鮮やかなスカイブルーの下、残雪の立山三山を周回する

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アルペンルートが開通すると、本格的な残雪登山が楽しめる立山。5月の連休には多くの登山者やスキーヤーで賑わいます。

雷鳥沢キャンプ場より剱御前方面に伸びる登山者の列

厳冬期には人を寄せ付けない立山も、4月のアルペンルートの開通にともなって、アクセス可能となり、ゴールデンウィークには、天候に恵まれれば本格的な残雪期の雪山登山の醍醐味を楽しめます。ただし天候悪化で、吹雪かれたりすると厳冬期並みの冬山に逆戻りするリスクもあり、正しい判断と十分な装備と経験が求められます。登山指導書で登山届を出すことは必須です。

モデルコース:室堂~別山乗越~立山~一ノ越~室堂

 

コースタイム:【1日目】約5時間【2日目】約8時間

⇒立山周辺のコースタイム付き登山地図

前日に室堂入りして、初日はまだまだ雪たっぷりの奥大日岳をめざすことにしました。いくつかトラブルがあって出発が遅くなり、結局、時間切れで奥大日岳山頂直前で撤退を余儀なくされました。2日目は剱御前小屋泊として、残り2日間で立山三山(冨士ノ折立、大汝山、雄山)を周回することにしました。

奥大日岳をバックに雷鳥沢を登る登山者

この日は朝から晴れ渡り、真っ青な空に残雪の立山連峰がくっきり。早くも雷鳥沢から剱御前方面、および奥大日岳方面へむけて登山者やバックカントリーのスキーヤーの列がつながっています。

剱岳を背に、広々した剱沢に走るシュプール

黄砂のせいか、山の雪面はやや黄色味を帯びています。遅めの出発で、ピッケルとアイゼンを装備し、すでにしっかりトレースがついた雷鳥沢をゆっくりと登ります。

稜線に出ると広々した剱沢と黒い岩肌を見せる剱岳にはいつものことながら、感激ひとしおで、圧倒されます。すでにスキーヤーにより幾条ものシュプールが描かれています。

羽の色が変わりつつある雷鳥のつがい

剱御前小屋付近の岩場では、毛色の変わり始めたライチョウのつがいがお出迎え。夕日に染まる立山、富山湾に沈む夕陽など、しばし写真撮影に没頭します。

奥大日岳と富山湾に沈む夕陽

翌日も、快晴の登山日和。まずは別山への緩やかな登り、別山山頂からは360度の大展望が待っています。

別山よりふりかえる剱岳と剱沢雪渓

真砂岳へはいったん下って登り返し。この斜面ではなかば雪が消えて夏道が出ています。

冨士ノ折立へは雪交じりの岩場を登る

真砂岳〜冨士の折立へは雪と岩のミックス状態が続きます。大汝山への登りも雪がついた岩場の登りが現れ、アイゼンのひっかけや腐った雪でのスリップに注意しながら進みます。巨大な雪庇を横目で見ながら雪に埋もれた大汝山休憩所を過ぎ、大汝山山頂へ登ります。

雪に埋もれた大汝休憩所

大汝山の急な雪の斜面の下りから雄山への登りがこの縦走のハイライトでしょう。

大汝山をふりかえる

岩稜沿いに急な雪の斜面を登り切ると祠がある雄山頂上に出ます。遙か遠くなった剱岳と後立山連峰をかえりみて感激ひとしおです。

雄山山頂への登り

雄山から一ノ越へのくだりは、雪がついたガレ場の下りで、登りではアイゼンなしで登ってくる人もいましたが、下りでは腐った雪が滑りやすく、バックステップで降りなければならないところも出てきて、終始アイゼンを使用することになりました。室堂まで長い雪の道を余韻に浸りながら歩きました。(取材日=2019年5月4日)

 

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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