肌を朱色に染めるレンゲツツジ。例年は6月下旬がピークだが、今年は今が最盛期。行くなら今でしょ!